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2023年3月3日更新
きょうだい一部屋でも快適に|家と心理⑫
空間デザイン心理士®で、一級建築士、2児の母でもある、まえうみさきこさんが空間を心理学的に解析。今回は子ども室について。きょうだいで一つの部屋を使う際の工夫を紹介します。
きょうだい一部屋でも快適に
時期は子にゆだねる
子どもの成長に伴って、用意したいのが「子ども部屋」です。
「いつから必要か?」について、空間デザイン心理学®では「用意してはおくが、どこで過ごすか自体は子どもにゆだねるのが良い」と提唱しています。年齢で判断するのではなく、子ども自身の心理的な発達に沿うことが大事という考え方です。
赤ちゃんのころ安心できる場所は親が見える距離です。しかし自我が芽生え始めるとその距離は自然に広くなっていきます。
そして「個」として確立するようになると、心理的に安心できる場所というのが、自分のプライバシーが確保できる場所に変わります。そのために1人だけの専用スペースを欲しがるわけです。その時期は、小学校高学年から中学生ぐらいが多いようです。
子どもが個室を欲しがるまでは子どもの選択に任せ、どこでも好きに使って良いよというスタンスが望ましいです。
同性は「距離」つくる
そんなわけで、子ども部屋は1人1部屋を用意してあげたいところですが、なかなか難しい場合もありますよね。
きょうだいがいると、2人以上で一つの部屋を使うことも多く、机やベッドのレイアウトなど、「狭い」「置けない」などと頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
では、子ども部屋を2人で使う場合のレイアウトについて考えましょう。
まずは同性きょうだいの場合です。ポイントはパーソナルスペースを確保すること。パーソナルスペースとは、他者が自分に近づいても不快に感じない範囲のこと。お互いが一緒に楽しく過ごしつつ、集中したいときや1人になりたいときのスペースもあると理想的です。
そんな空間は敷布団よりベッドなどの家具を使うと作りやすいです。2人部屋の場合は2段ベッドを取り入れたり、寝る場所と、遊び・勉強スペースを分けたりして、狭く感じさせない配置が必要になってきます。
異性はプライバシー確保
異性のきょうだいであれば、思春期になるとプライベートな空間が欲しいと感じる可能性は高いですし、子どもが小さくてもプライバシーを守るために仕切りを設置するのがおすすめです。
簡易的に2段ベッドやカーテン、ロールスクリーン、パーティションなどで視界を遮ることでプライベート空間が作れます。
ロールスクリーンは場所を取らずに使えるのがポイントで、突っ張り棒タイプのものなら賃貸住宅にもおススメです。ただし小さな子どもは、ロールスクリーンのひもで事故やけがの危険があるため、中学生や高校生など、ある程度の年齢の子ども部屋への使用が適しています。
カーテンは、たくさんの色や柄、素材から選べ、子どもの趣味やインテリアに合わせやすいです。
パーティションは、キャスター付きのものや折り畳めるもの、木製や布製などさまざまなタイプがあるので、使い方に合せて選べます。
照明の位置に注意
注意すべきは照明の位置。部屋の中央に照明があると、仕切り方によっては部屋全体が暗くなってしまう可能性があります。間接照明を使用するなどの工夫をしましょう。
最後に、狭い部屋でも子どもたちが快適に過ごすためには、定期的に様子を確認することが重要です。成長に伴い「前までは問題なく過ごせていたが、最近はケンカが多くなってきた」なんて可能性もあります。子どもたちと話し合い、何に不便を感じているかを随時聞いてあげてください。
同性のきょうだいの場合
ベッドなどの家具を使ってパーソナルスペースを確保する
それぞれのベッドの頭の向きを変えて目線が合わないようにする。狭くて隠れられるような要素もあったりと、おこもり感も楽しめるレイアウト
異性のきょうだいの場合
仕切りを付けた2段ベッドを置く
◆真横から見た図
2段ベッドの場合、上下段の温度差に注意しよう。暖かい空気は天井付近に、冷たい空気は床付近にたまるため、エアコンの温度をむやみに変えず、サーキュレーターや扇風機で部屋の空気を循環させる。また、上段は窓からの外気や直射日光が当たり過ぎないよう配慮すること
◆真上から見た図
部屋の中央に2段ベッドを置き、上段と下段それぞれ互い違いになるように板やカーテンを取り付け、しっかりとしたプライベート空間をつくる
一番簡単にできるレイアウト。部屋の広さにより、ベッドの幅は100㌢未満にしなければならない場合がある。仕切った時のそれぞれの部屋の幅に注意すること
個室を欲しがるまでは
どこでも好きに使わせる
まえうみさんがすすめるのは「おうちノマド式」。「親の顔が見える場所にいたがるのであれば、リビングやダイニングに子どもが過ごせる場所を作ってあげましょう」と話す。集中したい時は、パーティションで視界を遮る(図の右上部分)
カーテンやパーティションで部屋を分ける
◆突っ張りカーテン
膨張色の白やベージュは圧迫感を与えにくいのでおすすめ。手軽に突っ張り棒で設置できるカーテンもある
◆突っ張りパーティション
◆突っ張りパーティション
子どもが寄りかかったり、衝撃を与えて倒れないか心配な場合は、壁や天井に固定できるタイプがおすすめ
[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。http://ielie.net
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1939号・2023年3月3日紙面から掲載