お住まい拝見
2016年9月2日更新
リビング 1番心地よく|(株)一級建築士事務所斎
「家族の時間を大事にしたいからリビングを1番居心地よく」と沖縄県本島南部の住宅街に新築した津波さん。鉄筋コンクリート造の平屋で家族の距離も一層近付いたよう。
平屋で家族の距離近く 顔見て話せるのがいい!
津波さん宅 RC造/家族5人1階和室側から見たLDK。リビングダイニング部分の天井は掘り込み、くつろぎを演出する間接照明を設置。床材は継ぎ目のないチークのソリッド材でぜいたくに。
家中見渡すキッチン
こだわりのLDKは、東にある4枚の片引き窓を開け放てば、デッキや芝庭まで一続きにつながり広々。通りに面しているものの、程よい高さの目隠し壁のおかげで「視線はまったく気にならない」と夫妻。「ソファに寝転がって窓を開け放つと風が入って気持ちいい」と津波さんも喜ぶ。
マイホームは「絶対平屋と決めていた」とのこと。「子どもたちのスペースは、いつでも目の届く範囲に置きたくて。巣立った後、2階は間違いなく空き部屋になるしね」。個室や水回りは西側に並べ、LDKから直接出入りできる造りにしているのはそのためだ。
家中が見渡せるアイランド型のキッチンは、夫人たっての希望。アパート住まいのころは壁付けで家族に背を向けざるをえなかったが、「今は誰が帰ってきたかすぐ分かる。成長期で会話が必要な子どもたちと、家事をしながらでも顔を見て話せるのが一番!」と笑顔をみせた。
洗い畳むまで一室で
中3を筆頭に3人の男の子を育てる共働きの夫妻にとっては、効率のいい家事動線も外せないポイントに。夫人が特に気に入っているのがキッチン裏手に設けた屋根付きのサービスヤードだ。「洗濯物を干しっ放しで出かけられるし、洗って干してアイロンがけまで、一カ所で終わるのも便利」と使い勝手の良さを実感する。
家づくりに着手したのは転勤先から戻った10年ほど前。「ある程度の広さ」を求めたため土地探しは7、8年かかったが、プランニングは親せきに紹介された建築士に依頼。「ポイントを伝えた以外はお任せ。スムーズに進みました」。
住み始めて半年余り。家族の定位置は狙い通りLDK。ソファやイスに腰かけくつろぐ夫妻の傍らで、子どもたちは元気に走り回る。「庭でバーベキューも楽しみたい!」と楽しい計画はまだまだこれからだ。
玄関側から見たLDK。寝室や子ども室はLDKから直接行き来できるよう配置。キッチンに立てば玄関から個室まで家中が見渡せる
子ども室。現在は長男が使用。右手の間仕切りを取り払えば一部屋として活用できる
「洗濯物がすぐ乾く」と喜ぶ屋根付きサービスヤード。アイロンスペースも設置した
外観。目隠し壁はやぼったくならないよう駐車場土間から少し浮かせて軽さを演出。通りへの圧迫感も軽減する。目隠し壁のみ職人によるはけ引き仕上げにしたことで外観のアクセントに
玄関ホール。正面の壁にははめ殺しの窓を入れ視線をぬいて奥行きを、靴箱は浮かせて下に照明を入れ広がりを演出
アプローチ。白壁にシンボルツリーが映える
洗面室.。小スペースながら、片開きの窓の手前にスライド式の鏡を設け、多機能に
ここがポイント
快適性高め集い促す
家づくりにあたり津波さん一家が最もこだわったのは「家族の時間を大切にできる造り」。そこで建築士の玉那覇昇一さんは「家族が自然と集まれるよう、LDKを住まいの中心に据え、快適性を高めるよう工夫した」と説明する。敷地は南北に隣家が近接し、裏手の西側も家が建つことが予想されたため、道路のある東側に駐車場、中央にLDKと和室を置き、西側に個室を配置。水回りは北側にまとめた。
重要になったのが、通りからの視線を遮る目隠し壁。盛り土して住宅部分を上げた上で、壁は室内にいる家族と視線がかち合うことなく周囲への圧迫感は極力減らせる高さを現場で検討した。
LDKは、その目隠し壁側に向けて大きく開けるよう4枚の片引き窓にし、リビングダイニングは天井高を上げることで開放感を演出。イスに腰かければ、空と周囲の緑しか目に入らない。
くつろぎ空間の演出には、雑多なものが極力目に入らない工夫が必要。北側の水回りには屋根付きサービスヤードを設置し、生活感の出やすい洗濯物などをリビングに持ち込まずに済むように。キッチンと回遊性をもたせることで家事効率もアップさせた。
子ども室など個室はあえて小さくし部屋数を減らしているのも、リビングに集まりやすくするための仕掛けの一つ。「子どもにとって個室が本当に必要な期間は実は短い。そこを踏まえることで家族で過ごす場にスペースもお金もかけられるし、無駄も省ける」とアドバイスした。
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:248㎡(約75.02坪)
1階床面積:105.05㎡(約31.78坪)
建ぺい率:48.65%(許容60%)
容積率:42.36%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域(緩和区域)
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式造
設 計:㈱一級建築士事務所 斎
玉那覇昇一
構 造:㈲翔光プラン
施 工:㈲沖忠建設
電 気:大電社
水 道:㈱共立技研
[設計・問い合わせ先]
(株)一級建築士事務所 斎
098-996-3512
http://www.atelier-sai.net
写真/矢嶋健吾
編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1600号・2016年9月2日紙面から掲載