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2022年7月22日更新

[沖縄・お住まい拝見]眺め抜群ホテル空間|(株)山口瞬太郎建築設計事務所

[歴史と文化薫る地で建て替え]遠くに海を望む丘の上。復帰前に開発された高級外人住宅地で物件を購入し、建て替えを行ったMさん(40)。「思い出のホテルを再現」した家は、玄関からもてなしの空間が広がる。

海をイメージし、白と青でまとめた玄関ホール。正面に設けられた大きな窓の外にはインフィニティー水盤もあり、光と景色、涼を取り込む。絵画やピアノなど好きなものを置き、ホテルロビーのようにゆったりくつろげる空間にしつらえた
海をイメージし、白と青でまとめた玄関ホール。正面に設けられた大きな窓の外にはインフィニティー水盤もあり、光と景色、涼を取り込む。絵画やピアノなど好きなものを置き、ホテルロビーのようにゆったりくつろげる空間にしつらえた


思い出つなぐ

Mさん宅
RC造/自由設計/家族3人

7連のアーチが緑と光を届けるアプローチを抜け、玄関へ。両開きの木製ドアを開けると、正面に広がる芝庭とその先に広がる景色に目を奪われる。壁には、Mさんが愛してやまない絵画。ロココ調のベンチとピアノが置かれた玄関ホールは、ホテルのロビーのよう。「ここはリサイタルホールであり美術館。ピアノの音がこだまして心地よく響き、景色を眺めながらゆったりできます」とMさん。窓の外に設けられた水盤は、「訪れた友人の子どもたちに、遊び場として大人気」と笑う。

玄関ホールを軸に、LDKと子ども室、ゲストルームがあるメイン棟と、主寝室があるサブ棟に分かれる造り。コンセプトは「人を招いてワイワイできること」、そして「家族の思い出のあるホテルやお店を再現すること」だ。

建て替え前の建物は、夫妻お気に入りのレストラン。店の調度品だった屋久杉のダイニングテーブルを置いたLDは、天井が高く景色も抜群。壁をれんが張りにしたキッチンは北谷のスペイン料理店を、ロフトと出窓、アルコーブベッドのある子ども室は、ディズニーランドホテルをモデルにした。「小学生の時に両親が建てた家にも子ども部屋に出窓とロフトがあった。母と一緒に庭にハーブを植えたこともよく覚えている。娘にも家族で過ごす家の思い出を残してあげたかった」と夫人。

主寝室があるサブ棟は2階建て。1階にはセカンドリビングと水回りもあり、ヴィラ感覚で静かにくつろげる。思いとイメージが形になった空間で、家族の新たな思い出を育む。

重厚感のある、大きなダイニングテーブルを置くことを軸に計画したリビングダイニング。吹き抜けと掃き出し窓からの眺めにより、開放感と落ち着きを兼ね備えた空間に。掃き出し窓の脇には、愛猫のために階段状のキャットウオークを造り付けた
重厚感のある、大きなダイニングテーブルを置くことを軸に計画したリビングダイニング。吹き抜けと掃き出し窓からの眺めにより、開放感と落ち着きを兼ね備えた空間に。掃き出し窓の脇には、愛猫のために階段状のキャットウオークを造り付けた
 

 

落ち着きのあるブルーの壁をアクセントにした子ども室は、かわいらしくも洗練された雰囲気。壁をへこませて設けたアルコーブベッドが目をひく。ロフトの小窓からは海が見え、逆サイドには腰かけられる出窓がある

落ち着きのあるブルーの壁をアクセントにした子ども室は、かわいらしくも洗練された雰囲気。壁をへこませて設けたアルコーブベッドが目をひく。ロフトの小窓からは海が見え、逆サイドには腰かけられる出窓がある


関わった人に感謝

「海が見える広い土地に住みたい」。夫人の希望で見つけたのは、北中城村の高台にある築50年近い外人住宅。リフォームするつもりで購入し、夫人の父の後輩である建築士に相談した。「私たちの理想をかなえるには、間取りも設備も大転換が必要。思い切って建て替えることにしました」

