2019年5月31日更新
敷き草で水分蒸発防ぐ|ハルサー×野菜ソムリエ[1]
文・奥間美佐江
野菜を育てるところから食べるところまで楽しむ野菜ソムリエの奥間美佐江さん。1733号(2019年3月22日発行)の記事が好評だったため連載としてスタートする。今回は、夏野菜の育て方やおいしい食べ方、敷き草を使った乾燥対策について。
夏野菜と乾燥対策
自宅から畑までは、車で約20分。クーラーが効いた車内は快適でも、畑に着くと湿気と暑さが押し寄せます。だから夏は、熱中症予防のために、シークヮーサードリンクと水をたっぷりと用意して意識的に水分補給。畑にいる時間を短くして無理をせず、休憩を取りながら作業をすることで、夏季の家庭菜園も楽しく続けられます。
気温が上がるとニガウリ(ゴーヤー)、ヘチマ、トウガンなどの夏野菜はもちろん、ショウガ、ヤマイモがあっと言う間に大きくなります。2~3日畑を留守にすると、野菜も雑草も勢いよく成長して、風景が違って見えるほど。
子どもの頃、ニガウリは嫌いな野菜のひとつでしたが、今では毎日食べても飽きないほど、夏の食卓には欠かせない島野菜になりました。
育てるときは、数回に分けてポットに種をまいて苗を準備しておけば、「台風にやられちゃった!」となっても、「次があるさ」とすぐに植え直すことができます。苗を購入するときは、イボなしや白レイシなど見た目がちょっと変わったものを一緒に育て、それを使ってどう料理しようかと考えるのも楽しみ。パイナップルと一緒にジュースにしたり、ニガウリのつくだ煮を作ってもおいしいです。
ヘチマは採れ過ぎて食べるのが大変なので、毎年2株ずつ植えることにしています。実がやわらかく、油で軽く炒めるだけでおいしく食べられる短形の品種は、虫も好物のようで果実に穴を開けられることも。敷き草代わりのネットの下にいるカタツムリなどを防除しながら育てています。収穫期間も長く、植え付け前の元肥と実が付き始めてからの追肥をして成り疲れを防いでいます。
土づくりにもエンバク活用
強烈な沖縄の太陽によって乾燥すると、粘土質の土「ジャーガル」は石のように硬くなり、地面が割れて野菜の根が切れることがあります。そうならないように野菜の株元には草を敷いて水分の蒸発を防ぎ、株元から離れた所は耕運機で耕します。
そのため、畑にはレモングラスとエンバクを植えてあり、敷き草として使えるようにしています。レモングラスは踏んで歩くたびにさわやかな香りがして、気持ちもリフレッシュできるのでまさに一石二鳥。エンバクは3月ごろに種をまき、夏野菜の敷き草にするとともに、ストロー状の形=右写真=を利用して土づくりにも使います。
固い土をハンマーで割り、刻んだエンバクや堆肥と混ぜ合わせ、夏の間に耕しておけば、硬い土も次第にほぐれて次の野菜を植えるための準備にもなります。
キュウリの根元にエンバクを敷いて乾燥対策をする奥間さん
敷き草として使うエンバクを刈る様子。土にすき込み、地力を高める緑肥としても使える
ストロー状のエンバクの茎。短く刻んで土にすき込むことで、土の中に空気を取り込むことができる
育てるポイントとおすすめレシピ
ニガウリ
熱帯アジア原産のニガウリは、解熱、疲労回復、眼病予防の薬としても使われてきました。苦味成分のモモルデシンが食欲増進に役立ち、夏に欠かせない島野菜です。ニガウリのビタミンCは加熱しても壊れにくく、苦味成分が血糖値の急激な上昇を抑えると言われています。台風に備えて、4月~6月にかけて数回種まきをしています。
▲ニガウリの種。種の先端を切って植えると発芽が早くなる。一晩水に漬けておいてもよい。本葉4~5枚ほどでポットから畑に定植する
▲ニガウリ棚。台風対策のため地這(ば)いでも育てており、写真右下に向かって地這いのツルが伸びている
▲ニガウリ棚の下には、ミツバチが寄ってくるように、バジルやセリ科のハーブ(フローレンスフェンネル)を植えている=左下の黄色い花。
混みあってきたらニガウリのツルを間引きして、黄色くなった葉=右下=は取り除く
▲ニガウリのつくだ煮。厚めにスライスしたニガウリ、乾燥シラス、しょうゆ、黒糖、酢を汁気がなくなるまで煮る。火を止めてからゴマ油を加えれば完成
キュウリ
