建築
2018年5月4日更新
考えよう!沖縄の省エネ住宅[10]|残暑時も室内サラリ
一戸建てを含むすべての新築の建物で電気やガスなどの消費量を減らす「省エネ住宅」とすることが求められる「建築物省エネ法」。2年後に迫る義務化を踏まえ、「沖縄の省エネ住宅」づくりに役立つ工法や建材、取り組みをクローズアップする。2回目は、1万個ものレンガで覆うことで外気温は高くても室内はサラリ快適に過ごせるという(株)幸健ホームの「レンガ積みの家」を取り上げる。
工法②/(株)幸健ホーム「レンガ積みの家」
レンガ・多機能断熱材・漆喰で熱も湿気もブロック
残暑時も室内サラリ
二重、三重に対策「レンガ積みの家」は、在来工法と耐力面構造を合わせ耐震金物で補強した「高耐久木造軸組み」を主要構造体に、厚さ70ミリもの「レンガ」を外壁に用いたハイブリッド工法。木やレンガといった自然素材に、多機能断熱材を組み合わせている点がポイントだ。
同社設計・企画室長の村山創さんによると、土を原料とした自然素材であるレンガは、それ自体が断熱性に優れており「同じ厚みのコンクリートと比べると効果は約2.5倍」。レンガ積みの家では、その断熱効果の高いレンガに加え、空気層と遮熱シート、さらに厚さ100ミリの断熱材を用いることで、外からの熱の影響を二重、三重にブロック=図1。室内の温度を一定に保ちやすくするため、「夏は涼しく、冬はあたたか。冷暖房効率が上がり、結露もしにくく、家自体の劣化も防いでくれる」と説明する。
快適な室内環境を考えるなら湿気対策も重要。そのカギとなっているのが昨年から導入した多機能断熱材だ。同社で使用しているのは植物の繊維を原料とし調湿性能に優れたセルロースファイバー。グラスウールに比べその断熱材で家中を覆い、室内は漆喰(しっくい)仕上げとすることで、「結露やダニ・カビを防ぎ、蒸し暑い梅雨時でも快適に過ごせる。高温多湿の沖縄には適した断熱材」と話す。
実際、レンガ積みの家を建てた施主は、「RC造のアパートに住んでいた以前は、クーラーをつけていても常にサウナに入っている感じで冬場の結露も気になっていましたが、新築してからは残暑で気温は高くても室内はサラリと快適。吹き抜けの大空間でもエアコン1台で十分」と話す。
ZEHビルダーに登録
同社が県内でなじみの薄いレンガを用いたのは、「沖縄の強烈な紫外線に耐え、経年が味になる家づくり」を目指したのがきっかけ。福岡の工務店と技術提携し導入した。とはいえ約1万個ものレンガを一つ一つ職人が手で積み上げていくため、外壁にかかるコストは当初「木造メーカーで使われることが多いサイディングの3倍」に。そこでレンガ造りの家が多いベトナムから職人を招き、精度と効率をアップした。導入から13年たった現在、同社が手掛ける9割がレンガ積みの家となったことも手伝って「約2倍」まで圧縮。「確かに初期コストはかかるが、省エネで建物の耐久性も高い。長い目で見た経済性、安心、安全性を重視している」と話す。
同社は5年ほど前から国の事業に参加し、ゼロエネルギー住宅の普及に取り組んでいる。2年前にはZEHビルダー(※参照)として登録。地元業者6社で作る沖縄木造住宅協同組合の事務局も務め勉強会や技術提供を行っている。「県内独自の省エネ基準策定の話も聞く。不具合があるなら家を造る側が声を上げていくべき」と村山さんは話した。
同社が糸満市潮崎で販売予定の「レンガ積みの家」の外観。4.56kWの太陽光発電システムを搭載している。「第三者機関が認証するBELSを取得しており、設計時の一次消費エネルギー消費量が、国の省エネ基準よりもさらに68%削減される」という。
レンガ積みの家の室内。無垢材と漆喰で明るく温かみがある。
図1
レンガ積みの家の壁の断面。外壁に用いたオーストラリア産のレンガは「耐熱・耐震・耐火・通気・防音に優れ、長寿命でメンテナンスがほとんど必要ない自然素材」と村山さん。そこに空気層や遮熱シート、多機能断熱材などを組み合わせ、断熱効果を高めている
※ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、太陽光発電等により、年間の1次消費エネルギーが概ねゼロ以下になる住宅のこと。自社が受注する住宅の内、ZEHの割合を2020年までに5割以上の目標を掲げるメーカーや工務店をZEHビルダーという
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1687号・2018年5月4日紙面から掲載