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2024年11月15日更新

洗い、直す職人技 ラグ支える手仕事|ラグの世界⑩

イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。今回は、買い付けたラグを集めたテヘランの倉庫での話。ここでラグを洗い、お直しをしている。織り手以外にもさまざまな職人の手をへて、やっと日本へ届くそうだ。

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エピソード⑩ イランでの倉庫にて

テヘランには、私たちにとって、とても大切な拠点がある。各地を旅しながらセレクトしたラグはここの倉庫へ集められ、クリーニングの職人の元で3、4回洗われる。それから仕上げの職人と修理の職人におめかしをしてもらって初めて日本へ出発できる。

ラグの織り手はほとんど女性だが、織り上がってからは多くの男性の職人たちの手を渡り、やっと一枚のラグが完成することはあまり知られていない。

イランでは買い付けも大切だが、この倉庫で職人たちと過ごす時間もとても重要で、私たちが大切にしていることなどを話しながら同じ目線で同じ時間を過ごし、お互いのことを理解する時間が不可欠だ。

そして何より、この職人たちの手仕事はかっこいい。
 
テヘランの倉庫で。ラグを仕上げる職人。買い付けたラグはクリーニングをしてもらったり、お直しをしてもらったり、さまざまな職人の手をへてようやく日本へ届く


丁寧に一枚一枚直す

この倉庫では4人の職人が、ラグの仕上げと修理をしてくれている。各地でセレクトしたラグにシラゼ(ラグの縁かがり)をついて、ドゲレ(結び糸がほつれないようにする工程)をして、フリンジがきれいに整えられていく。

ヴィンテージラグは何世代も受け継がれて現地で実際に使われていたラグもあるため、ダメージがあったりする。そのラグが経(へ)てきた時間もダメージもまるごといとおしいが、ラグをセレクトする時は、なるべくダメージが少なく、長く安心して使えるものを基準の一つにしている。

それでも小さな穴やダメージはヴィンテージラグには当たり前にある。だが手仕事で作られるラグだからこそ、また人の手でお直しができるのも大きな魅力であり、その技術がちゃんとある。ダメージが見つかると職人はまず、ラグの構造を観察して使われている経糸や緯糸に近い素材、色、太さの糸を使い糸をつないで修理をしていく。ちょうどよい糸がなければ、糸のよりを1度ほどいて細くしてよりなおす。

黙々と一枚ずつ手作業で丁寧にその工程を進めてもらっている姿を見て、とても感動した。彼らが日々私たちのラグを丁寧に仕上げてくれていることが、うれしくて誇らしくてボロボロと涙がでた。

「どうした? 何だ?」と職人たちがびっくりしていたが、皆の仕事が素晴らしくて感動している! とぐしゃぐしゃの顔で必死に伝えた。皆の力なくしては、私たちのラグは成り立たないんだということを直接顔を見て伝えたかった。
 
ラグを整えてくれる職人さんたちと

倉庫で食べる愛妻弁当

倉庫で過ごす日は、皆でお昼ご飯を食べる。ランチ用のラグに、ビニールのソフレ(ランチョンマットみたいなもの)を敷いて、小さな金属製の弁当箱をガスコンロで温める。職人たちはみんな愛妻弁当だ。

私はいつもお世話になっているカーゼムさんの奥さまにお弁当を作ってもらった。職人たちと顔を合わせて話しながら1枚のラグの上で食べるランチはとっても楽しかった。
ラグの上でランチ

羊を育て、糸を紡ぎ染めて織る。それを洗って仕上げて修理する人たちがいる。これからもラグに関わる多くの職人に出逢い、伝えていきたい。

 

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2028号・2024年11月15日紙面から掲載

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