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2022年9月30日更新

[沖縄]建築系学科がある大学・大学校④|琉球大学工学部工学科建築学コース(西原町)

県内の建築系学科を有する学校紹介の第3弾。今回は大学・大学校編で、琉球大学・県立芸術大学・沖縄職業能力開発大学校を紹介する。各校とも学生の興味を深め、個性を磨ける授業内容となっている。併せて、過去に掲載した県内の工業高校5校、専門学校3校の特徴も紹介する。

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気候風土に基づく視点 建築学を体系的に



琉球大学工学部工学科建築学コースは

1年次は、建築学の基礎や数学や物理学、教養科目など幅広く学ぶ。

2年次以降は建築学の多岐に渡る分野を履修。また、実社会における建築学の専門家としての職能や役割、責任の理解を深める。

正式な研究室配属が行われる4年次には、研究テーマを設定し研究を行う。卒業により一級、二級建築士などの受験資格を得られる。

※過去の進路状況/就職先は県内外一級建築士事務所、竹中工務店、パナソニックホームズ、内閣府沖縄総合事務局、沖縄県庁など。大学院進学は琉球大学大学院、九州大学大学院(福岡県)、横浜国立大学大学院(神奈川県)、名古屋造形大学大学院(愛知県)など


建築学コースで学べる六つの教育研究分野

快適な生活のために建築物の材料や設計、地域や都市の開発計画まで幅広く研究する建築学。琉球大学の建築学コースでは、六つの分野に分けて建築学の理解を深める。

建築デザイン・建築計画
タイの大学との国際ワークショップの様子。異文化を尊重しつつ協力して設計を行うタイの大学との国際ワークショップの様子。異文化を尊重しつつ協力して設計を行う

都市計画・地域生活空間
防災上の課題を抱える地域で避難経路を作り出すための現地調査防災上の課題を抱える地域で避難経路を作り出すための現地調査

環境工学・建築設備
米軍航空機騒音の測定と飛行ルートを目視で調査する様子
米軍航空機騒音の測定と飛行ルートを目視で調査する様子

建築材料・建築生産
高流動コンクリートの広がった直径を測って流動性を評価するフロー試験の様子
高流動コンクリートの広がった直径を測って流動性を評価するフロー試験の様子

建築構造・耐震工学
既存建築物の地震被害の軽減化を目指した「ミニ耐震壁」の水平加力実験
既存建築物の地震被害の軽減化を目指した「ミニ耐震壁」の水平加力実験

建築防災工学
木材試験の様子。県産の木材の強度を調べる木材試験の様子。県産の木材の強度を調べる
 
◇      ◇      ◇

琉球大学の建築学コースでは、一般的な建築学を学べるだけではなく、沖縄という亜熱帯島嶼(とうしょ)地域特有の建築や住環境について教育や研究を行っているのが特徴。2022年度の同コース長である小野尋子教授は「建築に関わる法律や工業製品などの規格は本土の気候を基に考えられていることが多い。例えば、建築物省エネ法の適用も異なるものとなる。本土では見えにくい法律や規格の問題点や矛盾点に気づけ、新たな視点を得られることも琉球大学の建築学コースの強みの一つ」と語る。

建築学は、建築に用いる材料、建物のデザイン・構造から都市計画までを網羅する総合的な工学分野。

同コ―スは、建築学の領域を「建築デザイン・建築計画」、「都市計画・地域生活空間」、「環境工学・建築設備」、「建築材料・建築生産」、「建築構造・耐震工学」、「建築防災工学」の六つの分野に分けて教育と研究を行っている。


建築学の科目以外も

1年次では、社会の成り立ちや歴史文化などの教養科目を選択する。さらに、英語や他の外国語の履修を通してグローバルなコミュニケーション、表現力を身に着ける。また、数学や物理学といった工学分野の学習の基礎となる科目も学ぶ。特に数学は、沖縄の建築物に使われることの多いコンクリートの性能や耐力、防災上のリスクなどを解析する際に欠かせない。

2年次になると、六つの分野の基礎的な内容を満遍なく学ぶ。建築設計製図では住宅や文化施設の設計に取り組んだり、実験科目ではコンクリートの特性について実験を通して理解を深める、といった具合。

3年次は、六つの中から興味を持った分野の授業を選択。4年次は研究室に所属し、自分でテーマを設定して卒業設計や卒業研究を行う。例えば、「環境工学・建築設備」分野なら米軍航空機の騒音を測定するなどして都市の音環境を研究したり、「都市計画・地域生活空間」分野なら、防災上の課題を抱える密集市街地で現地調査を行ったりと、より専門的な知識を深め技術を磨く。


建築学コースのカリキュラム
建築学の基礎から専門知識まで体系的に学びつつ、言語など多岐に渡る科目も履修する


グローバルな人材育成も注力

1~4年次の教育プログラムは、建築士の受験資格として認定されているため卒業後に建築士試験の受験が可能。また大学院で所定の科目を取得すれば、建築士資格の免許登録に必要な実務経験を短縮または満たすことができる。

また2017年の工学部改組により、1年次から6年次までを通して建築学を体系的に学びつつ、言語など多岐に渡る科目も履修する「グローバルエンジニアプログラム」を開始した。同プログラムは、実践的な英語技術の講義や国際協力に関する科目を導入し、建築の分野でグローバル化に対応できる人材を育む制度。1・2年次で基礎的な事を学んだ学生たちの中から参加希望者を募集。3年次以降は、建築の専門知識を学びつつ、海外の建築系大学への留学などができる。

小野教授は「建築学コースでは、タイやアフガニスタンからの留学生も受け入れており、共に研究したり現地へ赴きワークショップを行う研究室もある。日本にいながら亜熱帯島嶼地域に属し、アジアを見据えたグローバルな視点で建築が学べるのが強み。気候風土や文化の違いなどを理解した上で建築学を学んでほしい」と話す。


 わが校のここがイイ! 

建築学コース
伊勢崎銀河さん(修士2年)=左、又吉杏美さん(学部4年)


◆琉球大学工学部工学科建築学コースを選んだ理由
(伊勢崎)私は、東京の八丈島の出身なのですが、島と同じような気候条件で建築を学びたいと思い、琉球大学に進学しました。
(又吉)高校生の頃からさまざまな建物を見るのが好きでした。地元で建築を学べるため琉球大学に入学しました。

◆大変なこと、良かったこと
(伊勢崎)当初は、住宅の設計をしたいと思っていました。ですが入学後、建築デザイン以外にも幅広い分野があると知り、興味の幅が広がりました。
(又吉)建築学コースで学んでから、県内を散策するときにただ建築物を眺めるだけではなく、建築物から沖縄らしさを感じるようになりました。また県外へ旅行に行ったときには建築を見る楽しみが増えました。

◆将来の夢
(伊勢崎)県外の建設コンサルタントに就職が決まりました。都市開発を行う仕事ですが、コースで学んだことを生かしていきたい。
(又吉)現時点では未定ですが、街の景観を計画する仕事に就きたいと考えています。


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取材/東江菜穂・出嶋佳祐・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1917号・2022年9月30日紙面から掲載

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