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2023年4月7日更新
「気が散る!」は環境に問題あり|家と心理⑬
空間デザイン心理士®️で、一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが空間を心理学的に解析。今回は集中できる仕事・学習空間のつくりかた。集中できないのは性格や能力の問題だけでなく、周辺環境に影響されることも大きいようです。
「気が散る!」は環境に問題あり
モノが集中を妨げる
新年度に入り、気持ちも新たに仕事や勉強に打ち込みたい時です。しかし「気が散ってはかどらない!」「なぜか集中できない」という人、多いと思います
実は大前提として、人間の脳は勉強や仕事など、集中することに向いていないんです。
ならばなぜ、集中できる人と、できない人がいるのでしょうか?
集中できない原因は、心身の疲れや心配ごとなどの精神的な部分や、仕事の段取り不足などもありますが、仕事空間、机の周囲の環境にも潜んでいます。
集中できない環境の大きな原因は、①周囲に気が散るモノが多い、②机の上に余計なものがあふれているの二つです。
まず「周囲に気が散るモノが多い」ですが、電話やメールの着信音、人の気配や足音で集中が切れて作業を中断してしまったという経験はありませんか?
それは、人の脳が異常を察知して身の安全を守るため、あちこちに注意を向けるようにできているから。動物の本能なのです。それが勉強や仕事に集中したいときには障害になってしまいます。集中したいときは気を散らせるモノを排除することが大切です。
また、机の上に余計なものがあふれていると気が散るだけでなく「あの書類、どこにいったかな?」と探し物をする余計な時間を作り、集中力が切れてしまいがちです。
気が散るデスク
▲あなたの机の上に、こんなモノがあふれていませんか
・よくわからない書類の山
・やたらに多いペンなどの筆記用具
・借りっぱなしで戻していない共用のモノ
・なぜか増えた割り箸やプラスチックスプーン
・デスク下にあふれた私物の数
視・聴・嗅覚も利用
集中力を持続させるために、私も実践して効果が実感できた四つのコツをお伝えします。
1・集中に必要な「最初の23分」を確保する
人が集中状態に入るまでには「23分」かかるといわれています(カリフォルニア大学アーバイン校の研究)。
その間に話しかけられたりすると、集中が途切れ、再び集中が戻るまでに23分かかります。ちょっとした中断でも、それが続くと1日の生産性にかなりのロスを発生させてしまいます。
対策としては、話しかけられない時間・空間を確保することです。例えば、電話やメールなどの着信音をオフにしたり、周りに「今は集中したいので話しかけないでもらえますか?」と伝えることなどが有効です。
話しかけられない時間を設けることで、「話しかけていい時間帯」の会話が活発になる効果も期待できます。
2・目に見える範囲に気が散るモノを置かない
仕事に関係ない余計なモノや誘惑するモノなど、集中力を切ってしまいそうなモノを見つけ、意識して排除するようにしましょう。
誘惑するモノの少ない場所へ移動するのも良いです。私も集中できないときは、カフェや図書館など、誘惑が少ない場所へ移動します。そうすると仕事がサクサク進みます。
3・かんきつ系の香りをかぐ
香りを活用することも有効です。香りは脳にダイレクトに届きます。
ラットの実験でレモンの香りは、脳の中の副交感神経(リラックスするときに働く神経)をつかさどる部分の血流が抑えられました。これは、交感神経(仕事や運動中に働く神経)が優位になるということを意味し、かんきつ系の香りは脳を活動性の高い状態に導きやすいのです。作業前にかんきつ系のアロマを利用するなど、香りを利用しましょう。
4・自然音を聞きながら作業する
うるさい環境では集中しにくいですが、あまりにも静かな環境でも集中力は妨げられるといわれています。日常ではさまざまな音があふれているため、静か過ぎると、脳は音を探すことに注意を向けてしまうのです。これはマウスの実験でも実証されています。
静かなカフェくらいの雑音や、自然の音(雨音や波の音、川のせせらぎ、鳥の声など)が聞こえる程度がちょうど良いとされています。
◇ ◇ ◇
集中できない原因や脳の仕組みを知ることで、仕事や勉強の生産性は上げられます。お悩みの方はぜひ、実践してみてください。
デスク下の収納アイデア
デスクの下の収納アイデア。オフィスであれば、ここにバッグやスリッパ、靴などを置いてデスク周りをスッキリさせよう
仕事がはかどるデスク 三つのポイント
1・気が散るものを視界に入れないようにするため、デスクの上には極力、モノを置きっぱなしにしない。
2・よく使うモノは、デスクの引き出しの取り出しやすいところに入れるなど、使用頻度を重視した収納計画を行う。
3・書類は必要な時に必要なモノをサッと取り出せるよう、クリアファイルなどで見やすくファイリングして管理しよう。
集中力を保つ工夫
1・「最初の23分」を確保する
人が集中するまでには23分かかると言われる。この時間を確保する。周囲に「集中したい」旨を伝えることが有効。デスクに「今、集中しています」と書いたプレートを置いたり、会社や家族間で「集中タイム」を共有し、「この時間帯、この人には干渉しない」という時間を設けるのも手。
2・目に見える範囲に気が散るモノを置かない
視界から余計な情報を排除する。また、スマホなど集中力を切ってしまいそうなモノを自分の回りに置かないようにする。理想的な机は、今やるべき仕事・学習に使うモノだけが置かれている状態。誘惑するモノの少ない場所に移動するのも有効。
3・かんきつ系の香りで交感神経を優位にする
レモンなどのかんきつ系の香りは脳を活動性の高い状態に導き、集中力を保ちやすくする。仕事・勉強前にかんきつ系のアロマやルームスプレーを香らせたり、ハンカチやマスクに香りのスプレーを吹き付けて自分だけが嗅げるようにするのもおススメ。
4・静か過ぎても人は集中できない
静か過ぎても人は集中出来ない。自然の音は集中を促す効果があるので静か過ぎる場合は、ユーチューブなどで自然音やカフェの音源が配信されているので利用してみよう
[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。http://ielie.net
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1944号・2023年4月7日紙面から掲載