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2021年1月22日更新

多様な顔持つ空間人や文化の「集合体」|HOTELに習う空間づくり[17]

昨年1月、国際通り沿いにオープンしたホテルコレクティブ。同ホテルは台湾有数のセメントメーカー「嘉新水泥」の新たな事業だ。

ホテルコレクティブ(那覇市松尾)


左が国際通り側、右が駐車場側の入り口。左側の家具は軽やかで明るい。右側は重厚感がある。それぞれの入り口から見えるインテリアによって空間の印象を変えている

多様な印象与えるロビー

昨年1月、国際通り沿いにオープンしたホテルコレクティブ。同ホテルは台湾有数のセメントメーカー「嘉新水泥」の新たな事業だ。第1号店として空間造りにもこだわった。

「歩いて訪れるとカジュアルに、車で訪れるとフォーマルに感じられると思います」と同ホテルの営業企画係長・石川恵理さんは話す。

国際通り側から来ると、アプローチにあるハートのオブジェに目を奪われる。そのインスタ映えスポットのそばを通ってロビーに入ると、シンプルで爽やかなソファが配されている。オシャレなカフェのような雰囲気だ。



奥が駐車場側の入り口。ロビーのテーブル配置は四つのエレメントに分かれている。火・風が駐車場側。地・水が国際通り側

裏にある駐車場側は、大きなシーサーが出迎えてくれる。中に入ると重厚感のあるソファや、深紅のカーペットが存在感を放つ。どちらも同じロビーだが、それぞれの入り口から視界に入るインテリアによって印象を変えている。

コレクティブには「集合体」という意味がある。石川さんは、「さまざまな人や文化がここに集まり、交流できる場所にしたいとの思いを込めています」と話す。



国際通り側のアプローチにある大きなハートのオブジェ。作者はドイツのLageman Rainer氏。「ハートフルなおもてなし」と、「ここは(玄関)ホテルの心臓部」という意味があるそう

ハートの〝映え〟スポットとともに来客がスマホを構える場所がある。ロビーから2階の宴会場へ続く階段だ。大きなシャンデリアがきらきらと光を放つ。「大小460個の蝶々と、数万個のクリスタルで形成されています」。大階段とシャンデリアは、クラシカルで格式の高さを感じさせる。

そんな個性的な空間の中に、紅型が展示されていたり、琉球ガラスが用いられていたり、やちむんが飾られていたりと「沖縄らしさ」も見られる。

​カフェのように立ち寄れる気軽さも高級感も。〝映え〟も伝統美も。さまざまな顔を持つ空間は、多様な人を受け入れる。


ロビーから2階の宴会場へ続く階段も“インスタ映えスポット”。シャンデリアには蝶々(ちょうちょう)があしらわれ、キラキラと輝く


「シティーリゾートホテル」

ロビーを見回すと、あちこち角が丸くなっている。この「曲面」の造りは、客室やバーなどホテル全館に踏襲されている。

客室は全260室。すべての部屋が30平方メートル以上ある。立地のわりにはぜいたくな広さだ。「コンセプトは『シティーリゾート』。アクセスの良さも、リゾートのくつろぎも両方を兼ね備えた造りです」。スタンダードな「スーペリアツインルーム」は、青を基調にした内装と曲面を多用した造りが相まってやわらかい雰囲気だ。

窮屈になりがちな入り口ドアのそばに大きな鏡を設置して奥行きを演出したり、ベッドの上部は天井が高くなっていたり、細部の工夫でさらなるのびやかさを感じさせる。防音設備もしっかりしていて、外の喧噪はほとんど聞こえない。国際通りにいることを忘れてしまう。



同ホテルのスタンダードルーム「スーペリアツイン」も広さが30平方メートルある。青を基調にした内装。同ホテルは全館を通して角が丸くなった造りが踏襲されている


写真左側は大きな鏡。入り口ドアのそばにこの鏡があり、窮屈になりがちな空間に奥行きを生む


バーにも曲面を多用。カウンター内部のシンクも曲線になっていて「施工は大変だったと聞いています」と石川さん。バーカウンター下部には琉球ガラスがあしらわれている


随所に紅型が飾られている。この着物は城間びんがた工房作。ほかにも知念紅型研究所、やふそ紅型工房の作品が展示されている

客室に飾られている写真はすべて同ホテルのオーナーが撮影した沖縄の風景

​人や文化が集合する場所。だからこそ、「さまざまな形の滞在を想定した造りになっています。地元の方にも気軽に利用していただきたいです」と話した。


窓がランダムに並ぶ外観


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1829号・2021年1月22日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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