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2022年6月24日更新

見慣れた街が新鮮に映る|アートを持ち帰ろう(15)

文/本村ひろみ

見慣れた街が新鮮に映る

ノスタルジックな色調の作品をリビングに

日本画の佐藤ゆりの個展「もうひとつの街」を見た。
岩手盛岡市出身の佐藤は沖縄県立芸術大学入学をきっかけに沖縄へ移住して6年になる。そんな彼女の目に映った沖縄の風景が描かれている展示だった。彼女は見慣れた街の風景、例えば宵闇に浮かぶモノレールやデパートの屋上など日常のシーンに自分自身を描き込む。鑑賞者は絵の前に立った時「この場所知っている、どこだったっけ」とまず考える。描かれているモチーフをヒントに記憶の中の風景から検索してその場所を探し出す。そして「なんだ、いつも通っていたあの場所だ」と気づく。あまりに見慣れた風景は意外に見落とされているものだ。

来場者が語る58号の思い出
作品『Goppachi』には国道58号沿いの宜野湾市大山にあるJimmyが描かれ、画材に布も使っているので重層的でぬくもりのある作品に仕上がっている。県外出身の佐藤にとって見慣れない外国の看板が並ぶ大山辺りの風景は新鮮で、そのうえ駒沢敏器の『アメリカのパイを買って帰ろう:沖縄58号線の向こうへ』を読んだ影響もあってjimmyのある風景を描いたそうだ。「沖縄の多くの人の中に存在する国道58号を描きたかった」と話す彼女が、作品タイトルを『Goppachi(ゴッパチ)』としたのにも愛情の深さを感じる。展示会では来場者がそれぞれの風景の思い出を語ったそうだ。

そんな懐かしい記憶に触れるオレンジとブルーのノスタルジックな色調のこの作品を、私はリビングに飾りたい。一人一人の記憶にある国道58号への思い出は語り尽きない。




『Goppachi』
P150号(2273×1620mm)40万円



『夜道へ放たれる』
沖縄に移住した最初の頃よく利用していたモノレールの奥武山公園駅。絵の中の佐藤は写真の転写技法で表現されている。
M100号(1620×970mm)25万円




『せわしなく過ぎる日』
(沖展2022 e-no新人賞受賞作)
那覇の太平通りの市場の様子。人々が集い活気のある雰囲気を多種類の布や色を使って表現している。
2000×1000mm 45万円

作家近況
沖縄県立芸術大学大学院 修士課程 造形芸術研究科在籍。この秋より台北芸術大学留学予定
【インスタグラム】https://www.instagram.com/yurrrrry_28/


もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1903号・2022年6月24日紙面から掲載


 

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本村ひろみ

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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