カリウムが多く含まれ、高血圧や動脈硬化の予防に役立ちます。育てる際は、株元から7節目まではわき芽と花を取り除き、株を大きくするのがポイント。伸長が早く、朝夕で大きさが違うので、たくさん採れる時は10センチのミニキュウリで収穫しています。
▲キュウリ=下=とネギはお互いの病害虫を減らして、成長を助ける「コンパニオンプランツ」と言われている。それぞれの根が絡むように植え付ける
▲キュウリのガスパチョ。キュウリ、リンゴ、バゲット、ニンニク、レモン汁、水、白ワインビネガー、オリーブオイルをミキサーにかけて滑らかにする。塩こしょうで味を調えれば完成
ウリ科の病害虫対策
【ネット掛け】トウガン、ヘチマ、島カボチャなど、ウリ科の野菜を食害するウリハムシ=下写真=を防ぐために、小さいうちはネットをかぶせて育てる=右。窮屈になってきたらネットを取り外し、ツルを放射状に広げる。ツルが混みあった時には、間引きをする。
【泥はねを防ぐネット】葉に泥が付くと病気になりやすいので、ヘチマや島カボチャの下にはネットを敷く=下写真。日陰や湿った所にはカタツムリやナメクジが集まるので、ネットをめくって取り除く。
この時季の手入れ(追肥と土寄せ)
ショウガ
育てるうちに不足してくる栄養素を補うため、一株にひと握りの有機肥料=下写真=を追肥。そのとき、根元まで土をかける土寄せも合わせて行う。さらに株が大きくなったら、根を切らないように離れた所から土寄せする。ショウガは根茎(食べる部分)が日光にあたると、緑色になり、食感や味も落ちるので、土寄せは大事な作業となる。
また、ショウガは乾燥を嫌うので、敷き草で水分の蒸発を防ぐ=下写真。夏に茎葉を大きく育てると、収穫量も増える。
サトイモ
イモの肥大を助けるため、数回に分けて土寄せを行う=下写真。サトイモは高温多湿を好む野菜で、夏場の乾燥には弱いので、梅雨明け後は敷き草をして保湿をする。
ナス
ひと月に1回程度、しっかり根が伸びるようにするため、広がった葉の下(赤円部分)を目安に追肥をする。翌月は別の葉の下に行うなど、成長が偏らないようにする。
水やりは株元だけではなく、周りにもたっぷりとかける。
自宅から畑までは、車で約20分。クーラーが効いた車内は快適でも、畑に着くと湿気と暑さが押し寄せます。だから夏は、熱中症予防のために、シークヮーサードリンクと水をたっぷりと用意して意識的に水分補給。畑にいる時間を短くして無理をせず、休憩を取りながら作業をすることで、夏季の家庭菜園も楽しく続けられます。
気温が上がるとニガウリ(ゴーヤー)、ヘチマ、トウガンなどの夏野菜はもちろん、ショウガ、ヤマイモがあっと言う間に大きくなります。2~3日畑を留守にすると、野菜も雑草も勢いよく成長して、風景が違って見えるほど。
子どもの頃、ニガウリは嫌いな野菜のひとつでしたが、今では毎日食べても飽きないほど、夏の食卓には欠かせない島野菜になりました。
育てるときは、数回に分けてポットに種をまいて苗を準備しておけば、「台風にやられちゃった!」となっても、「次があるさ」とすぐに植え直すことができます。苗を購入するときは、イボなしや白レイシなど見た目がちょっと変わったものを一緒に育て、それを使ってどう料理しようかと考えるのも楽しみ。パイナップルと一緒にジュースにしたり、ニガウリのつくだ煮を作ってもおいしいです。
ヘチマは採れ過ぎて食べるのが大変なので、毎年2株ずつ植えることにしています。実がやわらかく、油で軽く炒めるだけでおいしく食べられる短形の品種は、虫も好物のようで果実に穴を開けられることも。敷き草代わりのネットの下にいるカタツムリなどを防除しながら育てています。収穫期間も長く、植え付け前の元肥と実が付き始めてからの追肥をして成り疲れを防いでいます。
土づくりにもエンバク活用
強烈な沖縄の太陽によって乾燥すると、粘土質の土「ジャーガル」は石のように硬くなり、地面が割れて野菜の根が切れることがあります。そうならないように野菜の株元には草を敷いて水分の蒸発を防ぎ、株元から離れた所は耕運機で耕します。
