お住まい拝見
2023年1月13日更新
自宅にドッグラン! 山や海の景色も独り占め 沖縄・ヤンバルに移住した夫婦の理想の家|(有)真玉橋設計事務所[お住まい拝見]
[人も犬も快適な大空間 眼下に広がる山と海]
Nさん(41)宅があるのは本島北部の高台。吹き抜けで開放的な約32帖のLDKや寝室、浴室からは山と海の景色が望める。3匹の愛犬のために広いドッグランも備わっている。
2階寝室から見たLDK。32帖の広さと高さ5.4メートルの吹き抜け、幅5.7メートルの大開口などで開放的。窓は強化ガラスになっており、光は電動カーテンで調整する
食後はドッグランへ
Nさん宅
RC造/自由設計/家族2人+愛犬3匹
大きな門扉を開くと、城壁のような石積みの向こうに、豊かな山の緑と海の青が視界いっぱいに広がる。お城の一角のような空間だが、ここはN夫妻と小型犬のココ、るな、ニコが暮らす住宅だ。
室内は、床のタイルをはじめ、白を基調としたホテルライクな空間。中でもLDKは約32帖と広々しており、5.4メートルの高い吹き抜けで2階寝室とつながる。幅5.7メートルの大きな開口部を開け放すと、テラスと一体化。外の大パノラマの景色までひとつながりになる。そんな開放的な空間で「朝、犬を抱っこしながら海を眺めるのが好き」と話すのはNさん。夕日が海に沈むのもきれいに見えるという。
愛犬3匹も普段はLDKで過ごしているが、食事の後などは外のドッグランへ。「伸び伸び遊んでいる姿にいつも癒やされています」
パンやケーキの教室を開くほど料理好きな夫人(32)は、ほとんどの時間をキッチンで過ごす。「広くて使いやすいので、レシピを考えたり試作する時間も楽しいんです」。加えて「できるだけ生活感を出したくない」という夫人は「冷蔵庫や電子レンジ、使わない道具類はキッチン背後の収納やパントリーに入れて隠せるので、空間がスッキリします」と笑顔を見せた。
1階LDK。クリスマス前の取材時に飾っていた高さ2.4メートルのツリーや86インチのテレビがあっても、圧迫感が全くない
直線的でシンプルな外観。左がガレージ、右が住居棟。中央の門から中に入る
屋外のドッグラン。愛犬3匹が伸び伸び遊ぶ
理想を詰め込んだ家
仕事の都合で沖縄に移住した夫妻。「せっかく沖縄に住むんだから」と海を見渡せる高台の土地を購入した。
設計は雑誌を見て気になった事務所に依頼。Nさんは「たくさん要望を出したときに、『まず全部詰め込んでみましょう』と言ってくれたのが良かった。理想をつくってから、予算などに合わせる形で現実に近付けていったので、家づくりのスタートが楽しかった」と振り返る。
そのためドッグラン、石積み、シアタールームなど、一般的な住宅にはあまり見られないものも多い。Nさんは「家の中で誇れる所はたくさんある。でも、犬たちが楽しそうにしているのが何よりです」と目を細める。夫人は「大きいワンちゃんも飼いたいね」と夢を膨らませる。どんな家族がやってきても、おおらかな暮らしができそうだ。
ここがポイント
不在時も犬伸び伸び
N夫妻が求めたのは「夫婦と愛犬のための家」。加えて、30帖以上のリビング、吹き抜け、ドッグラン、ホテルライクな空間、シアタールームなどの細かい要望もあった。建築士の野里雅樹さんと比嘉美幸さんは「全部かなえられるようにしながら、山と海の景色を生かし、人も犬も快適に過ごせる設計を意識した」と話す。
例えば吹き抜けと広い面積で開放的なLDKは、床にタイルを使うことで、犬たちが汚した時の掃除のしやすさとホテルライクな空間を両立。眺望は大きな開口部を設けたLDKや寝室だけでなく、浴室からも楽しめるようにした。
犬がストレスなく過ごすための工夫として、比嘉さんは屋外のドッグランに加え、建物裏手の半屋外空間にもドッグランを配置。「リビングのドッグルームから行き来でき、夫婦が外出している時でも、愛犬たちが自由に過ごせるようにした」と説明する。階段やテレビボードはモルタル仕上げにして、かんだり引っかいたりしても傷がつきにくい仕様にもなっている。
工事は分離発注方式を採用。野里さんのアドバイスを受けながら、夫妻が各業者と直接契約し、やりとりした。Nさんは「造っている人の顔が分かって安心だし、細かい要望を伝えることもできて調整がスムーズでした」と話す。
各業者との直接契約で中間コストを抑えられたため、その分を水回りの設備にかけた。「キッチンや洗面台などは、県外のショールームで確認しながら気に入ったものを取り入れました」と夫人。こだわりの詰まった家に仕上げられたという。
2階寝室。低めの段差とローベッドで犬たちもベッドに上りやすい。ベッドの背後にあるクローゼットと天井部分をつなげることで、クローゼットに湿気がたまりにくくなっている
2階ルーフテラス。遠くの海まで一望できる
シアタールーム。白い壁にプロジェクターで映像を映し、Nさんがサッカー観戦を楽しむ。Nさんは「寝室と雰囲気が違うので、ここで眠るとホテルに来た気分になる」と話す
ダイニングとキッチン。冷蔵庫や電子レンジなどは、夫人の両側にある収納に収められているので、スッキリしている
浴室。大きな窓があり、湯船に浸かりながら外の景色を楽しめる。ハイグレードな設備も相まってホテルのような雰囲気
1階リビングの階段下にあるドッグルーム。奥の小窓から、東側にある半屋外のドッグランに出られる
[DATA]
家族構成:夫婦、愛犬3匹
敷地面積:623.2平方メートル(188.52坪)
1階床面積:160.75平方メートル(48.63坪)
2階床面積:58.21平方メートル(17.61坪)
駐車場床面積:49.14平方メートル(14.86坪)
建ぺい率:37.81%(許容60%)
容積率:37.15%(許容200%)
用途地域:指定なし
躯体構造:鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)
設計:(有)真玉橋設計事務所 野里雅樹、比嘉美幸
コンストラクションマネジメント:
(有)真玉橋設計事務所 大城達人
構造:与儀建築工房
施工:(株)エムズ
電気:(有)沖縄総設
水道:(有)エコ電水
キッチン:キッチンハウス
造園:艸木
その他11社による分離発
◆問い合わせ
(有)真玉橋設計事務所
電話098・937・2777
http://www.madanbashi.com/
撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1932号・2023年1月13日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。