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2023年9月22日更新

不動産の日特集2023②|危険な不発弾 探査で安心

[今も地中に眠る1878㌧の弾薬]
終戦から78年。街並みはきれいに整えられ、多くの観光客も訪れるようになった沖縄だが、その足元には当時の弾薬が今もなお不発弾として残っており、その量は約1878㌧とも言われている。毎日のように不発弾は発見されており、県防災危機管理課によると、昨年度は14.7㌧、数にすると1万5696発が見つかったという。しかも、それらはいまだに爆発する可能性がある。県では、住宅の新築や建て替え工事の現場、畑などにおける不発弾の探査費用などを全額補助する「不発弾等処理事業」を行っているが、同事業を活用した探査件数はなお少ないのが現状だ。同事業について紹介する。

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2019年に、糸満市の住宅建築現場から発見された250㌔爆弾。長さは約120㌢、直径は約36㌢ある。周りの人と比べると、その大きさがよく分かる(県防災危機管理課提供)
2019年に、糸満市の住宅建築現場から発見された250キロ爆弾。長さは約120センチ、直径は約36センチある。周りの人と比べると、その大きさがよく分かる(県防災危機管理課提供)



市街地・離島でも発見

那覇市の建設現場で発見された50㌔爆弾。奥に見えるフェンスの向こう側は国際通り那覇市の建設現場で発見された50㌔爆弾。奥に見えるフェンスの向こう側は国際通り
那覇市の建設現場で発見された50キロ爆弾。奥に見えるフェンスの向こう側は国際通り


補助活用し探査を

「不発弾等処理事業」は、住宅やアパートの新築・建て替えなど民間の工事予定の土地を対象とした「住宅等開発磁気探査支援事業」と、畑など工事を伴わない土地を対象とした「広域探査発掘加速化事業」がある。

いずれも土地の不発弾探査の費用を原則100%補助するもので、市町村の窓口から申し込む。不発弾が見つかった場合も処理費用は公費で賄われる。

県防災危機管理課不発弾対策班の島尻聡班長は「不発弾によって死亡事故が起きた事例もある。不発弾はまだまだ身近で、探査しなければどこに埋まっているか分からない危険なもの」と訴える。

実際、県内全域で発見されており、2017年には、多くの人が行き交う那覇市の国際通り近くで50㌔爆弾が発見された=上写真。離島でも、現在「広域探査発掘加速化事業」を利用して調査している宮古島の畑から、50㌔爆弾が5発も出ているという。


浦添市の建築現場から発見された不発弾。上は缶のようなものにまとめて入っていた81㍉迫撃砲弾、右は5㌅艦砲弾、下は手りゅう弾浦添市の建築現場から発見された不発弾。上は缶のようなものにまとめて入っていた81㍉迫撃砲弾、右は5㌅艦砲弾、下は手りゅう弾浦添市の建築現場から発見された不発弾。上は缶のようなものにまとめて入っていた81㍉迫撃砲弾、右は5㌅艦砲弾、下は手りゅう弾
浦添市の建築現場から発見された不発弾。上は缶のようなものにまとめて入っていた81ミリ迫撃砲弾、右は5インチ艦砲弾、下は手りゅう弾


同じ敷地から複数

不発弾処理事業が始まったのは1975年。那覇市の幼稚園の下水道工事中に起きた爆発事故がきっかけだった。

費用を全額補助する住宅等開発磁気探査支援事業は2012年からスタート。これまで1832件を探査し、100件で合計4・7㌧が見つかっている(23年3月末時点)。昨年度だけでいえば、261件探査したうち、15件で合計0・3㌧の不発弾が発見された。

島尻班長は「同事業による探査件数は年々増えているが、それでも新築着工件数の約5%しかない」と話す。公共工事では不発弾探査が義務化されている一方、住宅建築など民間工事では施主の判断に任されており、補助事業を知らない人が多いことも要因の一つとなっている。

そのため、掘削作業中などに偶然見つかることも多い。今年2月には南城市の住宅建築現場で50㌔爆弾、4月には那覇市で5㌅艦砲弾などが偶然見つかっている。「運が良かっただけで、重機が当たって爆発していた可能性もある」

同じ敷地から複数の不発弾が出てくることもある。浦添市の建築現場では、81㍉迫撃砲弾4発と、5㌅艦砲弾、手りゅう弾が出てきた=上写真。一つでも爆発すれば他のものにも誘爆し、大きな被害につながる危険もあるという。

島尻班長は「最近は建て替え時期を迎えている住宅も多いが、建物が建っていたから大丈夫というわけではない。探査することで職人たちも不安なく工事を進められる。安心して住むためにもぜひ事業を活用して」と呼び掛けた。


 

探査費用は100%補助

住宅建築やその他の工事を行う際に不発弾探査を補助する「住宅等開発磁気探査支援事業」。よくある質問をQ&A形式でまとめた。


Q1 事業の対象は?
A 住宅やアパートの新築・建て替えなど、民間の工事予定地


住宅の新築や建て替え、各種事業所、店舗、土地造成といった民間の工事予定地が対象。面積による制限はないが、過去に同事業の補助を受けたことがある土地は対象とならない。ただし、建て替えなどで以前よりも基礎が深くなる場合などでは補助の対象となる可能性がある。



Q2 費用は?
A 原則として申請者の負担はなし


原則、100%補助されるため、申請者の負担はない。ただし、樹木の伐採や所有物の撤去などは、申請者自身で行う必要がある。



Q3 申請方法は?
A 申請書類を建設予定地の市町村窓口に提出


不発弾等処理事業のパンフレット=下画像=にある「沖縄県住宅等開発磁気探査支援事業申請予定票」に記入し、建設予定地の市町村窓口に提出。
 
不発弾等処理事業のリーフレット。沖縄県防災危機管理課のホームページに掲載しているほか、各市町村の担当窓口などで配布中



Q4 補助を受けられないケースもある?
A 補助金の交付決定前に探査すると、補助を受けられない


不発弾探査は、補助金の交付決定後に申請者と探査を行う業者が契約し、着手する。交付決定前に探査を行ってしまうと、補助が受けられなくなる。



Q5 家の近くで不発弾が発見されたことがあるかを知る方法はある?
A おおよその位置を調べられるデータベースがある


沖縄総合事務局による「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」を使えば、不発弾の発見場所などを地図上に表示して確認できる。誰でもインターネットで閲覧可能。

那覇市久茂地周辺を調べた様子。赤い印は不発弾が発見された場所 ※上の画像は「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」の画面を切り取って使用したもの
那覇市久茂地周辺を調べた様子。赤い印は不発弾が発見された場所 ※上の画像は「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」の画面を切り取って使用したもの


Q6 探査の方法、期間は?
A 専門業者による磁気探査。申請受理から探査終了まで約1カ月


不発弾が主に鉄製なので、磁力を利用した磁気探査で地中に鉄類が埋まっていないかを調べる。探査は専門業者が行う。申請受理から探査開始まで約2週間、その後、探査に約2週間かかる(一般的な住宅の場合。敷地の広さなどにより異なる)。



Q7 不発弾を見つけたら?
A 近寄らず、すぐに警察に連絡


探査中に不発弾が見つかったら、建設予定地の市町村、県、自衛隊で処理方法を協議の上、後日処理作業を実施する。費用はすべて公費で賄われる。万一、探査していない場所で不発弾を見つけたら、近寄ったり触れたりせずにすぐに警察へ連絡を!
 





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取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1968号・2023年9月22日紙面から掲載

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