そのため、畑にはレモングラスとエンバクを植えてあり、敷き草として使えるようにしています。レモングラスは踏んで歩くたびにさわやかな香りがして、気持ちもリフレッシュできるのでまさに一石二鳥。エンバクは3月ごろに種をまき、夏野菜の敷き草にするとともに、ストロー状の形=右写真=を利用して土づくりにも使います。
固い土をハンマーで割り、刻んだエンバクや堆肥と混ぜ合わせ、夏の間に耕しておけば、硬い土も次第にほぐれて次の野菜を植えるための準備にもなります。
キュウリの根元にエンバクを敷いて乾燥対策をする奥間さん
敷き草として使うエンバクを刈る様子。土にすき込み、地力を高める緑肥としても使える
ストロー状のエンバクの茎。短く刻んで土にすき込むことで、土の中に空気を取り込むことができる
育てるポイントとおすすめレシピ
ニガウリ
熱帯アジア原産のニガウリは、解熱、疲労回復、眼病予防の薬としても使われてきました。苦味成分のモモルデシンが食欲増進に役立ち、夏に欠かせない島野菜です。ニガウリのビタミンCは加熱しても壊れにくく、苦味成分が血糖値の急激な上昇を抑えると言われています。台風に備えて、4月~6月にかけて数回種まきをしています。
▲ニガウリの種。種の先端を切って植えると発芽が早くなる。一晩水に漬けておいてもよい。本葉4~5枚ほどでポットから畑に定植する
▲ニガウリ棚。台風対策のため地這(ば)いでも育てており、写真右下に向かって地這いのツルが伸びている
▲ニガウリ棚の下には、ミツバチが寄ってくるように、バジルやセリ科のハーブ(フローレンスフェンネル)を植えている=左下の黄色い花。
混みあってきたらニガウリのツルを間引きして、黄色くなった葉=右下=は取り除く
▲ニガウリのつくだ煮。厚めにスライスしたニガウリ、乾燥シラス、しょうゆ、黒糖、酢を汁気がなくなるまで煮る。火を止めてからゴマ油を加えれば完成
キュウリ
カリウムが多く含まれ、高血圧や動脈硬化の予防に役立ちます。育てる際は、株元から7節目まではわき芽と花を取り除き、株を大きくするのがポイント。伸長が早く、朝夕で大きさが違うので、たくさん採れる時は10センチのミニキュウリで収穫しています。
▲キュウリ=下=とネギはお互いの病害虫を減らして、成長を助ける「コンパニオンプランツ」と言われている。それぞれの根が絡むように植え付ける
▲キュウリのガスパチョ。キュウリ、リンゴ、バゲット、ニンニク、レモン汁、水、白ワインビネガー、オリーブオイルをミキサーにかけて滑らかにする。塩こしょうで味を調えれば完成
ウリ科の病害虫対策
【ネット掛け】トウガン、ヘチマ、島カボチャなど、ウリ科の野菜を食害するウリハムシ=下写真=を防ぐために、小さいうちはネットをかぶせて育てる=右。窮屈になってきたらネットを取り外し、ツルを放射状に広げる。ツルが混みあった時には、間引きをする。
【泥はねを防ぐネット】葉に泥が付くと病気になりやすいので、ヘチマや島カボチャの下にはネットを敷く=下写真。日陰や湿った所にはカタツムリやナメクジが集まるので、ネットをめくって取り除く。
この時季の手入れ(追肥と土寄せ)
ショウガ
育てるうちに不足してくる栄養素を補うため、一株にひと握りの有機肥料=下写真=を追肥。そのとき、根元まで土をかける土寄せも合わせて行う。さらに株が大きくなったら、根を切らないように離れた所から土寄せする。ショウガは根茎(食べる部分)が日光にあたると、緑色になり、食感や味も落ちるので、土寄せは大事な作業となる。
また、ショウガは乾燥を嫌うので、敷き草で水分の蒸発を防ぐ=下写真。夏に茎葉を大きく育てると、収穫量も増える。
サトイモ
イモの肥大を助けるため、数回に分けて土寄せを行う=下写真。サトイモは高温多湿を好む野菜で、夏場の乾燥には弱いので、梅雨明け後は敷き草をして保湿をする。
ナス
ひと月に1回程度、しっかり根が伸びるようにするため、広がった葉の下(赤円部分)を目安に追肥をする。翌月は別の葉の下に行うなど、成長が偏らないようにする。
水やりは株元だけではなく、周りにもたっぷりとかける。
おくま・みさえ/野菜ソムリエプロ、沖縄野菜プロジェクト協同組合理事。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1743号・2019年5月31日紙面から掲載