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2023年2月3日更新

相続人から法的に除外[失敗から学ぶ不動産相続⑪]

相続の仕事をしていると、さまざまな事情や問題を抱えているご家庭は珍しくないことを実感します。家族の問題を恥と思って自分たちだけで解決しようとすることで、複雑化してしまうこともあります。

失敗から学ぶおきなわ不動産相続


 

相続廃除

相続人から法的に除外

相続の仕事をしていると、さまざまな事情や問題を抱えているご家庭は珍しくないことを実感します。家族の問題を恥と思って自分たちだけで解決しようとすることで、複雑化してしまうこともあります。



金銭問題、虐待などで申し立て可

今回の被相続人のように「問題行動のある長男に財産を相続させたくない」と思っても、法定相続人である長男本人が相続発生後に相続放棄の手続きをしない限り、長男は遺留分(最低限相続できる遺産)なども含めて財産を相続する権利を有します。また遺留分を少なくする目的でほかの相続人に生前贈与をしても、相続発生前10年以内の贈与は法定相続の遺留分に含まれるため、ほとんど意味がありません。

あまり知られてはいませんが、推定相続人(被相続人が生きている時点で、その財産の相続権があるとされる人)のうち、被相続人への暴力や金銭的負担を強いるなど、問題行動のある人を法的に相続人から外すことができる制度として「相続廃除(はいじょ)」があります。相続廃除されると遺留分請求権ももちろん発生しません。

今回のような金銭的な問題以外でも、例えば被相続人への暴言による侮辱、精神的・肉体的虐待、配偶者である場合は度重なる不貞行為、他人への重大な犯罪行為なども相続廃除の申し立て要件となりえます。
 

 

【概要・経緯】
被相続人の財産は自宅とわずかな預貯金。長男はこれまで金銭問題を起こしてきた経緯があり、被相続人はその負担を強いられてきた。これ以上振り回されたくなかった被相続人は全財産を長女へ相続させる内容の遺言書を作成。長男への遺留分を最小限にするため、自宅も長女(相談者)に生前贈与した。
 
相続人から法的に除外[失敗から学ぶ不動産相続⑪]


【どうなった?】

相続発生後、遺言書の内容と残された財産が少なかったこと、そして自宅が長女へ生前贈与されたことを知り憤慨した長男。相続開始前10年以内に行われた法定相続人への贈与は遺留分侵害請求の対象となることを主張し、自宅も含めた財産の4分の1を現金で請求。長女は多額の現金を準備できず、不動産を売却せざるを得なくなった。

【どうすべきだった?】

・生前贈与する前に専門家に相談
・家庭裁判所へ相続廃除の申し立て
・遺言書を書くのであれば相続廃除を指示する旨も記す

 

生前廃除と遺言廃除

この相続廃除には、被相続人が生前に行う生前廃除と、被相続人の相続発生後に有効となる遺言廃除の二つがあります。

生前廃除の場合、被相続人自身が家庭裁判所に相続廃除を申し立てます。相続廃除の審判が確定後、必要資料とともに審判書謄本を役所に提出することで、推定相続人の戸籍に相続廃除された旨が記されます。

遺言廃除の場合、被相続人の遺言書に推定相続人を相続人から廃除したい旨とその理由を具体的に記します。相続発生後、遺言書で指定された遺言執行人が、家庭裁判所へ相続廃除の申し立てを実施。審判が確定したら役所で相続廃除の手続きを行います。

今回の場合、長男の問題行動により被相続人である父が金銭的負担を強いられたことは明らかであったため、相続廃除の申し立てが通った可能性が非常に高いです。

家族とはいえど、その内部事情は十人十色。血を分けた存在でも別人格をもつ大人です。ひとりの問題行動から自分やほかの家族を守るためにも、相続の専門家にぜひご相談ください。



用語説明

「相続廃除」相続権をもっている人を相続から外すことができる制度。誰でも自由に廃除できるわけではなく、被相続人への虐待や侮辱や著しい非行があった場合に、被相続人本人が家庭裁判所へ申し立てし、審判によって認められることで廃除が可能となる。廃除された相続人は遺留分も有しない。



友利真由美/(株)エレファントライフ
[執筆者]
友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。☎098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1935号・2023年2月3日紙面から掲載

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