防災
2021年7月9日更新
[沖縄]防災・防犯特集③|保険のプロが語る「災害と補償」
火災保険の対象は「火災だけ」と思われがちだが、大雨などの「水災」や台風などの「風災」による被害も対象となる。自然災害で被害を受けた場合の対応について、事例をもとにしながら保険代理店の担当者に答えてもらった。専門家による防災のアドバイスも紹介する。
(株)琉球総合保険サポート
日常取り戻しやすい家財保険
保険部 玉城 翔平さん
事例① Aさん宅
被害箇所、状況
床や壁紙など建物への被害、テレビや棚など家財への被害
被害の原因
大雨による床上浸水
―被害の経緯は?
2019年6月の大雨でAさん宅の1階部分が床上浸水。床や家財に被害が出ました。保険で復旧したのですが、翌年5月の大雨で再び浸水。床上50㌢程度まで水が上がり、前の年よりも大きな被害となりました。
―どのように対応した?
どちらの被害も「水災」でしたので火災保険での補償となりました。支払われた保険金は、19年は240万円(建物損害230万円、家財損害10万円)、20年は1190万円(建物損害1080万円、家財損害110万円)でした。
―同じ状況になった場合へのアドバイス
契約内容によっては水害が対象外となることもありますが、火災保険は基本的に保険金請求の有無や回数によって、保険金額が減額されることはありません。現在の契約内容が不明でも、まずは保険会社か代理店に相談し、修復作業をしましょう。
損害は建物だけでなく、その中に収容されている家財にも及ぶことがあります。今回のケースのように、建物と家財の両方に保険がかけられていると、原状回復も早く、普段通りの生活に戻しやすいと思います。
自然災害や事故はいつ発生するか予測できないので、安心して日常生活を営むためにも、保険を上手にご活用ください。小さな負担で大きな補償に備えましょう。
写真は被害のイメージ。記事とは関係ありません
(株)RICKA
飛来物でも自分の保険で修理
代表取締役 大城 拓さん
事例② Bさん宅
被害箇所、状況
窓ガラスの破損、柵が破損して隣家の車に傷
被害の原因
台風(飛来物)
―被害の経緯は?
昨年、台風の強風による飛来物で、Bさん宅にある掃き出し窓のガラスが割れました。敷地を囲んでいたアルミ製の柵も飛来物で傷付き、倒れました。さらにその柵は隣家の車に傷を付けていました。
―どのように対応した?
Bさん宅の被害はBさんが加入していた火災保険から、窓ガラスに約10万円、柵に約40万円の保険金が出ました。
さらにBさんは「罹災時にかかる諸費用を受け取れる特約」も付けていたため、その金額も上乗せ。片付けにかかった費用も支払われました。
―同じ状況になった場合へのアドバイス
台風時の飛来物による被害は、「飛んできたものだから」と言って飛来物の持ち主に修理を請求することは基本的にできません。不可抗力とみなされるからです。そのためBさんの隣家の車への被害も、隣人の車両保険で対応することになりました。
しかし保険に免責金額が設定されている場合は、台風によってその金額を超える被害が出ない限り保険金は支払われないので注意が必要です。
そのほか、私は防災士の資格も持っているのですが、その視点から言えば、ガラスに飛散防止フィルムを貼ったり、台風接近前に物が飛んでいかないよう対策することが大切。自分と周りを守るためにも、保険と合わせてしっかり備えておきましょう。
写真は被害のイメージ。記事とは関係ありません
第一総業(株)
付帯物の保険かけ忘れに注意
保険部 親泊 忍さん
事例③ Cさん宅
被害箇所、状況
アパート屋上の太陽光パネルが飛散
被害の原因
台風(強風による破損)
―被害の経緯は?
3年前の台風24号による強風で、Cさんが経営するアパートの屋上に設置していた太陽光パネルが飛ばされました。
―どのように対応した?
Cさんに損害箇所の写真と修理の見積書を送ってもらい、保険会社で査定。火災保険の対象だと分かりました。ただ、この時はメーカー側の瑕疵保証で対応することになりました。
―同じ状況になった場合へのアドバイス
自然災害等による太陽光パネルへの損害は、メーカー側の保証対象外となることがあります。その場合は、太陽光パネルも保険の対象に加えておくことをおすすめします。
また、新築時に設置した太陽光パネルは、新築時に加入した火災保険に建物として含まれていることが多いのですが、後から追加で設置した場合、太陽光パネルに対する保険をかけ忘れていることがあります。付帯物も保険の対象となっているか確認しましょう。
被害発生時、片付ける前に写真を撮っておくのも大切。その際、被害箇所のみの写真と、空間全体の写真があると、被害状況や規模が分かるので査定も円滑になります。
一方、沖縄は地震リスクも意外と高い。地震被害を補償する地震保険は、どの会社で契約しても内容や保険料は同じです。当社は来年には創業50周年を迎えます。50年の実績もあるので、安心してご相談ください。
写真は被害のイメージ。記事とは関係ありません
「みんなの防災計画」執筆中の長堂さんに聞く
被害に遭う前にまず備え
長堂政美/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長
[長堂さんからのアドバイス]
・気象庁からの情報に注意して、早めの対策を!
・車が水没する被害も多数
・高台でも地形・道路・川の状況によっては浸水に注意
台風や大雨などによって家に被害が出た場合、火災保険の対象になるが、まずは被害に遭わないよう備えておくことが重要。
防災サポート沖縄の長堂政美さんは、「ここ数年、全国的に大雨特別警報クラスの災害が発生。大雨や台風への危機感が高まっている。気象庁は早い段階から注意を促すための情報を発信しているので、それを確認して備えて」と呼び掛ける。例えば早期注意情報は5日先までの警報の可能性を公開。暴風警報は実際に暴風となる3~6時間前に発表される。各情報を活用して事前対策、避難準備をしよう。
また、「消防現職の頃、浸水で車のバンパーまで水につかっているのも多々見てきた」と長堂さん。「車も家財の一つなので、大雨時は浸水しない場所に移動して」。台風時の高潮で低地帯が浸水するほか、「高台でもくぼ地といった地形、側溝や河川から水があふれることで建物が浸水する可能性がある。平常時のうちにハザードマップで自分の住んでいる場所の危険性を確認してほしい」。
今年5月から避難勧告は廃止、避難指示で必ず避難するよう変わった。「ただ、高齢者などは近所や地域の自主防災組織が支援しながら、『高齢者等避難』の前に避難することが大切だ」と話した。
2018年台風24号によって道路が冠水した沖縄市
・マフラーから水が浸入して車が止まる
・大雨時は浸水しない場所へ移動
・冠水など道路情報に注意
警戒レベル4「避難指示」が出たら必ず避難!
避難勧告は廃止、避難指示に統一されたことで避難のタイミングが分かりやすくなることが期待されている。警戒レベル4とは「危険な場所から全員が避難する」レベルで、大雨による土砂災害警戒、高潮警報などの気象情報が出された状況にあたる
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1853号・2021年7月9日紙面から掲載