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2016年9月9日更新

生活感隠す棚 リフォームで空間生かす|建築アトリエトレッペン

沖縄県本島中部、西原町にある築18年のSさん(52)宅は収納が少なく、玄関から雑多な室内が丸見えだった。改修では収納を増やし、来客の視線を遮る「ひんぷん棚」を設置。生活感を巧みに隠す。

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築18年の家を改修  雑多さ解消 

Sさん宅 築18年/RC造/家族4人


玄関側からLDKを見る。正面のひんぷん棚が来客の視線をブロック。収納も増え、リフォーム前の雑多さが解消された。平成26年度の「全国住まいのリフォームコンクール」で優秀賞を受賞した


【リフォーム前】


収納増やしスッキリと
改修前の家は収納が少なく、物があふれていた。玄関を開けると、雑然としたLDKが丸見えの状態。夫人(52)は「家族はこの空間に慣れてしまっていたけど、お客さんに気を使わせていた」と苦笑する。
「なんとかしたい」と思っていた時に、講演会で聞いたリフォーム事例に感銘を受け講師の建築士に依頼した。
室内で大きく変わったところは三つ。
一つは玄関とダイニングの間に、来客の視線を遮る「ひんぷん棚」が設けられたこと。ひんぷん棚の上部は無双窓になっており、閉めれば視線をシャットアウト。開ければLDKへ風が通る。下部は収納になっているほか、絵画や植物などインテリアも楽しめる。
そして二つあった和室のうち一つを無くした分、リビングが広くなり、新たに8平方㍍もある収納庫ができた。ここには服や季節の家電をしまっている。
最後に、家の中心にあるダイニングとリビングの天井が60㌢ほど高くなったことで、空間の圧迫感が和らいだ。
間取りに大きな変化はないが、この三つの効果で「驚くほどスッキリして明るくなった。LDKの居心地は格段に良くなった」と夫人。
Sさんはダイニングを書斎代わりにすることも。夫人は家族や来客とおしゃべりしながらキッチンのカウンターで晩酌をするのが「至福のひと時です」と笑う。

庭まで居心地よく
庭もリフォームをした。一番変わったのは石張りのテラスを設けたこと。ウッドデッキとテラス、庭木のコントラストは南国リゾートのようだ。
以前は一面が芝庭で「草むしりが大変だった」。さらに塀の高さが低いところで1㍍ほどしかなく、目隠しの役目を果たしていなかった。塀の上にアルミ格子を付けてもらったことで締め切りだったリビングの掃き出し窓が開けられるようになったという。分断されていた室内外がつながり、活用できる庭になった。
見た目も住み心地もガラッと変わったSさん宅。建築士は家族へ、以前の家の名残を感じさせる贈り物をした。取り払った和室の欄間をリメークした灯籠だ=下写真。夫人は「うれしかった。やっぱり長年の思い出が詰まっていますから」と喜ぶ。住まいは変われど記憶は残り、新たに紡がれていく。


リフォーム前は暗かったダイニングも、天井高を上げたことで玄関上部の吹き抜けにある窓(写真右上)から光が入るようになり、明るくなった


【リフォーム前】以前も、ダイニングの前に仕切り(写真左側)はあったが「大き過ぎて開け閉めしにくかった」と夫人


L型だったキッチンはシンプルなI型にした。ダイニングとの間には収納を兼ねたカウンターを設置。夫人は「お酒片手に料理の準備をしながら、お客さんとおしゃべりするのが楽しい」と話す


和室の欄間をリメークした灯籠は建築士からのプレゼント

 

ここがポイント
光と風の道をつくる


 リビング   天井高上げ開放的に

以前は物であふれていたが、収納庫ができたことでスッキリ片付いた。今まで眠っていたDVDプロジェクターやスクリーンも設置。癒やしの空間に様変わりした

 収納庫   双方から出入り
キッチンと主寝室両方から出入りができるようになっている。物干し場に近いことから、服や季節の家電などがしまわれている

 庭  石張りにし手入れ楽に

手入れが大変だった芝庭を石張りのテラスに変えた。低かった塀の上にはアルミ格子も設置。庭木にも目隠しの役割を持たせたことで、外からの視線が気にならなくなった。庭に面したリビングの掃き出し窓も開け放てるようになった。

仕切りつつ明るさ確保
  玄間を開けると目に飛び込んでくる生活感。既存の収納は統一性がなく雑多な印象だった。建築アトリエトレッペンの一級建築士・照屋寛公さんは「たっぷり入る収納と、玄関からの視線を遮る仕掛けが必要だった」と話す。
目を付けたのは、ほとんど使用されていなかった「和室2」。キッチンや物干し場に近く、家事導線的にも良い場所にあったことから大きな収納庫に変えた。「キッチン側からも主寝室側からも出入りできるようにし、使いやすくした」との配慮もした。
そして目隠しと収納力、両方の役目を担う「ひんぷん棚」も玄関正面に設置。高さを2メートルにとどめたのは圧迫感の軽減と「玄関上部の窓からダイニングへ差し込む光の道を邪魔しないため」と説明する。以前のSさん宅は、先の窓からの光は低い天井に遮られダイニングまで届かなかった。「1階天井の懐を取り払い、60センチほど天井を高くしたことで、窓のないダイニングまで光が入るようになった」。
ひんぷん棚には、通風のため開閉できる窓を設けた。玄関前のポーチと駐車場の間には、外からの視線を遮るアルミ格子を付けたほか、玄関ドアやキッチンから物干し場に出る勝手口には網戸を設置。これにより、ドアが開け放てるようになり玄関(東側)から物干し場(西側)へ風が抜ける。明るく涼やかなダイニングは家族のお気に入りの場になっている。

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
施工面積:100㎡(約30坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート造 壁式構造
築年数:18年
工 期:約3カ月
設 計:建築アトリエトレッペン (代表)照屋寛公(スタッフ)桃原真紀、橘木純次
施 工:(有)新都開発
電 気:(株)山川電気
水 道:(有)春水工業
造 園:末吉園

[設計・問い合わせ先]
◆設計・問い合わせ先 建築アトリエトレッペン
098-859-0710
http://www.treppen.jp
写真/比嘉秀明
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1601号・2016年9月9日紙面から掲載
 

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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