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2018年3月30日更新
家財整理から高齢者の居住支援|気になるコト調べます!㊲
(一社)家財整理相談窓口は3月15日、那覇市役所の福祉担当者を対象に、「家財整理サービス 元気なうちから生前整理」と題し勉強会を行った。神野敏幸代表理事は「高齢者世帯が全体の4割を超え、ゴミ屋敷や孤立死などが社会問題となっている。家財整理サービスから高齢者の住まい探しや暮らしの安心をサポートしたい」と語る。
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見守り・事故時の費用補償サービスも
生前整理・遺品整理・空き家整理まで
ゴミ屋敷は「譲る」形で整理
同法人の代表理事で、自身も愛知県と沖縄県で家財整理サービス業「レリック」を展開する神野さん。生前整理や遺品整理、特殊清掃まで、勉強会では年500件を超える家財整理サービス=下図参照=の現況と対応について説明した。
家財整理サービス
- 生前整理/使わなくなった家財や部屋の一部を整理。施設入所に伴う家の整理及び配送
- 遺品整理(空家整理)/遺品・思い出の品物、不要になる家財の整理
- 相続支援整理/遺品整理作業に加えて、相続財産を事前に把握するための作業
- 特殊清掃/孤立死・自殺者の家の清掃および消臭作業
生前整理で依頼があるのは、施設への入居に伴う部屋の整理と引っ越しや、ヘルパーでは手に負えないごみ処理や家具移動に伴うもの。「残っている物はすべて処分する業者も多いが、貴重品のない家は一軒もない。他人からはゴミでも、本人や家族にとっては大切な思い出の品や貴重品が保管されていることがある」と神野さん。追加請求、貴重品の盗難といったトラブルを防ぐ意味でも、同社では本人や関係者立ち会いの下、封筒一つ、フィルムケース一つにいたるまで中身を確認。「片付ける際も生活動線を考慮したうえで家具を配置するなど、高齢者が安心して暮らせる住環境づくりを心掛ける」。また不用品でも状態の良い家具・家電などは洗浄・点検・保管し、必要な人に寄付することで処分費を抑え、社会貢献にもつなげているという。
足腰が弱りなかなか片付けられず、長年ため込んでしまった物で部屋が埋め尽くされ、プチゴミ屋敷化してしまったケースも多い。「本人にはその状況が快適なため、否定的な言葉を使うと拒否されてしまう。ポイントは、使っていない物は使ってくれる方に差し上げると喜ばれることに気付いてもらい、譲るカタチで整理すること」。ひどくなると臭いや虫が出て住み手の心身に悪影響が出たり、近隣からの苦情や賃貸物件なら退去依頼などのトラブルに発展しかねないため、「周りが早めに気付いて対処することが大切」と呼びかけた。
孤立死させない手だてが必要
高齢者が賃貸物件を借りにくい要因の一つに孤立死の問題がある。「孤立死の場合、室内は悲惨な状態となっていることも多く、むやみに処理すると隣室や階下へ被害が及ぶ。また管理会社が求める原状回復・完全消臭を行うには専門知識と技術が必要。一般の清掃会社では臭いが取り切れず、半年から1年空き室にしている所も多い」と指摘する。
県内でも孤立死に伴う遺品整理・特殊清掃・消臭を手掛けた神野さんは、「ふすま一枚隔てた隣室で亡くなっているのに10日以上気付かなかったケースもある。ゆいまーる精神が息づく沖縄でもこうしたことがある現状を考えると、まずは孤立死させない手だてが必要」と訴える。
その対策として同法人が取り入れているのが「見まもっTELプラス」。月額1500円の利用料で、音声ガイダンスによる週2回の安否確認に加え、居室内での不慮の事故死による原状回復・遺品整理・葬儀費用を補償。「従来の保険は相続人しか使えなかったがこれは第三者でも利用でき、万一の際に遺族や大家にかかる負担を最小限に抑えられるメリットがある。県内でも、県宅地建物取引業協会や市町村の福祉行政担当者らに導入を呼び掛けている」という。
勉強会に参加した福祉行政の担当者らは「以前に生前整理を依頼した清掃業者は全て処分していた。依頼先選びも重要」「従来の見守りサービスは利用料が高かったり条件が厳しく福祉サービスにつなげにくかった。これなら利用しやすい」と感想を話した。家財整理サービスに関する問い合わせは(株)レリック琉球(電話=098・987・6555)まで。
プチゴミ屋敷の整理清掃例
▲ため込んだ家財を細かく仕分け。
▲手前に玄関があるが、足腰が弱い本人の希望から入り口近くにベッドを置き、地震を考慮した低めの洋服ダンスを奥に配置した。写真・図は(株)レリック提供
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1682号・2018年3月30日紙面から掲載
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