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2018年1月19日更新

考えよう!沖縄の省エネ住宅[06]|風と育んできた伝統木造

文・中本清/「建築物省エネ法」施行に伴い、沖縄で住まい造りを考える上で知っておきたい点を、NPO蒸暑地域住まいの研究会理事の中本清さんにつづってもらう

全体が個を、個が全体を助ける「結(ゆい)」

風と育んできた伝統木造


寄棟で風吹き流し、ふき土で押さえる

歴史のある集落を散策する時、まばゆい光に鮮やかな色を付ける花たち。屋敷周りの石垣、屋根の高さをゆうに超える福木を並び植えた屋敷林。石垣や屋敷林に見え隠れする漆喰(しっくい)に縁取られた赤瓦の屋根に出合う。
 屋敷囲いはつながりながら、大きな面となって集落を形成する。屋敷林は塊となり、遠くから集落を眺めるとまるで濃い緑の大きな森のようだ。観光客をとりこにする沖縄らしいこの風景の様子をもう少し詳しく見てみよう。

伝統的な木造家屋には、ほとんどが寄棟(よせむね)屋根という特徴がある。屋根は、四辺の軒先の低いところからせり上がり、棟の位置で一番高くなる。強風に対してあらがわずにその力をスムーズに吹き流すことができる形である。台風の進路によってあらゆる方向から強風が吹くので、この寄棟形式の屋根は最も理にかなっている。


集落全体で強風に耐え、美観にも

赤瓦の下には土(ふき土)を敷き、屋根を重くしている。これも特徴の一つである。赤瓦は厚さ約2センチ、谷瓦と丸瓦を組み合わせ、目地を漆喰で丹念に塗り固め、これにふき土の重さを加えた重量はおよそ100キログラム/平方メートルになる。こんなに重い屋根は日本中で沖縄にしか見ることができない。なぜわざわざ重くしたのか。

寄棟屋根に強風が吹きつければ、風下の屋根面が吹き上がる。屋根の形は飛行機の翼の断面に似ているので、風を受ける翼に揚力が作用するのと同じ原理だ。一方、家屋に作用する風圧(水平力)によって、風上側に浮き上がり、風下側に押さえの力が生ずる。風上側の浮き上がりは風速30メートル/秒の場合で100キログラム/平方メートルに達することが風洞実験や構造計算によって分かった。この浮き上がりを押さえるために、屋根を重くしたのである。

つまり集落全体に対して「防風林で強風を防ぎ、さらに屋敷林で風をやわらげ、風速を半分以下に落として、重い屋根で家屋を守る」という二重三重の構えを施し、強風に耐え抜くことができた。全体が個を、個が全体を助け合う結(ゆい)の関係、いわば気候風土に根差した生活の形が現在に伝わっている。さわやかな風がそよぐ晴れた空の下、赤瓦と白い漆喰と緑の屋敷林が織り成す美しさは、まさしく風の造形美なのである。

ところで、このような伝統的な集落が残っているところは数えるほどしかない。区画整理された土地に次々と建てられる現代木造に、風と共に育んできた伝統木造の美しさをいかに取り入れるか。建築物省エネ法の施行を機会に、「沖縄らしい気候風土適応住宅とは何か」の再考が求められている。




航空写真/宮古島市の宿泊施設「かたあきの里」。周囲を緑豊かな丘陵に囲まれた環境に建つ現代木造住宅。強風を遮り、涼風を招き入れる石垣と、防風林の「緩衝帯」、寄棟屋根の建築群(設計:伊志嶺敏子)


海洋博記念公園おきなわ郷土村の「地頭代の家」。石垣と屋敷林の伝統木造住宅を再現した(同公園パンフレットより。設計:中本清)
 


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1672号・2018年1月19日紙面から掲載

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