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2022年12月16日更新
[沖縄]「接触」を増やして好感・興味持たせる|家と心理⑨
県内唯一の空間デザイン心理士®で、一級建築士、2児の母でもある、まえうみさきこさんが空間を心理学的に解析。今回は、家族のコミュニケーションを促し、子育てがしやすくなる住まいを、「単純接触効果」「モデリング理論」などの心理学を活用してかなえます。
「接触」を増やして好感・興味持たせる
「単純接触効果」取り入れ
「単純接触効果」という言葉を聞いたことはありますか? 初めは興味がなくても、繰り返し見たり、会ったり、接触する回数が増えるほど、警戒心が薄れ、親しみや親近感を感じるという効果です。1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスによって提唱されたため、「ザイアンスの法則」とも呼ばれています。
例えば、電車やバス通学をしている学生が毎日、同じ時間・同じ車内で出会う異性に好感を抱いたり、CMで流れている曲を毎日聞いてるうちに自然と口ずさんでいたり。マーケティングや営業など、さまざまなところで活用されています。
この心理学をおウチの中で積極的に使うと、家族のコミュニケーションや子育てが円滑になります。大事なのは「接触」を増やすことです。
一番良いのが、家族が顔を合わせやすい間取りにすること。外出時や帰宅時に、家族の過ごす空間(リビングなど)を通って各個室に行くような間取りがおすすめです。毎日顔を合わせ、ちょっとでも言葉を交わす機会が増えると「今日は元気がないな」など、家族の変化にも気づきやすくなります。この「ちょっとした変化に気づく」ことが、子育てでも大切です。
もし、家族と顔を合わせずに個室へ行く間取りの場合は、モノを使った接触方法もあります。
・夫婦の結婚式の写真を飾る。
・リビングのいつも見える場所に家族の写真を飾る。
・子どもが描いた絵や作品、賞状やメダル、トロフィーを飾る。
家族の良い思い出にいつも触れたり、思い出を語り合ったり、再びほめられることで、好感度を高める効果があります。
家族の関係性がうまくいっていない場合は、相手が嫌がらない範囲で、良い時代を思い出すような家族の写真、作品などを飾るのも良いと思います。
ただし、直接接触が一番コミュニケーション効果があります。まずはそれを優先に考えましょう。
親が行動しマネさせる
さらに「単純接触効果」は、子どもの興味や勉強を応援するのにもとても効果的なんです。
読書家に育ってほしいなら、リビングに本棚を置いて、子どもの興味のある本や、興味を持ってほしい本をそっと置いておくなどがあります。そして、できるだけ一緒に読んだり、本を読んでいる姿を見せましょう。
子どもは親の行動をよく観察しています。マネをするのも得意。実は、心理学の分野でも「モデリング理論」(自分自身の体験だけでなく、他者の行動を観察・模倣することによっても学習するという理論)として提唱されています。
子どもが親と同じスポーツをしたり、親と同じ職業を選んだりするのは、目にする機会や、話を聞いたりする機会が多いことで単純接触効果が働いていると考えられます。
勉強に関しては、一緒に宿題をしたり、親が勉強をしている姿を見せるなど、「親が自分の勉強に関わっている、もしくは勉強している」という姿をたくさん見せる(接触させる)ことで効果が出てくると考えます。
その際は、否定したり、叱り過ぎたり、子どものやる気を奪う行為にならないよう気をつけましょう。
ムリにやらせなくても、毎日目にすることで自然と好感を持つようになり、興味を持つ、持ち続けることにつながる心理効果「単純接触効果」。ぜひ、おウチでどんどん活用してみてくださいね!
[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。http://ielie.net
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1928号・2022年12月16日紙面から掲載