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2023年3月17日更新

沖縄の緑の復活を![街中のみどり⑩]

文/武田慶信、福村俊治 写真/福村俊治
沖縄にとって「緑の問題」は大切な課題だ。

 沖 縄にとって「緑の問題」は大切な課題だ。しかし、それに気づいている人は少ない。亜熱帯気候の島国沖縄にはかつて豊かな海と緑が身近に存在した。だから「沖縄は何もない、山と海しかない」なんて言葉がまかり通っていた。今、環境重視の時代になり、沖縄の豊かな自然を求めて本土や海外から多くの観光客がやって来るが、遠くヤンバルや離島に行かないとかつての海や緑には出合えない。

復帰後、本島中南部に人口が集中し、緑の丘陵地を市街地に変えた。その代わりか、道路整備で街路樹をやたらと植え、「道路緑化率」は全国1位となった。

そもそも街路樹は、道路の飾りではない。歩く人のために木陰を作り、街の景観を作る、ヒートアイランド防止や地域防火などの正当な理由がある。

しかし「樹木が育って電線の邪魔」「看板が見えない」「葉っぱが落ちて掃除が面倒」などという近隣住民の意見で、枝や幹をバッサリ切り始めている。公園でも「球技のために邪魔になる」「木陰が多いと陰気だ」と言って剪(せん)定(てい)している。

日本の道路は道路構造令という全国一律の基準に基づいて作られている。しかし、沖縄は亜熱帯地域にあって樹木の成長も早く、本土とは植生や土壌も異なる。加えて台風や日差しが強いため、沖縄の樹木は枝も根も横に広がるものが多いのに、歩道も植え升も狭い。

その上、電線の邪魔にならないように上部の幹や枝がカットされる。無電柱化すれば切られることがないのではと思うが、実は地中に電気や水道やガスなどのための共同溝ができると、根を張るスペースがより狭くなるそうだ。
摩天楼が並ぶニューヨークのセントラルパーク(ニューヨーク市パンフレットより)


台北の街路樹。大きく成長し、緑のトンネルを作る


県内でよく見かける、強剪定(せんてい)された街路樹

那覇新都心。公園にも街並みにも緑が少ない(Google Earthより)
 
維持管理ガイドラインに期待

世界の経済や文化の繁栄する都市や街はどこも緑が多い。森のような広い公園があり、立派な街路樹のある幅広の道路や歩道がある。誰もが都会に居ながら自然の癒やしを享受できる街づくりがされ、しっかり維持管理され、市民も大切にしている。

先日の新聞に、県は来年度、「街路樹維持管理ガイドライン(案)」を初めて作り街路樹剪定を美しくするという記事が出ていたが、これまで植え込み場所や樹種選定、維持管理をしっかりやってこなかったようだ。良心的な植栽の専門家がいないのか。

建物や人間よりも長生きする樹木のことをしっかり考え、環境や景観をよくするために大木に成長できる道路植栽帯や広い公園を作り、手入れすることが大切だ。そして、SDGsや観光立県をうたう沖縄だからこそ、もっと緑を復活しなければいけない。=おわり
 
 
 
 


執筆者
たけだ・よしのぶ/1943年、奄美大島生まれ。亜熱帯花木造園家。82年、県緑化センター設立参画。87年、オリオンビール花の国際交流熱帯花木130万本育苗配布参画など。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1941号・2023年3月17
日紙面から掲載

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