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2022年9月30日更新
[沖縄]建築系学科がある大学・大学校③|沖縄職業能力開発大学校 住居環境科(沖縄市)
県内の建築系学科を有する学校紹介の第3弾。今回は大学・大学校編で、琉球大学・県立芸術大学・沖縄職業能力開発大学校を紹介する。各校とも学生の興味を深め、個性を磨ける授業内容となっている。併せて、過去に掲載した県内の工業高校5校、専門学校3校の特徴も紹介する。
実習で知識深め 2年で技術も習得
沖縄職業能力開発大学校(住居環境科)は
◆授業の6割を占める実習や「卒業研究」などにより、設計から施 工まで幅広い知識と技術を2年間で得られる
◆卒業後は就職のほかに応用課程への進学(九州・近畿など)もある
◆授業料が年額39万円と割安
※定員は20人。今年度のオープンキャンパスは終了しているが、 要望があれば随時見学会を実施する(個人でもOK)
過去の進路状況/就職と進学は6:4くらい。就職先は、㈱国建、金秀建設㈱、㈱仲本工業、㈱照正組、㈱福地組、㈲明城建設、㈲アトリエ・門口、㈱kapok、米元建設工業㈱など。
◇ ◇ ◇
沖縄職業能力開発大学校(沖縄能開大)は、厚生労働省が設置する大学校の一つ。住居環境科について、同科主幹の濱田恵三先生は「設計や構造、施工、インテリアなど、幅広い分野を2年間の専門課程に凝縮して学ぶことができる」と説明する。
実習が約6割と多いのが特徴で、木造や鉄骨造の骨組みを組んだり、RC造の型枠パネル製作、設計製図、材料実験なども行うという。「設計にしても施工にしても、座学で勉強したことを実習で体験することで、技術を習得しながら理解も深められる」。約20人の少人数制のため「学生と教員との距離が近く、進路や資格試験の相談に対応しやすい」のも特長だ。
2年生になると「卒業研究(総合制作実習)」がある。学生が興味のある分野を1年かけて研究していくもので、例えば同科の前堂さんは夏型結露、本田さんは学内にあるテラスの改修に取り組んでいる。
また、昨年からは安全教育もスタート。実習の前に危険性を確認したり、足場作業や、丸のこの取り扱いに関する資格なども授業の中で取得できるようになった。
応用課程で県外に進学も
専門課程(1・2年次)を修了すると、卒業して就職する道と、県外の能開大にある応用課程(3・4年次)へと進学する道がある。「応用課程は施工と構造に特化したカリキュラムで、期間は2年。毎年、4割ほどが進学を選ぶ」と濱田先生。
一方、就職希望者の就職率は100%。ミスマッチを防ぐため、インターンシップ先を自分で見つけるようにもしている。
そのほか、授業料は年額39万円で、他の学校に比べて割安になっている。
わが校のここがイイ!
住居環境科
前堂祥吾さん(2年)=左、本田星さん(2年)
◆沖縄能開大の住居環境科を選んだ理由
(本田)工業高校で建築を学ぶうちにより深く知りたくなり、短期間で幅広い分野を学べそうだったから。実際、高校が基礎編だとすると、沖縄能開大は複雑な発展編のような感じ。
(前堂)構造設計の仕事をする叔父を見て、自分の得意な数学を生かせるのではないかと思い建築に興味を持った。普通科出身者が多く、2年終了後に進学か就職かを選べるなど進路の幅も広いのでここを選んだ。
◆よかったことや、大変なことは?
(前堂)座学の知識が実習につながるので、イメージがつかみやすい。卒業研究で、沖縄の地域性を生かした研究や、企業との共同研究ができるのもおもしろい。
(本田)2年間で集中して学ぶため、課題が多いのが大変。その分、忍耐力と計画性が鍛えられた気がする。少人数なので互いに教え合うなどみんな仲が良い。
◆将来の夢は?
(本田)周りにいい影響を与えられる現場管理人を目指している。みんなが利用するような公共施設の建設に、責任ある立場で関われたらいいなと思う。
(前堂)来年は関東の応用課程に進学する予定。将来的には沖縄に戻り、身につけたリーダー性とより専門的な知識を生かした現場監督になりたい。
卒業研究で興味を深堀り
卒業研究による「首里城正殿軸組模型」
2年生になると、学生がそれぞれテーマを設定して研究を進める「卒業研究(総合制作実習)」が始まる。 テーマは設計から模型製作、古民家解体、東屋製作などのものづくりまで幅広い。企業と共同で、耐力壁や夏型結露といった、実際の建築現場で使える技術を研究する学生もいる。
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取材/東江菜穂・出嶋佳祐・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1917号・2022年9月30日紙面から掲載