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2024年10月25日更新

金魚掬いのポイ 集めて描く宇宙|アートを持ち帰ろう(43)

文/本村ひろみ

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金魚掬いのポイ 集めて描く宇宙

藍抜染の金魚 祭りの思い出を想起


アーティスト・坂本大地の作品を初めて見たのは8月の暑い日だった。汗を拭いながら眩(まぶ)しい場所から足を踏み入れた展示会場で、彼の作品はひときわ清涼感を放っていた。壁一面に藍色と蛍光グリーンの色彩、そこに円形の枠が波打ち、重なり、まるで流水のような印象だった。
 

「Congregate」
W600×H180センチ
(非売)
上写真(作品全景)・下写真(作品拡大)

繰り返しの効果

作品『Congregate』は綿布、プラスチックのポイ、藍抜染で制作された大きな作品。その作品に心を残し、いつか坂本に会って作品の解説を聞きたいと思っていたところ、9月の展示会で金魚掬(すく)いのポイを作品にした『思い出の標本』を販売している本人に会うことができた。「藍で染め上げた布に、彫った型紙を置き、脱色糊(のり)を用いて藍色を抜き白を表す『藍抜染』を使用し、型紙を用いることによって生まれる、繰り返しによる統一感やリズム感から、小さなものが身を寄せ集まることで大きな姿を見せる魚の群れや水の動きなどを現代的に表現している」と話してくれた。また小さな魚たちの群れが大きな存在と対峙(たいじ)することが人間社会の在り方にも通じると思うと語った。

金魚掬いのポイには、金魚の模様に抜染した布を張っていて、それは祭りの思い出を想起するノスタルジックな存在でありながらどこかキッチュな雰囲気がある。「一つ一つのポイの中に小宇宙を、それらの小宇宙を大量につくり展示会場にあわせて大宇宙をつくる」という坂本。切り取られた何げない風景を作品に昇華する彼のこれからの展開が気になる。
 

「思い出の標本」
H20×W14×D3.5センチ
1万5000円(税込)




「Pretend」
H400×W400×D400センチ
(非売)
上写真(作品全景)・下写真(作品拡大)


 

「MIGRATION」
H135×W160センチ
(非売)

 
 
作家近況
坂本大地(さかもと・だいち)
沖縄県立芸術大学工芸専攻 助教
https://www.instagram.com/d.sakamoto/?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA%3D%3D
◆大阪暮らしの今昔館企画展「布のすがたーいまむかし」(大阪市)10月23日~2025年2月2日
◆UNKNOWN ASIA2024出展(梅田サウスホール・大阪市) 12月6日~8日
◆Kyoto Art for Tomorrow 2025-京都府新鋭選抜展-(京都文化博物館)12月21日~2025年1月13日
 

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2025号・2024年10月25日紙面から掲載

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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