建て替えにあたっては、設計・建築だけでなく、さまざまな手続きや調整にも時間を要した。夫妻は、「ここの住宅地が整備されて以来、うちが初めての建て替え。建築士さんをはじめ、思いを持った方たちが集まって造り上げてくれた家。人が集い、笑顔の絶えない豊かな時間を過ごせることが、最高の幸せ」と、ほほ笑む。

来客も調理風景を見て楽しめる劇場型オープンキッチン。背後には大容量のパントリーがあり、洗濯機を置いて家事動線にも考慮。壁にはれんがを用い格好良く仕上げた
来客も調理風景を見て楽しめる劇場型オープンキッチン。背後には大容量のパントリーがあり、洗濯機を置いて家事動線にも考慮。壁にはれんがを用い格好良く仕上げた
 

リゾート感あふれる寝室棟のセカンドリビング。2階に寝室がある
リゾート感あふれる寝室棟のセカンドリビング。2階に寝室がある

石張りの壁が印象的なトイレ。お手製の寄せ植えをアクセントに
石張りの壁が印象的なトイレ。お手製の寄せ植えをアクセントに

 

ここがポイント
歴史と趣、調和を重視

Mさん宅があるのは、復帰前、外資系一流ホテルの建設に伴って開発された高級外人住宅地。緑豊かでゆったりとした敷地に、築50年を超える家屋が建ち並び、その統一感のある景観が魅力となっている。設計を手がけた建築士の山口瞬太郎さんは、「近隣住宅や地域の雰囲気、景観となじみながら、施主のリクエストを100%かなえる新しい住まいをどう造るか」を重視。夫妻のライフスタイルはもちろん、近隣との調和、そしてこの先50年の建物の使い方まで見据えて造りや形、高さ、ボリューム感、色合いなどを提案した。

建物は、人が集うことをメインに考えたLDKと、プライベート重視の主寝室をサブ棟に設け、玄関ホールを起点に2棟を渡り廊下でつなぐ造り。西側に前面道路、東側に海を望む立地で、眺めを生かすため、東面に大きな開口部を設けている。寝室棟のみ2階建て。1階にはセカンドリビングと水回りを配置し、完全プライベートでリラックスできる空間に。「建物を2棟に分け、前面道路から奥まった位置に配置。道路から見える建物のボリュームを抑えることで、広さを確保しながら主張し過ぎず、景観に溶け込むことを目指しました」と山口さん。

ホテルのようなくつろげる空間という夫妻の要望、将来的に住まいとしてだけでなく多用途に使いやすいよう、非日常的な雰囲気を作り出す演出にも力を入れた。玄関へ向かう長いエントランスには、夫人が希望したアーチを生かし、光と風、庭の景色を取り込む。玄関ホールには大きなはめ込み窓を設けて景色を取り込み、「ホテル、チャペル、美術館と、見る人によって解釈が違う、楽しい空間になりました」。

駐車スペースの一角には、「ランニングや散歩の途中で、腰掛けて休憩できるように」と、中心にヤシを植え込んだ三角形のベンチを用意。地域との共生、新たな歴史の始まりを意識した工夫が光る。

外観。吹き抜けや2階部分の凹凸でメリハリ。外壁の色は周囲の景観になじむように選んだ
外観。吹き抜けや2階部分の凹凸でメリハリ。外壁の色は周囲の景観になじむように選んだ

寝室棟の浴室。眺望を際立たせるため内装は黒に
寝室棟の浴室。眺望を際立たせるため内装は黒に
 

駐車場一角、歩道との堺に設けた花壇兼ベンチ

駐車場一角、歩道との堺に設けた花壇兼ベンチ



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人、猫2匹
敷地面積:1235.65平方メートル(約373.78坪)
1階床面積:235.17平方メートル(約71.14坪)
2階床面積:11.25平方メートル(約3.4坪)
建ぺい率:21.04%(許容60%)
容 積 率:16.83%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:(株)山口瞬太郎建築設計事務所
     山口瞬太郎・福原清子
構  造:なわけんジム
施  工:(株)成道建設
電  気:開成電設
水  道:海西工業
キッチン:(有)MOV
外  構:(有)前川グリーン土木
フェンス:富元工業

問い合わせ
(株)山口瞬太郎建築設計事務所
電話050・3365・7595
https://yoaa.jp/


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1907号・2022年7月22日紙面から掲載

この記事のキュレーター

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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