1枚板叩き造形 やかんの魅力|アートを持ち帰ろう(46)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

沖縄建築賞アーカイブ

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2025年1月24日更新

1枚板叩き造形 やかんの魅力|アートを持ち帰ろう(46)

文/本村ひろみ

特集・企画

タグから記事を探す

1枚板叩き造形 やかんの魅力

「やかん3」
(販売要相談) H110×W140×D100ミリ
 

正しい道具選びと正確な手順が重要

台所の風景に心惹(ひ)かれる。

使いこまれた道具たちが、整然と、もしくは乱雑に、生活の中で与えられた場所に置かれている様子はいとおしい。朝起きてお湯を沸かす瞬間、仕事から帰って一服のお茶のためラジオを聞きながら湯気の上がるやかんを見ている時間は、気持ちが整う。道具を手にしたときに伝わるその重さや手触り、表面の黒い“すす”は日々の証しといえる。

道具や技法にこだわり
アーティスト・窪田瑶は大学の卒業研究で「やかんの魅力」をテーマにした。自然と心惹かれる存在が「やかん」だったという窪田は、小さい頃「この道も、ガードレールも、駅の手すりもどこかの誰かが考えて今そこにあるんだよね」と父親と話したことが忘れられず、今もその視線を大切にこの世界を見ている。「誰かが作り出した道具や物たちに囲まれて日々を生きる」。彼女の制作の根底には道具に対する深い愛情がある。

窪田は研究課程で、金属をたたいて造形する「鍛金」および「口打出(くちうちだ)し」の技法で作られた“湯沸かし”を知った。1枚の板から継ぎ目なく注ぎ口を伸ばして作られるやかん。その口打出しの技法の習得を目指し大学の収蔵品を手本に模刻を行ううちに、正しい道具選びや正確な手順がいかに重要かを学んだ。「作り上げたいという気持ちに任せない冷静さが必要」とも。

琉球大学在学中から鍛金を始め、より専門的に学ぶため富山大学大学院へ進学した窪田。「やかん」を食べてみたいという思いから「やかん焼きの型」を制作するオタクな感性と道具や技法にこだわる職人気質でこの先どんな作品を生み出すのか楽しみだ。
 

「やかん焼きの型」
(販売要相談)H110×W550×D140ミリ
富山県の高岡銅器を発展させた主力技法の生型鋳造で制作。
やかんを食べてみたい方はぜひ。

 


「お花らしきもの(上・下)」
3700円(税別)H200×W40×D40ミリ
花弁らしき部分には銅を、茎や葉らしき部分には真鍮を使用。



「Tube」
4万7000円(税別)H130×W80×D50ミリ
洗顔料などを入れるチューブ型容器をモチーフに一枚の銅板から制作。

 
 
作家近況
作家近況などはインスタグラムで。
アーティスト・窪田瑶(くぼたよう)
富山大学大学院 人文社会芸術総合研究科 修士課程在籍
https://www.instagram.com/kub_otayo/

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2038号・2025年1月24日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

キュレーター
本村ひろみ

これまでに書いた記事:46

ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

TOPへ戻る