インテリア
2018年7月20日更新
安い材料を、使いたおす|これからの家づくりのヒント
[コストを抑え長く住む 施主と家との良い関係]ここ10年ほどで、人件費や資材がだいぶ高騰して、ひと昔前と比べると家を建てるのにだいぶお金がかかるようになってしまいました。それでも「家を建てたい!」という思いを持つ方は多いと思います。そこで僕は、安い材料を使って建てて、住み手自身で手入れしたり直したりしながら長く住んでいく方法を提案したいと思います。
▲左はガサガサした質感のコンクリート。右も同じくガサガサした質感のブロック
ブロックとか、ベニヤ板とか
沖縄は台風が来るので、本土と比べて鉄筋コンクリート造やブロック造などの頑丈な家が多いですが、そのなかでも地元で生産されている安価なブロックで骨組みを作ってそのまま内装にしてしまえば、家を安く建てることができます。
同じように、普段は仮設材や仕上材の保護など、脇役として使われるラワンのベニヤ板でドアや家具を作ったり、内装の仕上げに使えば、上等な銘木合板などよりもコストが安く抑えられます。
安い材料は、粗い
ブロックは表面がガサガサしているし、ベニヤ板も色がバラバラだったり木目が強かったり弱かったりしますが、この質感の粗さが模様のようになっているので、汚れたり傷がついても自分で塗装を塗り直したり、傷を直したりできます。電気のスイッチのまわりなど、よく手に触れるところは特に汚れるので、自分で塗り直せると便利です。粗い質感がカムフラージュしてくれるので、上手に塗れなくても、バレません!
自分で手入れできると手入れするのが楽しくなるし、家ともっと仲良くなれます。自分で直したところを眺めながら飲むビールは、まあまあ、おいしいです。
粗い材料は、おおらか
粗い材料はもとからガサガサしているうえ、汚れても自分で手入れできるので、新築で建てた家でもアタラサー(新品を汚れないように汚れないように大切にする)して、家をきれいに保つことに神経を注ぐ必要がなく、気楽に使うことができます。
気楽な材料でつくった家には気楽な空気が漂います。少しぐらい汚れても構わない。少しぐらい物が散らかっていても構わない。むしろそのほうがいい雰囲気だったりする。そんな、おおらかで懐の深い家が僕は好きです。
安い材料を使って、自分で塗って、自分で直して、ずっと使いたおす。人任せにするよりもお金もかからない。お手入れの知識や技術は身につく。ビールがおいしく飲める。
そんな家とのいい関係は、プライスレス(なんちゃって)。
▲壁はブロック、ドアと家具と天井はベニヤ板で仕上げた家
▲右手や正面の壁はブロック、左手の靴箱はベニヤ板、奥の玄関の床はコンクリートの土間、天井もコンクリートで仕上げた家
執筆者:島袋巧(しまぶくろ・たくみ)ロカルウ 代表
1975年沖縄市生まれ。建築研究所匠斎庵(現、建築設計同人「匠才庵」)で建築の仕事を始める。ND企画設計(現、NDアーキテクトン)で、戸建て住宅、集合住宅の設計に携わる。2013年、ロカルウ設立。一級建築士。ロカルウ 098-911-0521
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1698号・2018年7月20日紙面から掲載