お住まい拝見
2016年12月9日更新
四方住宅でも伸び伸び|アドバイザリー(建築工房亥分室)
Nさん(41)宅は四方に住宅が建つ旗ざお地にある。だが、高窓や地窓など窓の設け方に工夫が凝らされ、外の視線を気にせず光と風を取り込める。夫婦と子ども4人が伸び伸び暮らす。
高窓や地窓 視線気にせず開く
Nさん宅 RC造/自由設計/家族6人明るく、広々とした1階LDK。リビングの高窓や、畳間の足元にある地窓(写真奥)などから光が入る。仕切りのない造りも相まって伸びやかな印象
仕切らず家中に光と風
4人の子どもがいるNさん家族。住んでいたアパートが手狭になり、豊見城市の区画整理地を購入した。
前面道路から細い通路でつながった旗ざお地で、将来的には四方に隣家が建つ場所ではあったが「小学校などに近い立地が気に入った」と夫人(38)。
知り合いを通じて依頼した建築士には「こんな敷地条件でも開放感があって、子育てや家事がしやすい家」を要望した。
出来上がった家は、1階も2階も、仕切りがほとんど無いオープンな造り。1階は逆L字型で、玄関を入ると4・5畳の畳間があり、その北側にLDKが直線状に並ぶ。
1階で大きな開口部はダイニングの南側にある掃き出し窓だけだが、室内は明るく風通しも良い。
その源は、畳間の天窓や足元にある地窓、リビングの高窓、玄関脇のスリット窓など外から見られにくい位置に設けられた窓。「カーテンも要らず、重宝している」と夫人。扉を閉めたままでも換気できるキッチンの勝手口、物干し場への扉も風通しにひと役買う。
仕切りの無い造りも手伝って、限られた開口部からの光と風が家中を巡る。
パントリーも遊び場
2階には子ども室と寝室がある。子ども室は二つに分けられるようになっている。各部屋の南側に掃き出し窓があるほか、東側の高窓や北側、階段付近のスリット窓からも光が入る。白を基調とした室内は、1階よりさらに明るい。
「今、2階は休眠状態。使うのは寝るときぐらい」。子どもたちはダイニングで宿題をする。カウンター付きの対面式キッチンは、さながら教卓だ。「お母さんチェックしてー!」とノートが並ぶそう。
とっておきの遊び場は、1階・階段下のパントリー。机やパソコンがあり夫人の〝プチ書斎〟となっているそこに、子どもたちが集まる。10歳の長女は「秘密基地みたい。ここでゲームをするのが好き」と笑顔。
窮屈になりがちな旗ざお地の住宅。だが子どもたちの笑い声が響くNさん宅は、その概念を一蹴した。
玄関からLDKを見る。畳間の上の天窓からも光が注ぐ。畳間とLDKの間には引き戸があり、来客時は閉じて視線をカット
階段下の空間はパントリーになっている。夫人の“プチ書斎”も兼ね、「明かり取りの高窓があって、倉庫とはいえ居心地が良い」と話す
ここがポイント
窓の位置工夫 目線から外す
四方を住宅で囲まれ、かつ隣家との距離も近いNさん宅。「プライバシーを守りつつ、開放的な室内」が求められた。建築士の宮城美智雄さんは、窓の位置を「目線の高さから外した」と話す。
目線より高い高窓や天窓、目線より低い地窓のほか、すりガラス入りの細長いスリット窓などをバランスよく配置して明るさを確保した。
畳間の地窓、リビングや子ども室の高窓は開閉できる部分を設けて、風の通り道も作った。
1階の南側は大きな掃き出し窓を設けた分、深い庇と一体化した「持たせ壁」で目隠し。持たせ壁はおちょこのような台形にし、掃き出し窓から入る風を妨げないよう配慮した。
また、4人の子どもがいるNさん宅においては、収納も重要。「限られた敷地の中で十分な収納を設けるべく、デッドスペースを活用した」。
靴箱や畳間・東側の押し入れを大きく設けたほか、掛け軸や花などを飾る「飾り棚」の奥にも空間を設けた(下写真)。階段下の空間はパントリーと外倉庫にし、内外から物が収められるようにしている。
2階、約15畳の子ども室。将来は、二つに仕切れるようになっている。写真右にある、東側の10畳のスペースは高窓などがあり風通しも良いことから、長男・次男・三男の部屋に、手前5畳、南側のスペースは大きな収納があることから長女の部屋として活用する予定
南側外観。台形の持たせ壁は、風の通り道を邪魔しない。2階はベランダが緩衝帯となっていることから目隠しせずオープンに。手すりも細い鉄製にした。
玄関付近の収納。畳間の押し入れや靴箱は大きく設けたほか、掛け軸や花などを飾る「飾り棚」(写真中央)の奥にも収納を設けた(建築士提供)。
階段も天窓やスリット窓からの光で明るい。写真左側にあるのはパントリーの高窓。昼は階段からパントリーへ光が注ぎ、夜はパントリーに付く電気が階段の足元灯にもなる
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:187.85㎡(約56.82坪)
1階床面積:65.32㎡(約20坪) 2階床面積:50.32㎡(約15坪)
建ぺい率:43.13%(許容60%) 容積率:61.56%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設 計:アドバイザリー(建築工房亥分室)宮城美智雄
構 造:GBCstudio 儀保伸悟
施 工:(株)ライフコーポレーション 當間尚
電 気:屋宜電気工事 屋宜宗春
水 道:(有)ライフ工業 高山佳晃
キッチン・カーテン:(有)ファイン 比嘉美奈子
[設計・問い合わせ先]
アドバイザリー(建築工房亥分室)
098-896-0390 (担当・宮城)
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写真/比嘉秀明撮影 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1614号・2016年12月9日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。