お住まい拝見
2018年3月30日更新
宮古島・テラスから広がる大空間で暮らす|(株)クレールアーキラボ
[お住まい拝見・LDK+和室 伸びやかな大空間]Tさん宅の特徴は開放感。庭に面したLDK+和室の伸びやかさが自慢。宮古島市平良の大通りに面した玄関ホールは閉じた造りにし、コントラストも利用して広さを強調する。
ひんぷんで緩く仕切る
Tさん宅
RC造/自由設計/家族5人
芝庭に面したリビング。3.3メートルの天井高も相まってとても開放的。テレビ台を兼ねた石壁の裏はダイニング、その奥がキッチン。収納を兼ねた「ひんぷん壁」が空間を緩く仕切る
玄関ホールも、決して狭いわけではない。だが2.2メートルの天井高と頭上のダークブラウンの木材が締まった印象を与える。
そこからLDKに入ったときのコントラストがTさん宅の“見せ場”だ。玄関ホールより1メートル高い天井と、LDKから和室まで一体となった約25坪の大空間に、来客は皆驚く。「この開放感は、ちょっと自慢」とTさんは胸を張る。
玄関ホールは天井高が2.2メートル。坪庭との間の窓も地窓(足元にある窓)で空間を引き締める
この大空間は、南側の広々とした芝庭に面しており、大きな掃き出し窓から外へと視線が抜ける。空と緑を切り取る開口部は、「中央部分は開閉できないはめ込み式にした。サッシで視界を邪魔しないことを優先した」。こだわったかいあって「ダイニングは僕の特等席。ビール片手に、何時間でも庭を眺めていられる」。
庭は室内から眺めるだけでなく、家族でバーベキューをしたり、Tさんがゴルフの練習をしたりとアクティブに楽しむ
L字で公私分ける
以前は、マンション二部屋をつなげて一つの家にしていた。床面積は広かったものの「雑然としていた。だから、スカッと大きな空間に憧れていた」。
新居は開放感を優先し、仕切りは最小限にした。大空間に公私のグラデーションを付けるのは二つの「ひんぷん壁」だ。一つはリビングとダイニングの間にありテレビ台の役割を、もう一つはダイニングとキッチンの間にありデスク兼収納棚の役割を兼ねる。
高窓から光が注ぐダイニング。キッチンとの間にはデスクがあり、パソコンをしたり宿題をしたりして使う
人が集まることも多いため、リビングとひと続きになる和室も要望した。色調はダークブラウンと白でまとめ、モダンな雰囲気
大空間の突き当たりにはキッチンがあり、そこから西側に寝室や子ども室が並ぶ。キッチン周りには浴室や洗濯干し場がまとまっており、「家事動線がとてもいい」と夫人は満足そうに語る。
「伸びやかさ」「家事動線のよさ」に加え、「洗練された雰囲気」も譲れなかった。さまざまな建築士事務所に相談し、やっと巡り合った建築士とは「イメージが共有できた。一つ一つの部材を一緒に吟味して、思い描いていた通りに完成した」とTさん。
間取り、建材、デザイン。妥協しなかったからこそ、「憧れ」が「日常」になった。
キッチンの足元は、掃除しやすいようにタイル張りにした。写真左側の収納棚は目隠しの役割も担う。中央に見える廊下は、寝室や子ども室に続いている
子ども室や寝室は将来、仕切りを取り払って一部屋にできる
ここがポイント
大通りとの間に緩衝帯
前面道路の前には車庫と予備の駐車場を設けている。外観の仕上げは白壁やタイル張りなど質感にも変化をつけることで建物の圧迫感や単調さを軽減した
敷地は約240坪。Tさんが要望する「開放的な家」を建てるには申し分ない広さだ。課題は、宮古島市平良という繁華街の大通り沿いだということ。
クレールアーキラボの畠山武史さんは、大通りと居室の間に緩衝帯をいくつも設けることを提案した。
前面道路側には、「ガレージと予備駐車スペースを兼ねた広い空き地を設けた。さらに、玄関ホールや坪庭、浴室やトイレなどをLDKと道路の間に配置して、騒音の軽減や外部からの視線に配慮した」。
緩衝帯の一つである玄関ホールは道路側には窓を設けず、さらには動線を長く取った。道路側からの騒音を軽減しつつ、LDKに入ったときにより広く感じさせる前座的な機能も持たせた。
道路と反対の南側には庭を置いた。居室はその庭を囲むようにL字に配置し、居室のない二方側(南と西側)には外壁を設けた。庭のプライベート性を確保でき、外からの視線を気にせず過ごすことができる。
また、外観を「閉じた」造りにすると、壁の印象が強くなってしまう。「圧迫感を軽減すべく、白壁、杉板型枠打ち放しの壁、タイル張りの壁など、部分的に質感を変えて壁面を分割=左写真。高低差のバランスも取って見え方を考えた」。
その配慮が、Tさん希望の「洗練された」デザインとなり、家族の愛着を深めた。
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:796.5平方メートル(約240.94坪)
1階床面積:285.12平方メートル(約86.25坪)
建ぺい率 :41.78%(許容60%)
容 積 率:29.68%(許容200%)
用途地域 :準住居地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計 :(株)クレールアーキラボ 畠山武史
構 造 :建築設計庵
施 工 :(株)佐平建設
電 気 :大和電工(株)
水 道 :創機設
[問い合わせ先]
(株)クレールアーキラボ
098-955-1823
http://clairarchilab.com
撮影/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1682号・2018年3月30日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。