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2020年9月25日更新
開放的な住まいで省エネも|気になるコト調べます![65]
地域の住文化を継承し、環境負荷の低減を図る気候風土適応住宅。国では2016年度から「気候風土適応型プロジェクト(サステナブル建築物等先導事業気候風土適応型)」として、地域のモデルとなる住宅を募集しており、これまで木造住宅が対象だった。20年度は鉄筋コンクリート造住宅も対象となり、県内から初めて2件のプロジェクトが選ばれた。気候風土適応住宅について、①その特徴と建物の省エネ性能の向上を図る「建築物省エネ法」との関連、②選ばれたプロジェクトを事例に沖縄の気候風土に適した具体的な手法を2回に分けて紹介する。今回は国のガイドラインを基に、気候風土適応住宅の特徴と省エネ基準の適合について紹介する。
地域の住文化継承する気候風土適応住宅①
地域の住文化を継承し、環境負荷の低減を図る気候風土適応住宅。国では2016年度から「気候風土適応型プロジェクト(サステナブル建築物等先導事業気候風土適応型)」として、地域のモデルとなる住宅を募集しており、これまで木造住宅が対象だった。20年度は鉄筋コンクリート造住宅も対象となり、県内から初めて2件のプロジェクトが選ばれた。気候風土適応住宅について、①その特徴と建物の省エネ性能の向上を図る「建築物省エネ法」との関連、②選ばれたプロジェクトを事例に沖縄の気候風土に適した具体的な手法を2回に分けて紹介する。今回は国のガイドラインを基に、気候風土適応住宅の特徴と省エネ基準の適合について紹介する。
気候風土適応住宅とは ◆地域の気候や風土に応じた住宅で、「建築物省エネ法」で定める省エネの基準をクリアすることが難しいもの ・地域の気候風土に応じた①空間構成・形態、②部材や工法、③地域資源を活用した材料や生産体制、④景観形成、⑤住まい方などの特徴が見られる住宅 ・地域でこれまで培われてきた住まいの文化や技術などが生かされる一方、断熱性や気密性といった性能が測りにくい ◆気候風土適応住宅と認められると、壁や窓の断熱性能の基準(外皮基準)適合が求められず、設備や家電などで消費するエネルギーの基準(1次エネルギー消費量基準)が緩和される |
空間や建材に特徴あり景観配慮も
2016年から施行されている「建築物省エネ法」は、国が定める省エネ基準を満たすことで建築物の省エネ性能の向上を図るもの。高気密・高断熱でエネルギー効率のいい建築物が求められている。一方で、例えば縁側のある木造住宅など、地域特有の伝統的な住宅は気密・断熱性が低く、現行の基準だけで省エネ性能を測ることが難しい。そこで設けられているのが気候風土適応住宅だ。地域の風習などに合った開放的な住まい方や気候に適した造り、周囲の景観との調和など、これまで地域で培われてきた住まいの文化や技術を生かしつつ、環境負荷の低減を図る。
気候風土適応住宅の特徴は次の五つ。①外の風を取り込む、日差しを遮るなど外の環境を生かす、または抑える工夫のある空間構成、②地域の気候に適した部材や工法の使用、③建材や職人など地域資源を活用した材料の使用や生産体制、④地域の街並みの維持や保全、⑤これまで地域で培われてきた暮らしを継承する住まい方である。
これらの特徴が表れる要素として、国のガイドラインでは県外の木造住宅を中心にさまざまな例を挙げている。そのうち沖縄にも関連するものとして、深いひさしや軒、縁側、大きな掃き出し窓、花ブロック、しっくい仕上げの壁などが挙げられている=下囲み参照。例えば、アマハジの空間はエアコンなどの設備に頼り過ぎずとも、自然環境を生かした住まいづくりにつながる。一方、開放的な造りは壁の断熱性や掃き出し窓の気密性など省エネの基準に合わせることが難しいため、気候風土適応住宅は同法で定める省エネ基準が緩和される。壁や窓などの断熱性能(外皮基準)の適合が求められず、冷暖房といった設備や家電などで消費するエネルギーの基準(1次エネルギー消費量基準)が緩和される。
次回(10月9日発行号)は国のプロジェクトに選ばれた事例から、県内で主流の鉄筋コンクリート造などで気候風土適応住宅となる具体的な手法などを紹介する。
気候風土に応じた住宅の特徴的な要素(一部)
◆深いひさしや縁側・大きな掃き出し窓(アマハジ)
深いひさしは日差しを遮り、前庭から風を取り込むアマハジの空間は、自然の心地良さが感じられる沖縄特有の住空間。上記①空間構成の特徴に含まれる要素。一方、外と内の境界があいまいで、断熱性能を測ることが困難
◆瓦屋根・花ブロック
沖縄らしい景観を特徴づける赤瓦や花ブロックは、沖縄の気候に合わせて昔から使われてきた建材で上記②部材や工法の特徴に含まれる要素
<気になるコト調べます!一覧>
取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1812号・2020年9月25日紙面から掲載