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2016年7月29日更新

快適バリアフリー10のヒント|介護する・される 双方に優しい家

バリアフリー賃貸物件「あがりテラス」のオーナーは、約10年間寝たきりの母を介護してきた長女・大城恵子さん(72)、三女・新城幸枝さん(58)、四女・森山千沙代さん(56)の三姉妹。長年の経験と建築士の工夫が詰まった同物件から、快適なバリアフリー住宅のヒントを紹介する。

介助者の動作も考慮

バリアフリー賃貸物件「あがりテラス」(沖縄県糸満市)


介護経験生かして

ことし7月、沖縄県糸満市糸満に完成したバリアフリーの賃貸住宅「あがりテラス」は家具・家電付きのマンスリーハウスで、電動ベッドも完備している。1LDKと2LDKの2棟がある。

車いすでの移動を考え、居室と居室の間には段差が一切無い=ヒント⑨。出入り口はクロゼットにいたるまで、ほぼすべてが引き戸=ヒント⑤。玄関やトイレ、風呂場など立ち上がりが必要なところは手すりが付いている=ヒント②・③。

オーナーは同市在住の大城さん、新城さん、森山さんの三姉妹。要介護5で寝たきりだった母・玉城秀さん(享年92)の介護を10年間続けた。その経験と「高齢者も障がい者も介護する側も、快適に暮らせるように」との思いを同物件に詰め込んだ。

例えば外出先から帰ってきた母親を車から降ろして車いすに乗せ、家に入る動作。大城さんは「大雨のときは、その間だけで母も私たちもびしょ濡れになった」と話し、駐車場から玄関までの間をフラットにするのはもちろん、庇も設置した=ヒント⑦。

大城さんは「ベッドに縛り付けていては本人はもちろん、介護する側もつらい。『あがりテラス』を利用して気分転換したり、バリアフリー住宅のヒントにしてほしい」と呼びかけた。



専門家と一緒に

同物件の設計を担当した団設計工房の永山新さんは「単なるバリアフリーでなく、暮らす人皆に優しい『ユニバーサルデザイン』を意識した」と話す。

三姉妹の要望で玄関から駐車場まで深く取った庇。だが、日差しが遮られ玄関が暗くなってしまう。そこで、玄関前だけをガラス張りにすることで室内に光を取り込んだ=ヒント⑦。

また、玄関から居室に入る部分は、フラットにせずあえて2センチの上がりかまちを設けた=ヒント③。「すべてがフラットになっていると外からごみが入ってきたり、雨風が吹き込む恐れがある。2センチは、車いすが自走で上がれる範囲」と説明。車いすが上がりやすいよう段差の角は斜めに削ってある。

「終の棲家にするならば住みやすさや介護のしやすさに加え、家族構成の変化も考えなければならない。専門家と密に話し合って建てることをおすすめします」と話した。


ヒント① 出入り口は引き戸&幅広に

出入り口はほぼすべて引き戸にし、車いすでも通りやすいよう開口幅を大きく取った。写真のトイレ出入り口は幅90センチ、左側の寝室は120センチ。スペースの関係で引き戸にするのがむつかしい場所は内外両方向に開く折れ戸にした。

 

ヒント② カウンター式洗面台

洗面台は、下部に空きスペースがあるカウンター式。車いすのまま利用できる。トイレは両側に手すりを付けた。右側の手すりは、上下に動くため、車いすからの昇降を邪魔しない。



ヒント③ 2センチの上がりかまち

ベンチや手すりで靴の着脱をサポートする。上がりかまちは、車いすが自走で上れる2センチの高さにしている。


 

ヒント④ 浴槽の両側にスペース

介助者が動きやすいよう、浴槽の両側にスペースを設けた。森山さんは「晩年の母は、二人がかりで浴槽に入れることもあった。その場合、両側にスペースがある方が介助者が動きやすいと感じた」と話す。家族皆が使いやすいよう、シャワーの高さは調節できるようになっている。



ヒント⑤ 上つり引き戸で床フラット

引き戸は上つりにし、敷居のレールを無くした。床面は完全にフラットな状態になるので車いすでも通りやすい。



 

ヒント⑥ 移動時の滑り止めに絨毯(じゅうたん)

新城さんは「入浴後など、母を車いすからベッドへ移動させるとき、私も濡れているから足が滑って二人で倒れそうなることがあった」と話す。転倒防止のため敷いたのが絨毯。車いす移動の邪魔にならないよう、毛足の短いものを選んだ。しっかりベッドに踏ませることでズレを防ぐ。



ヒント⑦ 駐車場から玄関まで庇で雨よけ

雨天時、車から車いすに乗り換える間に、母親も介助する森山さんも、かなり濡れてしまうことがあったそう。「庇があれば、雨天時でも外出しやすい」と大城さん。この庇は、玄関前だけはガラス張りになっており、雨を防ぎつつも室内へ光を取り込む工夫がなされている。



ヒント⑧ 回転いすで移動容易

ダイニングのいすは、車いすからの移動がしやすよう、座面が回転するものをチョイス。車いすのままでも食事ができるよう、テーブルは下部分がスッキリしているものを選んだ。



ヒント⑨ パティオまで段差無し

床はパティオに至るまで全室がフラット。「緑あふれるパティオで日なたぼっこを楽しんでほしい」と大城さん。
 

ヒント⑩ スイッチ低く コンセント高く

車いすに乗ったままでも手が届くよう、照明スイッチは床から約110センチと、低めに設置。逆にコンセントは、あまりかがまずに抜き差しできるよう、床から約40センチの高さに設けられている。


☆あがりテラス インフォ☆

【物件情報】
マンスリーハウスのほか、家具付き賃貸物件(2年契約)、ウィークリーマンションとしての入居も可能。月額家賃/1LDKは13万円、2LDKは15万円(2年契約の場合は別途、入居時費用が必要)。ウィークリーは1LDKで3万5千円、2LDKで4万円。

<問い合わせ先>
ライフコーポレーション
電話=098-850-2222
水曜定休
http://www.life-okinawa.jp

【設計】
一級建築士事務所 団設計工房 
電話=098-863-2355
http://www.dansekkei.jp


編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1595号・2016年7月29日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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