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2017年12月15日更新

考えよう!沖縄の省エネ住宅[05]|閉じつつ開く 現代版エコハウス

文・伊志嶺敏子/「建築物省エネ法」施行に伴い、沖縄で住まい造りを考える上で知っておきたい点を、NPO蒸暑地域住まいの研究会理事の伊志嶺敏子さんにつづってもらう

宮古島市のモデル事例から

閉じつつ開く 現代版エコハウス


先人に学ぶ 集住の知恵

環境省の「21世紀環境共生型住宅のモデル整備建設促進事業」で2010年、宮古島市にエコハウス2棟(市街地型・郊外型)が完成した。設計方針は以下の通りだ。

  1. まずは、エコハウスとして普及性を大切に考える。自然環境に即し、過重装備にならないよう、コストがかからぬようローテクで十分に検討する。
  2. 島の自然環境を熟知することから始める。
  3. 先人たちは、島の自然環境とどう向き合ってきたのか、その知恵を学び、そして残された課題解決に取り組む。


宮古島において住まいづくりをすすめる上で最も重要な条件は、台風からの防災型だ。そして蒸し暑い夏を快適に過ごせるということだ。言い換えると台風からのシェルター性を高めるためには閉じ、アメニティー性(快適性)を高めるためには開く、つまり「閉じつつ開く」という課題を抱え込むことになってしまう。さて、先人たちはこの難題にどう取り組んだのか。風水のよい場所を選び集まって住むことで、“環境集住体”として「閉じつつ開く」手法を形にしてきたものだと思われる。

外洋の荒波をやわらげるサンゴ礁は砂浜を守り、防潮林、石垣、屋敷林などの緩衝帯で家屋を囲むことで強風を弱めたり涼風を引き入れ、自然環境に寄り添いながら安全で快適な居住環境をつくってきた。このような知恵が集積した環境集住体のDNAを引き継ぐことから、現代のエコハウスを始めたいと考えた。


2010年に完成した宮古島市のエコハウス郊外型。母屋と離れの間のテラスは風通しが良く、台所につながっているので食事、団らん、接客の場になっている


市街地型(上)とその内部(下)。日よけ、通風のため、花ブロック・格子戸で緩衝帯をデザイン

 

RC 防災と快適の両立が課題

一方、先人たちの残した課題もある。旧平良市松原地区には、伝統的な沖縄赤瓦ぶきで鉄筋コンクリート(RC)と木造による混構造の家が多く残っている。木造からRC造へ移行する間の1960年代に造られた住宅群である。台風に耐えられるよう四隅の壁をRC造で固め、シェルター性を高めている。しかし、強い日差しをよけるためのひさしの出は不十分で水切り程度の浅いものであり、アメニティー性が著しく低いことが外見でもうかがうことができる。シェルターとしての住まいをつくるのに精いっぱいだった当時の経済事情からすると、アメニティー性の実現までは手が出ないという、赤瓦ぶき混構造の家屋に残された課題を見ることができる。

その解決として、2010年に完成したエコハウスでは、伝統的な木造住宅のように軒を深く張り出して雨が打ちこむのを防ぎ、強い西日や北風のあたる軒先には花ブロックを積み、家の周囲にはフクギの屋敷林のような防風、遮熱機能をもたせるなど「閉じつつ開く」緩衝帯デザインを試みた。

エコハウス、必ずしも新しい試みではないことに気付かされる。
 


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1667号・2017年12月15日紙面から掲載

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