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2018年7月13日更新

庭囲み 快適と広がりと|建築設計あうん

[お住まい拝見・人が集うL字型の家]Mさんと母親の老後を見据え、築50年超の家を建て替えた。旧家の庭を残し、どの部屋からも緑が望めるL字型の間取りは伸びやかで心地よい。子や孫の集いの場となっている。


LDKと和室が一体となった開放的なMさん宅。仕切りが多く人が集いにくかった築50年超の家を建て替えた。掃き出し窓が面する庭は旧家のままの姿。ガーデニングが趣味だというMさんの母親が手塩にかけた花々が咲き誇る。L字型の間取りで寝室側からも庭が望める

 

子や孫たちの集いの場

Mさん宅
補強CB造/自由設計/家族2人

うるま市の住宅地に建てた新居は約27坪。同じ場所に建っていた旧家より若干、小さくなった。だがMさんは「すごく広く感じる」と話す。
築50年超・3LDKの家を取り壊し、70代の母親と2人これからの人生を考えて空間を取捨選択。庭を囲むL字型の平屋が完成した。
L字の長辺部分にはLDK+和室が一直線に並ぶ。普段は和室の襖(ふすま)を開け放ち、ワンルームとして使用。庭に面した南東側の掃き出し窓は、室内に光と風、癒やしをもたらす。
その庭は、旧家のままの姿を残す。母親が手塩にかけて育てた草花がイキイキと咲き誇り、コンクリート製のテーブルや椅子も昔のまま。10年ほど前は子どもたちが遊んでいたそこで、今は孫たちがはしゃぐ。Mさんは家事をしながらそれを見守る。
L字の短辺部分にはMさんと母親の寝室が並ぶ。こちらも庭に面していて、「日中は庭に面した掃き出し窓を開け放って風を通している。この家は空気がこもる場所がない。どこも風通しが良くて、気持ちいい」と満足げに語る。



キッチンから和室を見る。仕切りがなくオープンで開放的。南東側の庭から光が差し込み、とても明るい。室内から、庭で遊ぶ孫たちにも目が行き届く


居室に囲まれた庭は、以前の家のままの姿。コンクリート製のイスやテーブルも残し、活用。Mさんが要望した波型の塀と相まってかわいらしい雰囲気



室内はシンプルに

老後を見据え、室内はバリアフリーにした。水回りをまとめた造りも重宝している。特に浴室や脱衣、洗面所、トイレが直線上に配されているのが「最小限の移動で済むから、今も楽だし老後も安心」とMさん。
間取りや内装をシンプルにまとめたのは、予算を抑えるため。そのシンプルさのおかげで、無駄のない動線が生まれ、自分で手を加えられる余白ができた。
DIYが趣味のMさんは、市販のタンスを好みの色に塗り直したり、カーテンの代わりにスクリーンを手作りし、住まいをかわいらしく彩る。「新居では、母も私も好きなことを楽しんでいる。遊びに来た子や孫も居心地良さそうだし、建築士さんには感謝でいっぱい」と満面の笑みを浮かべる。
手掛けた建築士とは長年の付き合いがあり、「こうしたい、と思うことはしっかり伝えた」というMさん。そのかいあって、4世代が笑顔になれる住まいを実現させた。



ここがポイント
視線の抜けで開放感演出

建て替えの依頼を受けた建築設計あうんの濱崎幸夫さんは、思い出の残る旧家の庭を残し、生かす提案をした。「新居は前の家より少し小さくなるが、窮屈さを感じさせないよう、その庭を活用した」。
南東側にあった庭を囲むよう、建物はL字型にした。各居室への採光・通風への配慮はもちろん、「どの部屋にいても、視線が外へ抜けるようにして床面積以上の広がりを感じさせるようにした」と説明する。さらに「居室はなるべく仕切らず、開放感を持たせた」。仕切らないことで死角が無くなったLDK+和室の大空間は、遊びに来る小さな孫たちにも目が届き、集いの場としても理にかなっている。
和室は、来客が寝泊りできるようにしてほしいとの要望から襖を設けたものの、普段は壁の中にすっぽり納まるようにし、視界を遮らないよう工夫した。
来客の多いMさん宅では複数台分の駐車場確保も大命題。接道側には塀を設けず、3台分の駐車スペースを確保し、それぞれの車が出入りしやすいようにした。「外からの目隠しとなる塀が無い分、建物の駐車場側には窓を極力少なくし、プライバシーに配慮した」。
塀を省いたことは予算カットにもつながった。ほかにも予算減の工夫として「浴室やトイレなどの水回りは西側にまとめて、配管コストを抑えた」。
小さな工夫を散りばめ、予算と要望のバランスをうまく取った。



ライトイエローのかわいらしい外観。手前の砂利部分が3台分の駐車場。車の出し入れのしやすさを重視して塀は設けなかった。目隠しとなる塀が無い代わりに、建物の駐車場側は開口部を最小限にしている


Mさんの寝室。予算を抑えるためシンプルな造り。そこにMさんが趣味のDIYの腕を振るい、お手製のタンスやスクリーンなどを配して好みの空間へと変身させた


北西側の浴室から脱衣所、洗面所、トイレまで一直線につながっている。バリアフリーの造りも相まって「移動しやすく、老後も安心」とMさん



[DATA]

家族構成:Mさん、母親
敷地面積:193.72平方メートル(約58.60坪)
1階床面積:89.32平方メートル(約27.01坪)
建ぺい率 :48.74%(許容70%)
容 積 率:44.81%(許容150%)
用途地域 :第一種中高層住居専用地域
躯体構造 :補強コンクリートブロック造
設  計 :建築設計あうん 濱崎幸夫
施  工 :和川組
電  気 :城電気工事社
水  道 :榮門水道工事社



[問い合わせ先]

建築設計あうん
098-989-5770
http://aun.jimdo.com/


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撮影/矢嶋健吾 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1697号・2018年7月13日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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