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2018年8月3日更新

移住促進で地域を活性化[うるま市浜比嘉島・平安座島・宮城島・伊計島]

[歩いて見つけた!地域の住み心地ー23ー]勝連半島から延びる海中道路を渡って行ける四つの島、うるま市の浜比嘉島・平安座島・宮城島・伊計島は、利便性を求めて本島へ人口が流出し、空き家が増えた。地域活性化のため、同市企画政策課は2016年度から移住促進を図っている。本島から伊計島の空き家に移住し、自らの手で修繕した東将寛さんと比嘉久美子さんは、「街中の雑踏から解放された」と島での生活を語る。

街の雑踏から抜け出す


人口急減で空き家増

うるま市の勝連半島から延びる「海中道路」の先には、平安座島・浜比嘉島・宮城島・伊計島の四つの島が連なる。主な産業は農業や漁業で、豊かな自然を生かした観光業も盛んだ。

本島と平安座島が陸路で初めてつながれたのは1972年。それまでは渡し舟や干潮時に干潟を歩いて行き来していたという。以降約10年をかけて伊計島までがつながり、97年に浜比嘉島を含めた4島と本島との往来が車でできるようになった。最寄りのスーパーは、海中道路から本島側に車で約10分のところにある。

津堅島を含む同市島しょ地域は、ここ10年で人口が約20%減った。「地域住民からは『橋ができたことで若者が出て行ってしまった』と嘆く声もある」と話すのは、同地域の活性化を図る、同市役所企画政策課の担当者。急激な人口減少に伴い、空き家が増加。2016年に実施した空き家調査では、「すぐに住める状態で、かつ地主の活用意向がある空き家はほとんどない状況」。一方、「島の静かな環境や人の良さに魅力を感じて、移住を希望する問い合わせが多い」という。

「島内に賃貸物件はなく、土地の売買も仲介業がほとんど入らない」。同課は、「子育て世代やUターン者などの地域が求めるような移住者を受け入れていきたい」として、島内の空き家に数日宿泊する「お試し移住」を実施している。「地域団体が島内を案内し、体験者と地域住民とが交流できるようにしている。移住を決めた人に空き家を紹介」する仕組みだという。



平安座島(左)と宮城島を浜比嘉島から望む。写真中央に見える白いタンクは石油貯蔵タンク。石灰岩の岩山の上に農地が広がり、海岸沿いの平地や緩やかな斜面に集落が形成される


暮らしの支援に要望も

16年に宜野湾市から伊計島に移住した東将寛さん(40)と比嘉久美子さん(35)。海外での音楽活動を続け、宜野湾に帰ってきた時、街の雑踏に「息苦しさを感じた」という。お試し移住を体験し、伊計島の空き家に住むことに。

表座敷2間、裏座敷2間と台所からなる古民家は、ほとんどの床が抜け落ちていたという。しばらくの間、かろうじて残っていた4畳半の一番座で生活していたが、「途方にくれることもあった」と比嘉さんは苦笑いした。自分たちで材料を集めて改修し、1年半でようやく生活できる形になった。

「生活費は驚くほど安くなった。生活の不便さはあるけど、街中のストレスから解放されたことのほうがメリット」と笑う。

東さんは楽器作り、比嘉さんはフクギ染めをしており、「この場所だからこそできる営みの可能性を感じている。サポートがあると心強い」と、ふたりは期待を込めた。



【1】浜比嘉島の比嘉集落内の道路には砂利が敷かれ、集落の原風景が残る場所も。集落の中には3メートル以上あるフクギなどの屋敷林が残り、海風が集落を通り抜けるたびにそよぐ


【2】平安座集落から勝連半島を望む。鉄筋コンクリート造の2階建てが多く、所々にセメント瓦の家がある。ぽつぽつと住宅の建築現場があるものの、アパートは見当たらない。コンビニがある唯一の島


【3】伊計集落に残る石獅子は海に向かってたたずんでいる


【4】写真右手の建物は、2012年に廃校になった浜比嘉島の浜中学校校舎。現在は「浜イベントセンター」として利活用されている


【5】宮城島の上原集落を望む。宮城島はウスデークなどの伝統行事が盛んだという


耳をすませば、波の音とラジオの音が聞こえてきて、のどかだるん♪



エリアマップ

 


 

校区

4島全て彩橋小学校、中学校

家賃・土地の価格

賃貸物件はなく、不動産仲介業もないため、家賃や土地の価格は地主との直接交渉になる

お試し移住

実際に空き家に滞在し、地域団体が体験者を連れて地域を案内する。ことしは11月から実施予定。体験料の目安として17年実施時は1組あたり4000円~
 


 

空き家活用の勉強会 始動

うるま市企画政策課は、2017年に島しょ地域の住民とワークショップを通して島の将来像「島ビジョン」を検討した。島ビジョンに沿った移住者の受け入れ先として空き家を活用する考えだが、実際には仏壇があるなどの理由から、家主の活用意向が低く、受け入れの体制整備が必要だという。
空き家活用に対する地域住民や地主らの理解を求めるため、ことしから勉強会を開催。7月23日に勝連浜イベントセンターで開かれた、第1回空き家活用勉強会では、(一社)ノオトの金野幸雄代表理事が講師を務め、住民や建築・まちづくり関係者など、地域内外から約30人が集まった(写真)。
金野氏は、兵庫県篠山市の限界集落で古民家を宿泊施設として活用した地域再生などを手掛けた実績を踏まえ、「地域の人々にとってあたりまえにある物、例えば古民家やそれがある風景などは資源になりうる。『地域のために空き家を活用する』という意識を共有することで、住民が一体感をもって再生に向けた取り組みができる」と話した。
同勉強会は8月~11月まで講師を変えて月1回開催する。



▲講師:金野幸雄


ワークショップでは、イラストで住民の意見を見やすくした



※やーるんは、タイムス住宅新聞社のゆるキャラ。


編集/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1700号・2018年8月3日紙面から掲載

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