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2020年12月31日更新

[第6回沖縄建築賞を終えて]独特の気候・文化に挑戦

[正賞受賞者と古谷審査委員長が語る]
県内の優れた建築や、建築士を顕彰する「沖縄建築賞(主催:同実行委員会)」。2020年11月22日に、第6回の正賞受賞者である大嶺亮氏と細矢仁氏、審査委員長の古谷誠章氏が同賞を振り返るとともに、沖縄に適した建築について語った。

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審査委員長/古谷誠章氏


住宅建築部門正賞 大嶺亮氏 ファイブディメンジョン 一級建築士事務所​


一般建築部門正賞 細矢仁氏 一級建築士事務所 細矢仁建築設計事務所


進行・伊良波朝義(沖縄建築賞実行委員長、日本建築家協会沖縄支部長)
※伊良波氏はリモートでの参加


(伊良波)第6回同賞から、古谷誠章氏を審査委員長に迎えた。審査を通して感じたことは?

(古谷)15年以上前に、本部町の備瀬集落を調査したことがある。建築とフクギの屋敷林が「継ぎ目のないつながり」を持ち、台風に立ち向かい、周辺環境を取り込む造りに良さを感じた。 戸外の生活、内と外とのつながりなど沖縄の建築にはwithコロナ時代の新しいスタンダードのヒントが詰まっている。県外の人に示唆する物がたくさんある気がしている。

(伊良波)県内にいると良さを忘れてしまうが、改めて気付かせるという意義もある。

住宅建築部門正賞 立体路地を持つ都市住宅

(伊良波)住宅部門で正賞を受賞した「立体路地を持つ都市住宅」の設計の意図と評価のポイント

(大嶺)同物件が建つのは、人の往来の多い密集地。そこで快適な暮らしを、どうしたら実現できるか考えた。沖縄の気候は夏型。長い夏を快適に過ごすことを念頭に置き、風の流れや匂い、空気を家の中で感じられるよう、半屋外空間の「立体路地」という仕組みを取り入れた。 厳しい敷地条件の中でも内外のあいまいさを演出したり、外との一体感を示せたのかなと思っている。

(古谷)書類による一次審査の時には、立体路地をどう風が通り抜けるのか分からなかった。二次審査の際、建築士から話を聞いて評価が高まった。 だが、立体路地を構成するサッシがアルミというところに疑問を持った。優しい質感のものが良かったのではないか。

(大嶺)建物の中に立体路地を組み込んだ時点で、内部寄りになっている。しかし、ここはどんなに気持ちよくても外なんだという意志を素材で示した。また、アルミの方が台風のときにも安心感があるので採用した。

(伊良波)今までの住宅部門の正賞は、郊外の平屋が多かった。だが、住宅は郊外より街中に建てる方が多いので、同物件が正賞を取った意義は大きい。都市型住宅のヒントとなった。


一般建築部門正賞  株式会社技建新本社ビル

(伊良波)一般部門で正賞を受賞した「㈱技建新本社ビル」の設計の意図と評価のポイントは

(古谷)二次審査で、建築士の話を聞いているうちに、開発の原点がここにあり、会社のショールームとしての意味もあるプロジェクトだということが分かった。一次審査ではサイズ感がよく分からなかったが、説明を聞くと相当大きな物。当初はごついと思っていたが、実際に見に行くと、「よくもこんなスレンダーなものでできているな」と感心した。

(細矢)ショールームにしたいとの要望があったのはもちろん、私自身も来沖して、沖縄のコンクリート文化に触れたと同時にコンクリートが支配している沖縄の固さ、難しさを感じた。コンクリートや型枠の値段が上がれば住宅が持てなくなってしまうのではと思った。 コンクリートでも、できることは多いし技術もたくさんある。一つの素材を通して多様性をどこまで追求できるかということを、施主(技建)と一緒にやった。

(伊良波)同ビルの柱の細さやピロティ建築に対する指摘もあった。どのように配慮したか。

(細矢)柱には高強度コンクリートを用い、さらに中には太い鉄筋がそれなりの本数入っている。検証を重ねて、阪神大震災クラスでも崩れにくいということを確認した。 構造や意匠をスレンダーにするなど新しいコンクリートで可能になることを視覚化することは、このビルではやらなきゃいけない挑戦だった。 打設する人、コンクリートを供給する人(技建)も含め、設計段階から何度も何度も検証して確認しながら造り上げた。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1826号 第2集・2021年1月1日紙面から掲載

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