段差を楽しむ平屋|間+impression|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2019年11月8日更新

段差を楽しむ平屋|間+impression

[お住まい拝見|中2階に子ども室 その下に「倉」]
Nさん(37)宅は平屋だが、段差のある造りが特徴。中2階に子ども室、その下には「倉」があるほか、小上がりも多用。「段差は腰掛けられるし、昇降がオンオフの切り替えにもなる」と語る。


中2階の子ども室からLDKを見下ろす。和室や玄関は小上がりになっており、平屋だが段差を多用した造りが特徴。この高低差が、広がりやメリハリを生んでいる
 

一体的でもメリハリ

Nさん宅
RC造/自由設計/家族4人

「彼は建築マニアなんですよ」。建築士は、施主をそう言う。Nさんはさまざまな資料を参考にし、新居にこだわりを詰め込んだ。

玄関からリビングへ、階段を下りる造りもこだわりの一つ。「雑誌で見てかっこよかった。ぜひ取り入れたかった」

玄関から家に入ると、まず正面のライトコートに視線が抜けた後、斜め下のリビングへ誘われる。LDKの勾配天井の色は、落ち着いたグレー。木の内装と相まってカフェのようだ。「ライトコート越しに見下ろすわが家が一番のお気に入り=左写真。帰宅するたび満足感がこみ上げる」とニンマリ。玄関からリビングへ階段を下りると「自然と気持ちがオフになる」とも話す。

家の中心にあるのはLDK。キッチンの斜め上、中2階には子ども室がある。その下は約7.5畳の「倉」だ。キッチンから出入りできる大容量の収納は夫人(38)の要望だった。

LDKから中2階の子ども室、小上がりの和室まで一体感のある作りだが、段差のおかげでメリハリが付いている。


LDKは、ライトコートや南側の掃き出し窓などから光が入り、とても明るい。ライトコートの花ブロックは、低い部分は穴がふさがっていて「カーテン要らず」とNさんは話す。勾配天井や高低差の効果で実際の床面積より広く感じる


キッチンの奥に見えるのが「倉」へつながる扉。中2階の子ども室は、現在4歳の長男と2歳の長女が大きくなった時に、二つに分けて使えるよう扉も二つ設けている


花ブロックで目隠し

親族から譲り受けた土地に家を建てるにあたり、建築家と施主とをマッチングするサービスを利用。そこで「感性がぴったり」の建築士に出会った。

建築士の自邸も見学し、「マネさせてもらった」とNさん。建築士の家では黒だったLDKの天井だが、白を希望した夫人との間を取ってグレーにした。夫人は「濃い色にすると暗くなりそうで心配だったけど、あちこちの窓から光がたっぷり入ってくるので平気です」と語る。

夫人の一番の要望は、「明るい家」。玄関正面にあるライトコートの外塀には、夫人たっての希望で光や風通しの良い花ブロックを用いた。ソファに座ったときの目線の高さまでは穴の空いていない花ブロックを使用しており、「外からの視線は気にならない。カーテンは付けていません」と話す。

夫は住まいにかっこよさを、夫人は機能性を望んだ。それがうまく両立した住まいだ。


玄関は小上りになっていて、そこからリビングへ下っていく。「この昇降で、気持ちのオンオフができる」とNさん。ライトコートの植物、グレーの天井やマスタード色の壁、木の内装が相まって落ち着く空間だ。建築士は「カフェをイメージした」と話す


手前から洗面室、脱衣室、浴室。洗面室と脱衣室を別々にすれば、家族が入浴中でも気兼ねなく洗面台が使える


ここがポイント
床面積はコンパクトに

構造上は平屋。だが最高4.2メートルある勾配天井を生かし、高くなった部分に中2階を配した。中2階の下の空間を活用して大容量の収納「倉」を設けるのが、間+impressionの建築士・儀間徹さんの得意とする造りだ。Nさん宅の倉は、約7.5畳ある。

「特にNさん宅は、条例により建物を境界線から1メートル後退させて建てなければならなかった。限られたスペースに夫人が要望する大収納や必要な居室を確保するのに、この造りは理にかなっていた」

さらに「中2階を子ども室にすると、少し散らかっても1階からは見えにくい。だがお互いの姿は見え、良い距離が保てる」との利点もある。

儀間さんは「二重玄関」「洗面室、脱衣室を別々にする」「小さくても和室は設ける」といったプランも積極的に提案している。二重玄関は、「一般的には門扉を設置するところに錠付きのドアを設置し、屋根も設ける。セキュリティーを高めると同時に、玄関前が小さな土間のように使える」。

また、洗面と脱衣室を分ければ、家族がお風呂に入っていても洗面台が使える。洗濯機は物干し場に設置することで脱衣室の広さを確保した。和室は「洗濯物を畳んだりアイロンをかける家事室になったり、客間にもなるので小さくてもあると便利」と語る。

さまざまな空間を設けたが床面積は30坪に満たないため、コストは抑えられた。「高低差や窓を効果的に設け、床面積以上の広さが感じられるよう工夫した」と話した。


外観は、正面だけをコンクリート打ち放し&マットブラックで塗装している。この正面のインパクトが強く、外から見るとフラットな平屋に見える。「室内に入った時のギャップも、演出の一つ」と建築士は語る

 

玄関ドアの前にもボタン式のドアを設置。防犯性を高め、駐輪スペースも確保


中2階の子ども室。引き戸を開ければ1階の様子が伺える



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:233.2平方メートル(約70坪)
1階床面積:94.6平方メートル(28.6坪)
建ぺい率:45%(許容60%)
容 積 率:40%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造(一部ラーメン構造)
設  計:間+impression 儀間徹
構  造:建築設計庵 長間大輔
施  工:(株)大興建設 伊禮勝英
電  気:(同)屋宜電気工事 屋宜宗春
水  道:(有)ライフ工業 高山佳晃
ビジネスパートナー:ASJ(アーキテクツ・スタジオ・ジャパン)



[問い合わせ先]
間+impression
098-892-3635
http://ma.grrr.jp


撮影/矢嶋健吾 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1766号・2019年11月8日紙面から掲載

お住まい拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:338

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

TOPへ戻る