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お住まい拝見

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2020年3月13日更新

ラフさに遊び心プラス|(株)エコプラス

[お住まい拝見|全面打ち放しで傷・汚れ気にせず]「ラフでかしこまらない生活」を望んだIさん(42)宅は、全面打ち放しで好みの家具などで飾られたリビングと庭を気軽に行き来できる家。子ども部屋は狭くても遊びの仕掛けが満載だ。

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Iさん宅のLDK。壁、天井、床までコンクリート打ち放しでラフさを演出した。写真左手の掃き出し窓から愛犬と家族が庭とリビングを出入りする。風が抜け、家族の趣味が詰まった心地よいリビングは家族の中心地になっている


小さな家と庭を行き来

Iさん宅
RC造/自由設計/家族4人+愛犬

Iさん宅を訪ねると人なつっこい愛犬つばきが庭で出迎えてくれた、かと思うと、そのまま掃き出し窓からリビングへ走って行く。庭とリビングをつなぐその窓の前には家族のスリッパが並び、ほぼ玄関状態だ。

「ラフな感じの室内で、かしこまらない生活がしたい」。インテリア好きなIさんの希望で、室内は床、壁、天井までコンクリートの打ち放し仕上げに。「風が通るから暑さや湿気をあまり感じない。寒さも今回の冬はガスヒーターで十分平気。みんなが庭とリビングを行き来して汚れてもサッと掃除ができて楽で、傷も気にならない」と夫人(41)もお気に入りの様子だ。

家族みんなでやっているというロードバイクが庭先に、Iさんの趣味の植物や家具がリビングを飾り、テレビの横には夫人が好きな駄菓子が瓶詰めされて並ぶ。家族の趣味があふれるリビングで長女(中3)と長男(小5)がくつろぐ姿を見ながら、「子どもたちはだいたいソファに寝っ転がっている。リビングが家族の中心にある」と夫人はうれしそうに語る。


キッチンからリビングダイニングを見る。室内のしつらえは「オーダーメードのダイニングテーブルと好きなイスに似合うように選んだ」とIさん。海水魚を飼う予定だというテレビ左隣りの水槽は、設計当初から置き場を決めて配水設備を整えた。扉がない仏壇は造作で壁に取り付けた


南の庭からリビングを見る。玄関は写真左手側にあるが、掃き出し窓が家族の出入り口になっていて、日頃から室内と庭を一体的に使っている様子がうかがえる。「法事などで人が集まる時は庭にイスやテーブルを出す」と夫人

部屋にこもらないようにとあえて子どもたちの部屋は、それぞれ3帖にも満たない狭さ。だが、遊び心にあふれる。ロフトがベッドになっていて、そこまで続くボルダリングは「本格的なものを付けちゃったんだけど、子どもたちは軽々登るね」と笑うIさん。対して「下りる時は縄ばしごだよ」と長男が返す。ロフトの壁1面に取り付けているホワイトボードは長女のアイデア。「前から小さいのを使っていて、今は大きいから消さずに残せて勉強に役立っている」


(上)長女の部屋。ボルダリング、縄ばしごで登るロフトの上がベッドになっていて、そこの壁1面にホワイトボードが取り付けられている。長男の部屋も同じ造りで、可動式収納で仕切っている (下)長女の部屋のホワイトボードには書き込んだ勉強の跡が残っていた


使う人の好み入れて

以前住んでいたアパートから、子どもたちが転校しなくていい場所で土地を探していたIさん夫婦は、たまたまチラシで近くの土地を見つけた。「家族みんなが興味を持つものを取り入れる」視点が合致した建築士と家づくりを進めた。「私が希望したのはキッチンや洗濯室の収納。インテリアは夫にまかせていたけど、唯一お願いしたのは寝室の壁の本紫色」と夫人。寝室、リビング、子供部屋、どこも使う人の好みや心くすぐられる仕掛けが取り入れられている。

「もともと大きな家は望んでいなくて、敷地は半分の広さで十分だったんだけど、どうせなら庭をつくろうと思って」。土地の余剰でできた家庭菜園やアプローチの植栽はIさんの趣味の場になっている。「見よう見まねでやっていて、アプローチを作り込むのにはあと2年はかかるかな」とIさんは笑った。


リビングダイニングの北側にある夫婦の寝室。夫人が好きな本紫色の壁の後ろはウオークインクローゼットになっている


Iさん宅の外観。アプローチ部分の造園はIさん自身が手掛ける。右側は家庭菜園


ここがポイント
南北で風通し採光に工夫

設計を担当した(株)エコプラスの池原真樹さんは、「犬を飼うことが決まっていて、リビングを中心にラフな空間で暮らしたいという要望もあって、全面打ち放しを提案した」と話す。生活の中心になるリビングの南側に庭と大きな開口部、北側にハイサイドライトを取って風通しを確保することで、「暑さや寒さ、湿気といった打ち放しのデメリットをカバーできたように思う」

さらに、天井板や床材などの内装が省けたことで「階高が通常よりも50センチほど低くでき、コンクリート量が減ってコストを抑えることにもつながった」。リビング部分は、天井の上に梁を入れた逆スラブにすることで、天井高が約2.9メートルあって広がりを感じる空間になっている。「高くなった分でハイサイドライトが取れた。またキッチンや寝室は普通のスラブだから、天井高が変わって空間にメリハリも生まれた」

家事動線を単純にするため水回りをキッチンの北側にコンパクトにまとめたが、隣家のリビングに面していた。そこで、トイレは高い位置に長く、浴室は天窓から壁を伝ってくの字型に細長い窓を入れたほか、洗面台の上には天窓を設けた。「視線を遮りつつ室内に明かりを取り込むように窓の形を工夫したことで、じめっとした雰囲気にならない」

水が浸透することで劣化する打ち放しは、水回りのメンテナンス性が課題。少し変わった施工ではあるが、「車のはっ水・防水に使われるガラスコーティング剤を、浴室など水回りの打ち放し部分の壁面に使用した。住宅に使うのは初めてだが、効果はあるようだ」と池原さんは話した。


キッチンから室内全体を見る。写真左手の棚の中には調理家電や食器が収納され、「雑多なものを隠せる」引き戸が付いている


洗面室とトイレ。「日中はとても明るい。雨の日は天窓に雨が当たる音が心地いい」と夫婦

[DATA]
家族構成:夫婦+子ども2人、犬1匹
敷地面積:396㎡(119.79坪)
1階床面積:99.22㎡(30.01坪)
建ぺい率:30.42%(許容60%)
容積率:25.06%(許容200%)
用途地域:用途未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)エコプラス 池原真樹
構造:(株)エコプラス
施工:吉田建設
電気:城電気工事社
水道:上門工業
ガス・住設:(株)エコプラス



[問い合わせ先]
(株)エコプラス
098-931-9071


撮影/ 矢嶋健吾 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1784号・2020年3月13日紙面から掲載

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