MBギャラリーチャタン byザ・テラスホテルズ(北谷町)|HOTELに習う空間づくり[19]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2021年4月23日更新

MBギャラリーチャタン byザ・テラスホテルズ(北谷町)|HOTELに習う空間づくり[19]

当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。
今回はMBギャラリーチャタンbyザ・テラスホテルズの空間をクローズアップする。


新しいけど懐かしい
老舗ホテルの志を継承

MBギャラリーチャタン byザ・テラスホテルズ


緑のカーテン揺れる中庭

今月1日にオープンした「MBギャラリーチャタンbyザ・テラスホテルズ」は、新しいのに懐かしい。それは県内老舗ホテルの「志」が息づいているからだ。

木の天井や床を黒のサッシで引き締めたスタイリッシュなエントランス=写真1=の先に、緑の中庭が広がる。全9階すべてを貫く屋根無しの吹き抜けで、ポトスのカーテンが揺れる=3。まるで恩納村のリゾート「ホテル ムーンビーチ」のアトリウムのようだ。

それもそのはず、同ホテルはムーンホテルズ アンド リゾーツ(株)とザ・テラスホテルズ(株)が共同で手掛け、長年培ったリゾートのノウハウを落とし込んだ。

MBギャラリーチャタンの副支配人・崎山克さんは中庭を見上げ「この植栽はムーンビーチが誇る造園チームが、開業決定から2年をかけて育てた。だから、新しいホテルながらここに長く根ざしているような落ち着きがある」と話す。

風でつるがふわふわと舞い、晴れた日はやわらかな陽光が差し込む。雨が降れば緑が濃くなる。自然と一体となる造りは、「二つのホテルグループが大事にしてきたコンセプト。もちろんMBギャラリーも継承している」と伊佐ジャック支配人。

7階には西海岸に溶け込むようなインフィニティープールがある=4。「北谷らしいウオーターフロントが眼下に広がり、街中にいながら非日常が味わえる」



階のエントランスはシックな雰囲気。一つ一つ形の違う海外製のシャンデリアを、同じ形状の黒アイアンとガラスの箱に入れて空間に統一感を持たせている

客室へ向かうエレベーターの扉が開くと、目の前に広がるのがこの光景。緑の回廊とアートが飛び込んでくる。廊下が「ギャラリー」になっている

まるでムーンビーチのような中庭。ムーンビーチの造園チームが手塩にかけたポトスやシダ、モンステラやブーゲンビレアが彩る

「過ごす」空間を意識

客室へ向かうエレベーターの扉が開くと、緑の回廊とアートが目に飛び込んでくる=2。アートスペースや専門のディレクターを有するムーンビーチ同様、同ホテルもアートの展示に力を入れる。アートディレクターである角敏郎さん自身の作品や真喜志勉さん、フリオ・ゴヤさんなどの作品が緑の中で存在感を放つ。ロビーには、チェコの建築家であるアントニン・レーモンドが設計したピアノが鎮座する。

「内なる環境で勝負している」と話すのはザ・テラスホテルズ(株)シニアマネジャーの比嘉幹治さん。「ビーチに隣接しておらず、豊かな自然に囲まれているわけでも無い。造りや設備、植栽や調度品で開放感や非日常を演出している」

客室は、扉を開けると外へ視線が抜ける開放的な造り。「廊下も広く取ってゆとりを感じさせるようにしている。『泊まる』よりも『過ごす』を重視している」



7階には宿泊客専用のインフィニティープールがある。西海岸と一体に溶け込むような作り。那覇まで見渡せる
ホテルの玄関を入ると、茶・黒・緑が効果的に使われたロビーがあり、その先に中庭がある

同ホテルで一番広い「MBスイート」はLDKを有する。室内は飽きの来ないナチュラルテイスト

同室の玄関から奥を見る。廊下は幅120㌢と広く、アートが飾られている

フランク・ロイド・ライトと共に帝国ホテルを手掛けたアントニン・レーモンド設計のピアノがロビーに展示されている
客室はあえてレースを内側に設置。カーテンを閉め切ってもレースが圧迫感を和らげる

ベッドルームとバスルームとの間はガラス張りにして非日常を演出しつつ「ブラインドを設けてプライバシーを確保した」。さらに「カーテンを閉めても明るく感じられるよう、レースを室内側に設置している=9」

ホテル名の「ギャラリー」は回廊を意味する。伊佐支配人は「このホテルを起点に、人やアートとの出会い、そして街を回遊する楽しさを提案したい」と話した。


取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第181734号・2021年2月26日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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