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2021年12月31日更新
[豊かな暮らしとエネルギー④]使い心地そのまま サービスに違い|県内3社に聞く新電力の疑問と選ぶコツ
コーナー最終回となる今回のテーマは「新電力」。近年増加している電気小売会社のことだが、切り替えることで今までと何が変わるのか、どう選べばいいのかがよく分からない人も多いのでは? 新電力全般に関する素朴な疑問を、おきなわコープエナジー・代表取締役社長の田場直樹さん、金秀鋼材(金秀でんき)の具志雅之さん、沖縄セルラー(auでんき)の宮里陽子さんに聞いた。各社のサービスの特徴も参考に家庭の電気を見直してみて。
Q1.新電力ってナニ?
A.電気小売り自由化で新たに参入した会社電力事業は発電・送配電・小売部門に分かれており、これまでは地域の大手電力会社が全てを担っていた。 2016年の電気小売り自由化により、小売部門に新たに参入した会社を「新電力」という。その小売りする電気は自社で所有する発電所のもの、他社の発電所から購入するものなどさまざま。その他、販売代理業を行う会社もあり、多くの会社が参入することで、今までになかった料金メニューやサービスの展開が期待されている。県内でもさまざまな会社が「〇〇でんき」などとして販売・サービス提供している。
田場さん(コープエナジー) コープエナジーは、沖縄電力や家庭の太陽光発電から電気を購入し、契約家庭へ小売りしています。
具志さん(金秀でんき) 金秀でんきは、小売電気事業者である沖縄ガスニューパワーの販売代理店です。
宮里さん(auでんき) auでんきは、沖縄電力の電気販売・利用料金の回収業務を担っています。
Q2.新電力に切り替えるってどういうこと?
A.支払先を変えること、料金メニューを見直す機会田場さん(コープエナジー) 新電力へ切り替えるとは、簡単に言うと「電気代の支払い先を変える」こと。電気代は「公共料金だから値段が高い・安いという意識がなかった」と思います。ですが、これからは、料金も含まえた上で「価値観やライフスタイルに合わせて会社を選べる」のがポイントです。
具志さん(金秀でんき) 電力会社はもちろん、「料金メニューを見直す機会」もこれまで少なかったと思います。大半の家庭で利用している従来の料金メニューは「従量電灯」で、切り替えによって料金が下がる可能性があります。現在の料金メニューや使用量は、毎月の検針票で確認できます= 見本 。
見本 検針票
検針票を見てみよう
毎月の検針票の右上に「ご契約種別」記載があり、現在利用している料金メニューを示す=1。中央あたりにはその月に使った電気量が記載されている=2
Q3.照明暗くならない? 停電しやすくならない?
A.電線などは既存のもの だから「今まで通り」田場さん(コープエナジー) どの新電力に切り替えても、暗くなる、停電しやすくなるということはありません。使い心地は今まで通り。その理由は、大手電力会社が保有する既存の送配電ネットワーク(電線といった電気を送るネットワーク)を使っているから=イメージ図。ダムから給水される水がどの家庭でも同じ品質であるように、送配電ネットワークから供給される電気も家庭によって品質が変わることはありません。電線も変わらないので、切り替え前と同じ品質、停電のリスクや復旧の早さも従来と変わりません。
具志さん(金秀でんき) 切り替え時、電線工事は不要ですが、電気メーターを取り換える場合があります。
イメージ図 新電力の仕組み
Q4.一般的なメリット、デメリットを教えて
A.従量電灯利用なら○ オール電化・離島は注意具志さん(金秀でんき) 現在利用している料金メニューが従量電灯なら、切り替えることで電気代が下がるなど、さまざまなメリットがあります。
田場さん(コープエナジー) オール電化の家庭は切り替えに不向き。特に電気給湯器を使用する家庭では、料金が安い深夜電力の料金メニューを利用していると思います。ですが、新電力にはそれに相当するメニューがない、もしくは切り替えることで逆に電気代が高くなる可能性があります。
宮里さん(auでんき) 販売エリアは本島中心。宮古島や石垣島など、本島と配送電ネットワークがつながっていない島は対象外となっています。
メリット
□従量電灯利用家庭なら、切り替えることで電気代が安くなる可能性あり
□ポイント付与など別のサービスも
□集合住宅、電気メーターが分けられた二世帯住宅などでも、個々に切り替え可能
デメリット
□深夜電力・オール電化用の料金メニューは新電力にないため、切り替えても電気代が高くなるケースがある
□本島と送配電ネットワークがつながっていない離島は切り替えできない
各社のサービスの特徴
選ぶコツは「ライフスタイルや価値観に合わせて納得できる」こと
エネ未来+(おきなわコープエナジー)
・太陽光発電システムを初期費用なしで設置
・固定価格買取制度終了後の電力も買い取り
・電気代支払先:同社
・発電元:沖縄電力、家庭の太陽光発電
・事業形態:電気小売り
おきなわコープエナジーの「エネ未来+」は、一般家庭の屋根を発電所に見立て、太陽光発電を初期費用なしで設置するサービス。「発電した電気は家庭で消費、余った分を売電、不足分はわが社から購入するしくみ。長期的に見ると、電気代をかなり抑えることができます」と田場さん。国の固定価格買取制度が終了した太陽光発電の余剰電力買い取りも行っており、再生可能エネルギーを最大に活用した事業に取り組んでいる。田場さんは「子どもたちの未来のために環境にやさしい社会を目指すことをモットーに、太陽光発電の普及率向上に努めています」と話した。
金秀でんき(金秀鋼材)
・電気使用量多いほど電気代の大幅減に期待
・キャンペーンや特典も魅力の一つ
・電気代支払先:沖縄ガスニューパワー
・発電元:中城バイオマス発電所、太陽光発電、一部沖縄電力
・事業形態:販売代理
金秀でんきは、電気小売事業を行う沖縄ガスニューパワーの販売代理店。中城バイオマス発電所で発電した電気を主に取り扱っている。特徴は安価な料金設定で、「301㌔ワット時以上(およそ2~3人世帯の家庭が1カ月に使う電気量)の単価が特に安いのが特徴。電気使用量が多いほど電気代削減のメリットが大きいです」と具志さん。契約促進キャンペーンとして商品券などの特典がもらえる期間があり、「こういったキャンペーンも魅力の一つ。ぜひ活用してほしい」と話した。
auでんき(沖縄セルラー)
・買い物に使えるポイント付与
・携帯電話通信料と一緒に支払えて便利
・電気代支払先:同社
・発電元:沖縄電力
・事業形態:業務代理
auでんきの特徴は「電気代は変わらず、金額に応じたPontaポイントが必ずもらえる点。電気代が5000円未満でも1%分のポイントが還元されます」と宮里さん。たまったポイントは、スマートフォンのQRコード決済で買い物などの支払いに使える。携帯電話の通信料とまとめて支払いが可能で「支払い管理がラクになります」と話した。
取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1878号・2021年12月31日(第2集)紙面から掲載