巻頭特集・企画
2017年3月17日更新
36坪の変形地に家と駐車場4台|(有)武一建設
間口は25メートルと極端に幅広く、奥行きは最も狭い敷地中央部が3メートル弱。リボン状ともいえる東西に幅広い36坪の変形地に、建築士の末松渚さんは駐車場が4台分も付いた2階建ての建売住宅を完成させた。ゾーニングをはじめさまざまな工夫が詰まった同物件から、変形地でも広々快適に暮らせる住まいづくりのヒントを探ってみよう。
変形地でも快適 ! 11 の工夫
多機能&視線抜いて 収納・照明・色もカギその① 広い間口生かし駐車場4台
25メートルの間口の広さを最大限に活用したのがこの駐車場。西側には、車4台が横一列に止められる。「道路から直接乗り入れできるから止めやすい。間口が広いからこそできたこと」と末松さん。子どもが大きくなったり家族が増えても、駐車場が4台分あれば安心だ。
その② つり棚省き広く明るく
対面式キッチンは、つり棚をなくして視界を広げ明るく。オープンでも、カウンターに立ち上がりをつけたことで手元が見える心配はない。アクセントにブルー系のタイルをあしらってスッキリ。
その③ 食卓・収納・デスク カウンターを多機能に
玄関側から見たLDK。対面式のキッチンカウンターは,家族に朝食を食べさせたり子どもの宿題を見たり。コンセントもついているのでパソコンスペースとしても利用可能。カウンター下は収納になっているので、本棚やティッシュケース、郵便物置き場として活用できる。構造上取り払うことができなかった壁を利用し、中央にはパソコンスペースも。上下は扉付き収納なので、プリンターやモデムなど、ごちゃつきがちな機器や配線類を収めてスッキリ。
その④ 曲線で優しく
玄関。上がり框(かまち)は曲線で優しい印象に。ベンチは、靴の脱ぎ履きの際に腰かけたり、荷物を置いたりと便利だ。照明や窓にはめ込んだステンドグラス、靴箱に取り付けたアイアンの物かけといったデザイン小物が、空間の印象をグレードアップ。
その⑤ 手すり透かし軽やか
広さを感じさせている要素の一つが手すり。壁を立ち上げるのではなく、平鉄で仕上げたことで視界が抜け、軽やかな印象に。
その⑥ 斜めに視線抜いて奥行きを
リビングとダイニングはあえて対角線上に配置することで視界を斜めに抜いた。これにより奥行きが出て、実際の面積以上に広く感じられる効果がある。ダイニングはキッチンと横並びになっており配膳や片付けもラク。周囲の住宅や通りからの視線を回避するため、窓は基本的に高めに設置した。
その⑦ 曲線の梁で緩やかに仕切る
LDKは基本的にはすべてが見渡せる一続きの大空間としつつ、曲線の梁(はり)で緩やかに空間を仕切っている。階段下には収納庫と飾り棚を設け、デッドスペースを活用。
その⑧ 家事も身支度も一カ所で
2階の洗濯干し場から見た洗面脱衣室。カウンターは、洗面化粧台としても家事スペースとしても使えるよう大きく。上部にポールも渡し、室内物干し場も兼ねている。寝室が近いから、夜、寝る前にシャワーを浴びながら洗濯機を回し、室内干しすることもできるし、朝、身支度をしながら洗濯物を干すことも可能だ。カウンター下は市販のラックを入れればオープンな収納棚に。ワイドな鏡はコンパクトな空間に広がりを出す効果も。
その⑨ 収納はまとめて大きく
2階に設けたウオークインの収納は3.5畳と広々。トップライトの効果で明るさも十分だ。収納は一カ所にまとめることで奥行きも取れ、大型の季節ものなども収納可能。
その⑩ 間接照明で広がり 色でくつろぎ
2階の寝室を配置したのは敷地が斜めに切り取られた場所。狭さを感じさせないよう梁を活用した間接照明で奥行きを出し、壁は温かみのあるサーモンピンクに塗装した。デッドスペースになりがちな部屋の隅には、多目的に使える机を設けた。
その⑪ デザイン照明と漆喰でグレードアップ
玄関やキッチン、ダイニングなど、目立つスペースは、ペンダントライトなどのデザイン照明を使用。スペイン漆喰(しっくい)の塗り壁は光を吸収し、温かみと同時に柔らかな雰囲気を醸し出す。漆喰は調湿、遮熱効果も。
配置計画ムダなく
敷地は沖縄市の往来の激しい県道沿い。南北はその県道と生活道路に挟まれ、東西に幅広い、リボン型の形状だ。敷地を最大限に活用するため、末松さんは最もくびれた敷地中央を境に、西半分を道路から直接乗り入れできる4台分の駐車場とすることに。「敷地が小さいと縦列駐車になるケースが多い。間口が広いからこそできたこと」と説明する。一方、住宅は比較的奥行きのある東半分に配置。「中でもまとまったスペースが取りやすい東側にLDKを配置。広さを必要としないトイレや玄関をそれ以外の場所に置くことで、敷地をムダなく活用しました」。
キッチンカウンターや2階の水回りは多機能に(③⑧参照)。「あれこれスペースを取らずに済む上、家事をしながら子どもの面倒がみられたり、忙しい朝でも洗濯しながら身支度ができる」など、働くママにうれしい工夫がいっぱい。ほかにもリビングとダイニングは対角線上に配置して奥行きを演出(⑥)。収納はまとめて広くとり(⑨)、デザイン照明や色使いで楽しさをプラスした(⑩⑪)。
「小さく変形しているからこそ、多用途にすることで便利さも生まれるし、目が行き届いて家族を近くに感じられる。変形地は比較的安く購入できるから、その費用を家づくりに回すことも可能では」と末松さんは話した。
[DATA]
敷地面積:119.84㎡(36.32坪)
1階床面積:46.75㎡(14.17坪) 2階床面積:42.92㎡(13坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式造
設 計:(有)武一建設 末松渚
施 工:(有)武一建設
[設計・問い合わせ先]
(有)武一建設
098-965-3001
takeichikensetsu.com
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1628号・2017年3月27日紙面から掲載