住まいに関するQ&A
2017年7月14日更新
民泊で気をつけること、旅館業法手続きのポイントは?|気になるコト調べます!㉑
築35年、3階建ての美術店が旅宿に。中古物件の利活用や民泊への関心が高まる中、那覇市の不動産会社(有)イープは売却の依頼を受けた店舗併用住宅を買い取り、1日1組限定貸しの簡易宿泊所として運営している。地域の人たちにもなじみ深い、趣のあるレンガ張りの建物は、外国人観光客を中心に人気の宿となっている。企画・運営を手掛ける同社の米須秀都さん(42)は、「地域の古い建物をどう生かすか。宿泊施設に転用するには、用途変更や旅館業法の手続きがポイントです」と説明する。
用途地域と床面積がカギ
趣ある店舗併用住宅を用途変更、簡易宿泊所に
大人数、子連れでも気兼ねなく
那覇市壷屋、やちむん通り近くにある旅宿「小巴里(こぱり)」。築35年、約10坪の敷地に建つレンガ張りの建物は、地域の中でも存在感のある建物だ。
もともとは60年余り美術店を営んでいた70代の男性が所有する店舗併用住宅で、1、2階が美術店、3階が住居だった。延べ床面積は67平方メートル。「利便性が良く、物件に興味を持つ人は多かったが、狭さと急な内階段がネックとなり、なかなか成約にはつながらなかった。レンガ造りで、壺屋の町並みにもマッチした風情のある建物。造りもしっかりしていたので、わが社で買い取り、宿泊施設として活用することにしました」と米須さんは話す。
障子を用いた天井照明など、もともとの和のたたずまいを生かし、1階を喫茶室に、2階は洋室、3階をキッチン付きの和室に改装。旅館業法の簡易宿所として許可を受け、2016年12月に開業した。最大7人まで宿泊可能。トイレとシャワー室は1階と3階にそれぞれ設けた。
「1日1組限定貸しなので、『赤ちゃん連れでも気兼ねなく過ごせる』と好評をいただいております。各室に掛かる掛け軸や額装は建物の元オーナーからの寄贈で、和の雰囲気が随所に感じられる室内に、外国人のお客さまには『ビューティフル!』と気に入っていただいています」。
周辺環境や条例、事前に確認を
既存物件で宿泊事業を始める場合、用途変更や旅館業法の許可を受けるには、さまざまな手続きが必要になる。小巴里の場合、商業地域に立地していたこと、延べ床面積が100平方メートル未満だったことから比較的スムーズに手続きが完了した。
米須さんは、「学校や図書館などが集まっている文教地区や住居専用地域など、建物のある地域の用途指定によっては、そもそも宿泊事業ができない。物件を購入する際は建物の造りも大切ですが、周辺環境や市町村の条例なども事前にしっかり調べておくことが大事」とアドバイスする。
また、延べ床面積が100平方メートル以上になると用途変更手続きが必要になる。「築年数が古い建物だと、図面等が残っていないケースも。図面の引き直しや用途変更に伴う追加工事が発生するなど、費用が大幅に増すこともあります」。
近隣とのコミュニケーションも重要だ。「近隣の方々へ迷惑が掛からないよう、何か困ったことがあればその都度フォローを心掛けています」と米須さん。小巴里の運営をきっかけに、同社には民泊をやりたいという相談や問い合わせが増え、宿泊事業のコンサルティングも始めている。中古物件活用のヒントが得られそうだ。
敷地10坪、1日1組貸しの旅宿「小巴里」
1階の喫茶室。障子を使った天井照明など、既存の内装を生かしてリフォームした。写真左端のドアの奥には、トイレとシャワー室がある
通りに面して建つレンガ張りの建物は、趣があり目を引く。宿泊客に建物の歴史を知ってもらうため、美術店の木製看板は残したままにしている
2階の洋室(上写真)にはベッドを用意。ベッドはシングル、ダブルのいずれかが選べる。3階の和室は、家族でくつろぎながら食事をしたり、布団を敷いて寝たりと使い方は多様。脇にはキッチンとシャワー、トイレがある
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1636号・2017年5月12日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。