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2022年11月18日更新
[沖縄]沖縄の街路樹は泣いている 街路樹の樹種と植栽升の改善を|街中のみどり⑦
文/武田慶信、福村俊治 写真/福村俊治
ひと昔前、道路は美しかった。植栽升(草木を植える部分)は年に2~3回草刈りされ、街路樹も緑の傘を広げていた。しかし15年ほど前から道路沿いの植え込みは草ボーボーになった。そして最近は剪定(せんてい)されてほとんど幹だけになった惨めな街路樹や枯れた街路樹も目立つようになった。
ひ と昔前、道路は美しかった。植栽升(草木を植える部分)は年に2~3回草刈りされ、街路樹も緑の傘を広げていた。しかし15年ほど前から道路沿いの植え込みは草ボーボーになった。そして最近は剪定(せんてい)されてほとんど幹だけになった惨めな街路樹や枯れた街路樹も目立つようになった。
そもそも樹木の剪定とは、樹形を整え、競合する枝を取り払い、樹木のより良い成長を促す作業だ。しかし近年の、枝をばっさり落とす強剪定の目的は、近隣への落ち葉防止や、電線に絡むことの防止、伸びた枝が道路交通を邪魔しないこと、台風による倒木の防止などのためだという。
そもそも樹木の剪定とは、樹形を整え、競合する枝を取り払い、樹木のより良い成長を促す作業だ。しかし近年の、枝をばっさり落とす強剪定の目的は、近隣への落ち葉防止や、電線に絡むことの防止、伸びた枝が道路交通を邪魔しないこと、台風による倒木の防止などのためだという。
樹木にとって障害だらけ
沖縄は日本本土と異なり、年中温暖で多雨な亜熱帯気候のため、植物にとって適した環境で成長が早い。そして青い海と濃い緑こそが沖縄の最も大切な自然資産でもある。かつて沖縄戦によって街も緑も破壊され荒れ果てた。その沖縄の緑化のために復帰後のインフラ整備の中で道路緑化、つまり街路樹整備に莫大(ばくだい)な予算を費やした。聞くところによると一時期沖縄の道路緑化率は日本でトップだったそうだ。
そして成長した街路樹が今、写真のような悲惨な姿になっている。医療と植物に造詣の深い知人Y氏は私に「生き物を切るのでなく、電線を切れ」と言った。幼い子供でも知っているが、樹木は生き物で年々成長する。10~20年もすれば大木に育つ。また、台風のある沖縄に生育する樹木の多くは、強風に耐えるために上でなく横に伸び、また根も同様に横に広く伸びることは誰もが知るところだ。
一方、道路そのものは建築制限という決まり事があって、自動車の通る部分は3.8メートル、歩道部分は2.5メートルの高さ制限がある。また歩道にある植栽升は道路側にあって極めて小さく、すぐ横の道路基盤は強固に固められている。また地中にはさまざまな埋設配管もある。その上、地上5メートルには電線がある。樹木にとって上も下も横も障害だらけだ。
そんな条件の下では、街路樹の本来の目的である街並み景観づくりや、快適な日陰空間を作ることは不可能である。沖縄という特殊な地域特性を踏まえた道路設計基準が必要である。莫大な費用をかけたインフラ整備が今無残な結果となっている。街路樹たちは泣いている。
日本での道路と植樹升と樹木の関係図。樹木の高さ制限寸法
ドイツ・ベルリン市の植栽標準断面図。深く広い植栽升のほか、樹木の成長を促す地中の通気や潅水(かんすい)にも配慮されている(上下図とも「街路樹は問いかける」岩波ブックレットより)大きな緑のトンネルを作っていた10年ほど前のフィカスハワイ(ガジュマルの一種)並木(うるま市兼箇段)
上写真のフィカスハワイは根と幹が大きくなり過ぎ、最近伐採されつつある
強剪定のために枯れたアカギの木(那覇市首里桃原)
幹をバッサリ切られたアカギの木(浦添市経塚市街地住宅前)
小さい植栽升いっぱいに成長した樹木の根(浦添市仲間)
ガジュマルの枝と根は横に広がる(那覇新都心公園)
ガジュマルの枝と根は横に広がる(那覇新都心公園)
執筆者
たけだ・よしのぶ/1943年、奄美大島生まれ。亜熱帯花木造園家。82年、県緑化センター設立参画。87年、オリオンビール花の国際交流熱帯花木130万本育苗配布参画など。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1924号・2022年11月18日紙面から掲載