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沖縄建築賞

2017年4月28日更新

第3回沖縄建築賞にむけて『沖縄建築の指標 若い発想で活性』

県内の優れた建築を顕彰する第3回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)が5月末に決定する。沖縄の気候風土を生かした建築を選び、業界の課題でもある若手を発掘・育成するのが狙いだ。ここでは、県内で活躍する40歳以下の若手建築士に仕事のやりがいなどをインタビュー。併せて、同賞実行委員長の當間卓氏(53)に建築賞の考えや業界の取り組みについて聞いた。

若手が思う建築士の仕事

目指したきっかけ

佐川淳氏
大学は神奈川県で社会学等を学んだが、空間デザインに興味を持ち建築系の専門学校に進んだ。夜は学校、昼間はアトリエ系の設計事務所でアルバイトをしながら過ごした。
卒業後に設計事務所に入りマンションの設計などに従事。働きながら資格を取って、1級は沖縄に来てからだった。

山城勝久氏
絵を描くのが好きだった。しかし、画家や美大を目指すほどうまくもない。
建築士を選んだのは、何となく絵が描けそうだったから。
安易に選択した道だったが、良き指導者に恵まれ、建築の楽しさを教わった。その中で得た小さな成功体験の積み重ねが、今も建築を続ける推進力となっている。


やりがいはどこに

佐川氏
現在担当しているのは公共の建物で、建築する上での条件に独特のものがある。さまざまな制約を逆手にとってブレイクスルーを起こす。感覚を理論化し図面にする。それを職人さんたちが具現化する。そういう一からの流れにやりがいを感じる。

山城氏
建築が社会に与える影響は少なくない。だからこそ、しっかりと施主や施工者、社会に耳を傾け、独りよがりの建築にならないことが大切。責任の重さを感じる一方、描いた線を形にしていくプロセスに大きなやりがいを感じる。


何か取り組みは?

佐川氏
沖縄市の建築士事務所会に参加。年1回、研修旅行があり一昨年はシンガポールに行った。熱帯の建物の涼の取り方を見て刺激になった。

山城氏
30代は、ひたすら著名な建築を見て歩き、建築に対する感度を高めたいと考えている。また、今後の業界の一助になればと、建築士という職業を知ってもらうため、小中学校を中心に、職業講話やものづくりの楽しさを伝える活動を行っている。


沖縄建築賞に思う

佐川氏
最近気になるのは木造建築。本土では木造のビルを建てたりして、木造がすごく見直されている。
沖縄は内地と環境が違うが、新しいものをやろうという動きをもっと活発化させて、若い人の発想で沖縄ならではの新たな木造建築が出てきたらいい。

山城氏
沖縄の建築に対して、一つの指標や目標ができたことはとても意義深い。前回応募させて頂いたが、今後も応募できるように、良い建築をアウトプットしていきたい。
 

「制約を逆手にとって」


​佐川淳(さがわ・すなお)
1977年福島県生まれ。1級建築士。文教大学国際学科、青山製図専門学校インテリア工学科卒業。(有)真玉橋設計事務所所属。ティーダフラッグス2016「金賞」受賞。
 

「社会性のある建築を」


山城勝久(やましろ・かつひさ)
1982年那覇市生まれ。1級建築士。県建築士会青年・女性委員長。(株)具志堅建築設計事務所所属。那覇市バス停上屋設計競技最優秀賞、八重瀬町庁舎プロポーザル最優秀者、ほか受賞。


実行委員長・當間卓氏に聞く

『力量測るアピールの場』

第3回の新たな試みは?
住宅にしても一般建築にしても、施主の理解や協力なくしては成り立たないことを考えれば、ある意味施主との共同作品と言える。そうした意味で、今回から新たに受賞作品については、施主にも盾を贈ることにした。これにより、施主をはじめとする県民に、県内の優れた建築に触れ、興味を持ってもらうきっかけになってほしい。また建物単体だけでなく、まちづくりまで含めた広い視野で建築を考える建築士の仕事についても知ってもらえれば幸いだ。

回を重ねることで、どんな手応えを感じているか?
住宅部門については特にレベルが上がっているのを感じる。一般建築部門は、店舗や学校、福祉施設、複合ビルなどはもとより、文化施設や商店街の再生建築事例まで応募作品もバラエティーに富み、応募数も増えている。これは、建築賞に対する期待の表れと言えるだろう。

建築賞の大きな目的の一つに若手育成がある。
若手、特に意匠系を目指す建築士が少な過ぎることは、業界全体の課題。この閉塞的な状況を打破する一つの手立てになればと、去る3月には県建築士会、県建築士事務所協会、日本建築家協会沖縄支部(JIA)の3会会長の連名で、県立芸大学長あてに建築系の学科創設の要望書を提出したばかり。JIAでは次世代にものづくりの面白さを伝える沖縄未来建築塾などの取り組みも始めている。そうした若手育成の環境整備、機会の創出という意味でも、建築賞が果たすべき役割は大きい。
また建築賞のようなコンペに参加することは、若手にとっては自身の力量を測り、社会に自分をアピールする絶好のチャンス。自分の取り組みが社会に受け入れられるかどうかを知るいい機会でもある。より多くの若い世代にチャレンジしてもらいたい。

建築賞に期待することは?
前回から受賞作品については韓国済州道建築士会が開く設計展で展示を始めており、今回は沖縄で済州道の入選作品の展示もある。今後はさらに交流地域を広げ、世界とつながるきっかけになるといい。



當間卓(とうま・たかし)
1963年与那原町生まれ。日本大学理工学部建築学科、同大大学院卒業。(株)前川國男建築設計事務所をへて(株)泉建築設計事務所入所。2002年、(株)泉設計代表取締役へ。日本建築家協会沖縄支部支部長

 



沖縄建築賞

応募作品ウェブで公開中
第3回入賞作2017年5月26日発表

第1回、第2回の沖縄建築賞に関する全応募作品、入賞作品、審査講評は、タイムス住宅新聞ウェブマガジンで公開中。第3回の一次審査通過者は現在ウェブマガジンで公開中。入賞作品は2017年5月26日(金)に、タイムス住宅新聞の紙面とウェブマガジンで発表する予定。
https://sumai.okinawatimes.co.jp/commons/?tag=417
 


 

「沖縄建築賞」2017年6月13日から展示

第3回沖縄建築賞の受賞作品は2017年6月13日(火)~18日(日)まで、タイムスビル2階ギャラリーで展示を行う。展示会では韓国済州道建築士会が開いた設計展の入選作品の展示もある。

<問い合わせ>
沖縄建築賞 事務局
098-934-1122

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