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2018年1月26日更新

移転に伴い県立図書館が4月から休館|気になるコト調べます!㉜

現在の県立図書館は施設や設備の老朽化から資料の保管に支障が出ていること、さらに多様化する県民のニーズに対応することを目的に3月をもって休館し、那覇バスターミナル跡地に移転する。1983年にできて約35年、情報の拠点として県民に愛されてきた。設計を手掛けたのは沖縄市にある(有)二基建築設計室(現在の㈱二基設計)だ。同社の温井明二代表取締役(75)、温井克吉副社長(76)、現在は(株)アジアエンジニアリングに勤務する比嘉恒夫さん(63)に、建物にこめた思いや設計の意図、苦労話を聞いた。

公園との調和と外観美|県立図書館

手掛けた二基設計に聞く 建物に込めた思い

公園との調和と外観美

コンペで勝ち取った大仕事

二基設計の温井代表は、「コンペ(設計競技)で勝ったときは本当にうれしかったね」と、県立図書館の設計を手掛けた経緯を語る。県は既存の県立図書館を取り壊して新館を建てることを決め、1982年に10社によるコンペで同社を選んだ。

当時、社員だった比嘉さんは、結果が出る前から温井代表に「祝杯の準備をしておけ」と言われたそうだ。だが、当の温井代表は「いやいや、口だけ。自信はなかった。中部(沖縄市)の小さな会社だったから」と振り返る。

1階北東側の閲覧席。2階まで続く吹き抜けと、大胆なガラス張りで開放感たっぷり。公園の緑が目前に広がる​
1階北東側の閲覧席。2階まで続く吹き抜けと、大胆なガラス張りで開放感たっぷり。公園の緑が目前に広がる​

小さな会社とはいえ、81年に嘉手納町庁舎・町民会館(かでな文化センター)、82年には名護市民会館をコンペで勝ち取り、右肩上がりに業績を伸ばしていた。克吉副社長は「嘉手納町庁舎・町民会館は、外観の大部分をタイル張りにした。当時は珍しく、好評だったので、県立図書館にも生かした」と語る。

県立図書館は外観はタイル張り。薄茶色の外観が与儀公園の緑と調和している。比嘉さんは、先輩の手掛けた建物を誇りに思うと言う。「タイルの収まりが実に美しい。設計はもちろん、施工も大変だったと聞いている。図書館に入る前に外観もじっくり見てほしい」と胸を張る。

また、外部で配慮したのが、「車歩分離」。

那覇市民会館と隣接するため、駐車場は両施設の緩衝空間とした。車は図書館南側の市民会館側から出入りし、それ以外の人は西側の与儀公園からの出入りを想定した=下図参考。



車と人の出入り口は別々だが、どちらからもスムーズに館内に導けるよう、正面玄関前の広場を三角形にして、動線を促す。また、「建物を斜めにすることで、公園から見たときの圧迫感を和らげている。県民の憩いの場である与儀公園に建てる、ということを相当に考慮していた」と比嘉さんは説明する。

玄関近くの閲覧室。明るくて心地良い
玄関近くの閲覧室。明るくて心地良い

ガラス大胆に 構造計算に苦労

内部で印象的なのは、1階北東の吹き抜け空間。2面が大胆なガラス張りになっていて、目前に豊かな緑が広がる。丘だった場所を生かしたそこは、木陰のような安らぎある。

「構造的には難しかった」と克吉副社長。「図書館はたくさんの蔵書がある分、普通の建物より、大きな荷重に耐えなければならない。壁一面をガラス張りにするのは大変なことだった」。構造設計は県外の権威に依頼するなど、かなり慎重に行ったという。

時をへて、緑に覆われ公園に溶け込んでいく県立図書館。移転後の建物活用は未定だ。「図書館でなくなっても、公園のシンボルであることに変わりない。建物はまだ使えるはず。活用してほしい」と温井代表は力を込めた。


正面玄関前。公園に向かって末広がりになっており、来館者を玄関へ誘導する
正面玄関前。公園に向かって末広がりになっており、来館者を玄関へ誘導する

設計を手掛けた二基設計の温井代表(左)、克吉副社長(中央)、当時の社員の比嘉さん
設計を手掛けた二基設計の温井代表(左)、克吉副社長(中央)、当時の社員の比嘉さん


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編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1673号・2018年1月26日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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