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2023年9月15日更新

電気をためて好きなときに使う|停電対策「ポータブル電源編」[建材ピックアップ]

8月に襲来した台風6号では多くの家庭で停電し、改めて自然災害のリスクを実感した。そこで電気の備えとしてポータブル電源(持ち運びできる蓄電池)と発電機を2週にわたって紹介する。今回はポータブル電源編。

パワーや作業環境に違い

非常用の電源として便利なのが電気を蓄えて持ち運びができる「ポータブル電源」と、ガソリンやガスなどの燃料から電気を作る「発電機」だ。どちらもホームセンターや専門店で購入でき、大がかりな工事が不要で手軽に導入できる。

発電機はハイパワーで多くの電力が供給でき、燃料さえあれば長時間使える。ただし稼働音が大きく、排ガスも出るので室内では稼働できない。発電機に関しては次号(9月22日発行)で紹介する。

ポータブル電源は、稼働音が静かで室内でも使用できる。アパートやマンションなどでも気兼ねなく使えるのがメリット。一方で発電機よりは電力の出力量が少ない製品が多く、充電した電気を使い切ったら使用できない。ソーラーパネルで充電できるタイプもあるが、台風時など荒天の場合、充電効率は低い。
 

ポータブル電源

長所
・作業音が静かで、室内でも問題なく使える。
・メンテナンスがほぼ不要。充電さえすれば使える。
・発電機よりもコンパクトな製品が多く、持ち運びもしやすい。

短所
・発電機よりは出力が弱い製品が多い。起動電力の大きなエアコンなどの使用が難しいことも。
・蓄電した容量しか使えない。(ただし、ソーラーパネルで充電できるタイプもある)


 
発電機

長所
・ポータブル電源よりもハイパワーで多くの電力が供給できる(定格出力が大きい)製品が多い。
・燃料(ガソリン、ガスなど)がある限り、長時間使い続けられる。

短所
・排ガスが出るため、室内では稼働できない。
・稼働音が大きめ。
・燃料の準備・保管・管理が必要。
・定期的なメンテナンスが必要(エンジンオイルの交換など)。

※発電機に関しては、次号の本紙で(9月22日発行号)詳しく説明する


用途×電力容量で選ぶ

ポータブル電源を選ぶときに、大事なのが「定格出力」と「容量」だ。「定格出力とは安定して出力できる電力量で、容量はためておける電力量を表す」と、ポータブル電源を取り扱うアウトドアショップ燈人(ともしびと)の與那嶺康貴さんは説明する。

例として、定格出力が300Wのポータブル電源であれば、テレビ(120W)と家庭用扇風機(50W)、小型冷蔵庫(100W)で計270Wのため、同時に使うことができる=左上表参照。「ただし、家電は起動時に一時的に消費電力が高くなるものもある。冷蔵庫などは消費電力の4倍の電力が必要だったりするので注意が必要です」。その起動電力に対応するため、ポータブル電源には最大出力という指標もある。先の三つの起動電力は計600Wのため、最大出力600W以上であれば同時に起動できる。また、容量が270Whのポータブル電源なら、扇風機だけに絞れば約5時間半は使い続けられる。

防災用のポータブル電源を取り扱う㈲イストの大城満昭代表は「容量、定格出力ともに大きくなるほど値段も上がるし、サイズも大きくなる。停電時にどの家電を使いたいかとのバランスを考えて選びましょう」と話す。その際は出力ポートの確認も忘れずに。

また、安全性も大事。消費者庁によると、ポータブル電源の異常発熱による火災事故は毎年発生しており、製造・販売元がはっきりしている製品を選ぶよう呼びかけている。安全性の目安として、BMS(バッテリーマネジメントシステム)を搭載している製品や、「防災製品等推奨品マーク」がついている製品のほか、「各種安全性テストを実施しているなど、根拠が明記されている製品を選びましょう」と大城代表は話した。


家電の消費電力と起動電力の目安
参考/ヤマハ発電機カタログ、ヤマハホームページ
記載の消費電力・起動電力はあくまで目安です。手持ちの電気製品の消費電力・起動電力を確認ください




出力ポートもチェック

出力ポートとは、電気の供給口で、コンセントなどを指す。一般的なポータブル電源には、多くの家電に使用する「AC出力ポート(コンセント)」と、スマートフォンやタブレットなどの充電に使う「USBポート」、車のシガーソケットなど車載専用の電気機器などに使用する「DC出力ポート」が備わっている。

購入する際は、停電時に使いたい家電や機器に必要な出力ポートがあるものを選ぼう。



「正弦波」の製品を選ぼう
正弦波は規則正しい波形を描く出力波形

ポータブル電源を購入する時は、出力される電気の波形も確認しよう。パッケージや取扱説明書に記載されている。一般家庭のコンセントから出力されるのは「正弦波」だ。多くの家電製品も正弦波を前提に作られていて、ポータブル電源の出力波形も「正弦波」または「純正弦波」であれば、すべての家電で問題なく使える。

一方、原価を抑えるために「矩形(くけい)波」や「修正正弦波」のものもあり、それらの波形で精密機器などを使用すると、故障の恐れもある。メジャーブランドのポータブル電源はだいたいが正弦波だが、一部の安い外国製品や古いモデルは、矩形波や修正正弦波のものもあるので注意。


 

大容量でUSBポートも36個 施設や会社の備えにも

㈲イスト(南風原町)
HUG1500と折り畳み式ソーラーパネル


HUG400A
 

㈲イストでは、防災・非常用製品として開発されたプライムスター社のポータブル電源を取り扱っている。HUG1500は、その名の通り1500Whも蓄電ができる大容量タイプ。定格出力も1500Wで、USBポート36個、AC出力が6個もあり、「施設や会社での使用にも向いている」と大城代表。HUG400Aは持ち運びしやすいコンパクトサイズ。蓄電容量は390Whで、定格出力は300W。両製品とも各種安全性テスト確認済みで、別売りのソーラーパネルと組み合わせれば太陽光での充電が可能。

◆問い合わせ/㈲イスト(電話=098・888・5883)
 


 

持ち運びしやすくアウトドアにもぴったり

アウトドアショップ燈人(那覇市)

アウトドアショップ燈人では、1泊2日~2泊3日のキャンプなどにも重宝するコンパクトなポータブル電源が人気。「BN-RB62-C(JVC)」=写真左=は片手で持ち運びできるコンパクトサイズで、定格出力は500W、容量は626Wh。さらに小型の「MIGHTY別注モデル」=右=は定格出力300W、容量は331Wh。スタッフの與那嶺康貴さんは「アウトドア用品としては男前なブラックカラーが人気。スマホの充電やパソコン、扇風機など問題なく使えます。停電時だけでなく、リモートワークなどいろんなシーンで使えて便利ですよ」と話した。

◆問い合わせ/アウトドアショップ 燈人(電話=098・866・5365)

 
【教えてくれた人】
よなみね・やすたか/アウトドアショップ燈人のスタッフ。本紙で毎月第一週に「アウトドア×減災」も執筆中。アウトドアにも使え、災害時にも役立つグッズや知恵などを紹介している

おおしろ・みつあき/一級建築士事務所 ㈲イストの代表取締役。建物の設計・施工のほか、防災・非常用製品を取り扱うプライムスター社の県内代理店としてポータブル電源などの販売も行う

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②良質な電気を供給 高出力で長時間「インバーター発電機編」

編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1967号・2023年9月15日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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