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2019年2月22日更新

キッチンが家の中心|建築空間アボット

[お住まい拝見 囲まれ地でも明るく開放的]高い建物に囲まれた細長い敷地に建つIさん(39)宅。「家族が自然に集まってくる」という2階のキッチンは、ベランダ越しに見える空と公園の緑が開放感を高める。


2階のLDK。幅約4.8メートルの掃き出し窓は、はめ込み窓と3枚の引き込み窓で構成。リビングから段差なく続くベランダの手すり壁が、外からの視線を遮り景色も切り取る

五感で楽しむ

Iさん宅
RC造/自由設計/家族5人
将来、2世帯住宅に改装することを念頭に建てた2階建ての住宅。暮らしの中心は2階。柔らかな陽光が差し込む階段室を上がると、視界が一気に開ける。東側に設けたLDKのベランダ越しに見える空と、公園の緑が心地いい。

「雲や風の変化、月や星、雨など、家に居ながら自然を感じ、五感がくすぐられるので、子どもたちにもすごく刺激的だと思う」と夫人(39)。10歳、5歳、2歳の子どもたちはにぎやかに駆け回り、「アパートの頃とは、遊びも会話の内容も変わりました。成長が楽しみ」

Iさんが一番こだわったのは、ベランダの手すり壁。スギ板で模様付けしたコンクリート製の傾斜壁にカウンターを設け、照明も仕込んだ。「泡盛が好きで、ベランダで立ち飲みするのが楽しみ。気分転換にパソコン作業をしたり本を読んだり、いろいろ活用しています」とIさん。ベランダ越しに、道行く友人や近所の人と会話を交わすのも楽しみだ。

子ども室と水回りがある西側は、夫人の希望でスキップフロアに。「キッチンからは子ども室が見渡せ、1階の気配も感じられる。家族が自然にキッチンへ集まってきて、お手伝いもしてくれるようになりました」と喜ぶ。


2階のベランダ。スギ板で模様付けした手すり壁は傾斜をつけ、カウンターを設けて照明も仕込んだ。夜空を眺めながら泡盛を立ち飲みするのがIさんの楽しみ



2階のベランダ側からLDKを見る。奥にはスキップフロアで子ども室と水回りがあり、キッチンからは子ども室が見渡せる。仕切り戸を閉めれば、LDKは独立した空間に


良さしみじみと
住んでいた宜野湾市のアパート近くに出た売り地は、マンションなどに囲まれた土地。「圧迫感を感じ、初めは敬遠しました。でも、両親に見てもらったらマイナスな印象があまりなく、購入を決めました」

新聞記事を見て気になっていた建築士に設計を依頼。「私たちの話を寛容に受け止めてくれて、家づくりの不安も減りました」と振り返る。

コンクリート打ち放しの自然な色合いの壁、ムーディーな照明の陰影など、「住んでみて改めて、建築士さんが細かく考えてくれた良さをしみじみ感じています。家のどこにいても気持ち良く、ニヤニヤしてしまう」と、夫人はほほ笑んだ。


外観。2階ベランダの手すり壁がLDKをうまく目隠し。手すり壁の足元にスキマを設けることで風通しが良くなり、見た目も軽やかな印象に。手すり壁の傾斜と同じ角度で外壁にも傾斜をつけた


ここがポイント
天窓・高窓活用し採光
東側に前面道路がある細長い敷地。南、西、北側はマンションや集合住宅が建つため、「プライバシーを保ちながら、光と風をどう取り入れるかがカギでした」と、建築士の當山茂さん。同時に、将来、2世帯住宅に低予算で改装できる工夫も求められた。

間取りは、中央に玄関と階段室を設け、東西に分けて居室を配置するプラン。まずは採光・通風のポイントから。

生活の中心となる2階は、開けた東側にLDKを据えて大開口を設ける一方、南西北側では1、2階ともにスリット窓を多用。太陽高度を考察し、1階の玄関、吹き抜けになった階段室やコートなど5カ所に天窓や高窓を設け、陽光を取り込んだ。


1階のコートから、クロークと寝室を見る。室内と段差なくデッキが張られ、壁のスリット=写真左手=から光と風が入り、落ち着いた印象。コートは将来居室に


2階、円形の天窓を設けたコートの奥に脱衣室と浴室がある。物干し場として活用するコートの床はグレーチングになっているため、1階のコート=下写真=まで天窓からの光がしっかり届く


2階リビング東側の全面開口は、ベランダに足元を開けたコンクリート製の手すり壁を設けることで、道路からの視線を遮りながら外の気配と風、向かいにある公園の緑を借景として取り込んだ。「庭が取れない分、借景を活用。手すり壁は傾斜をつけ、120センチの高さに。室内からは空に目がいきやすくなるので、雲の動きや月。星が身近に感じられます」

2世帯住宅への改装は、長女が巣立つ10年後を想定。現在1階にある寝室を2階に移して親世帯のLDKを設け、ガレージとコートを居室に転用する。コートの壁は30センチと厚く、採光・通風のために入れたスリットは、室内に向けて広がるハの字型に。居室にする際は、ガラスをはめ込む。「壁の厚みがある分、隣家が遠く感じられ、プライベート感が増します」と説明した。

2階の子ども室。現在はひと続きで使っているが、仕切って2部屋として使えるように窓やドアを配置している


将来、2世帯が使うことを考慮し、1階の玄関はゆったり広々。植物を飾ったり季節のディスプレーも楽しめる。階段は蹴上げを抜いた鉄骨製を採用し、すりガラスの窓から入る光や2階の気配が届きやすいように配慮した

[DATA]
家 族 構 成:夫婦、子ども3人
敷 地 面 積:177.59平方メートル(53.81坪)
1階床面積:98.37平方メートル(29.10坪)
2階床面積:97.12平方メートル(29.43坪)
建 ぺ い 率:59.82%(許容60%)
容 積 率:114.26%(許容200%)
用 途 地 域:第二種中高層住居専用地域
躯 体 構 造:壁式鉄筋コンクリート造
設         計:建築空間アボット 當山茂
構         造:(有)建築設計庵 長間大輔
施   工:(有)沖忠建設 崎山喜忠
電   気:(有)中原電設 仲村直也、高良弘二
水   道:前田設備 前田勲、祝嶺好範、備瀬知秀
キ ッ チ ン:(株)クッチーナ 福田美直
ガーデンデザイン:オフィスタカスギ 高杉忠
内 部 大 工:仲村渠清行
塗   装:琉球美装 眞志喜浩
建   具:野崎木工(株) 野崎達矢



[問い合わせ先]
建築空間 アボット
098-937-7334
http://www.geocities.jp/abbot_touyama/index.html


撮影/比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1729号・2019年2月22日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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