地域情報(街・人・文化)
2020年6月5日更新
海や歴史感じる丘陵のまち[北中城村喜舎場・仲順・和仁屋]
[歩いて見つけた!地域の住み心地-37-]北中城村喜舎場・仲順(ちゅんじゅん)・和仁屋の台地部は、海が見える高台の地域。旧集落の名残を感じる一帯もあれば、外人住宅を使ったおしゃれなカフェが集まる場所もある。3地域を通る県道81号線では渋滞緩和のために新たにトンネルを整備中。道路整備が進む一方で、丘陵の地形で宅地が少なく、高まる需要に追いついていないようだ。
エリアマップ
学校区3地域とも北中城小学校、北中城中学校
家賃
築10~20年が主流で家賃は2LDKで4万~5万円、3LDKは6万円ほど。新築で出たとしたら2LDKで7万円。駐車場は1台分確保されている場合が多い
土地の価格
坪当たり30万円前後
この地域を通るバス
52番(那覇市~沖縄市~うるま市)、61番(宜野湾市~沖縄市~うるま市)が県道81号線を経由。村営の観光周遊バス「グスクめぐりん」が実証運行中で、村役場や中学校前を経由、イオンモールや中村家、中城城跡など観光施設を回る
新しいトンネル整備の真っ最中!
開通するのが楽しみだルン♪
1北中城中学校近くから整備中の和仲トンネルを見る。現在はトンネル内の舗装や既存道路への結節工事が進められている。トンネルの名称は村民から募って選ばれたもので、「和して仲良く」という意味も込められている
新トンネルで渋滞緩和図る
坂道を上ったり下ったり、丘陵の地形が特徴的な北中城村。国道329号を走ると片側に海、もう片側には緑の丘が見え、自然の豊かさを感じさせる。特に喜舎場・仲順・和仁屋の台地部は、緑を残しながら丘の斜面に沿って住宅が建ち、場所によっては海が見える。
喜舎場・仲順は村役場や小学校・中学校などがあり、村行政の中心地。住宅地内の細い道路は旧集落の名残があり、カー(井戸)や拝所などの文化的遺産も多く、歴史を感じながらの散策が楽しめる。地域内にスーパーはないものの、大型ショッピングモールがあるライカム地区までは車で15分前後で行ける。
2喜舎場公民館付近の街並み。斜面を上るように住宅が並ぶ。道路は旧集落の名残があり、車1台が通れるほどの幅しかない。学校が近く小学生が安全に歩けるようにするためか、道路の一部が白く舗装されている
旧集落やアメリカ世の跡
仲順や和仁屋の台地部は海を望む眺望で、戦後につくられた米軍属向け住宅、いわゆる「外人住宅」が残る。古くても異国感のある建物をおしゃれに活用し、今ではパン屋やカフェなどとして利用されている。急な斜面地にあって木々に囲まれた隠れ家のような雰囲気も、店舗利用に好まれているのだろう。
3和仁屋の台地部から中城湾を望む。手前の建物はバプテスト教会。ちょうどこの下あたりにトンネルが通っている。丘の上は「外人住宅」が多く残り、カフェなどの店舗として利用されている。海側には和仁屋の住宅地が広がる
これら3地域を通る県道81号線(宜野湾北中城線)は、国道329号と国道330号とをつなぎ、地域だけでなく、本島内の物流や交通の上でも主要な道路だ。一方、道が細く慢性的な渋滞が課題。
渋滞緩和を目指したバイパス道路の整備として、和仁屋と仲順を通るトンネル工事が1999年から始まり、2018年に貫通。両地域の頭文字をとって「和仲(わちゅん)トンネル」と名付けられ、北中城中学校付近や渡口交差点あたりからその出入り口が見える。現在はトンネル内の舗装整備や今ある道路との結節工事が進められているそうで、開通まではもうしばらくかかりそうだ。
需要高いが物件は希少
トンネル開通などで移動がスムーズになるだろうと期待されるが、(有)青空住宅の城間勝太さんは「渋滞緩和は見込めるものの、地域への影響はそう大きくないだろう」と話す。丘陵の地形で平らな土地が確保できず、土砂崩れなどの災害危険性もあり、「地形の問題で宅地が少ないこと」が課題になっているようだ。「ライカム地区に商業施設などが建ってから需要は高まった。地元の人のほか、宜野湾市・沖縄市近辺よりも安い物件を探して来る人もいるが、さほど価格差はない」という。
3地域は昔からの居住地でアパート物件は少ない。学校に近い喜舎場・仲順はファミリー層からの需要が高く、「入居期間が長くなり、空きが出にくい状況」。物件は「築10~20年が主流。家賃は2LDKで4万~5万円、3LDKは6万円ほど。新築で出たとしたら2LDKで7万円」だという。「家賃が4万~6万円だと、借り手が決まるのも早い」といい、人気の高さもうかがえる。「宜野湾などより安い物件を求めて来る人もいるため、家賃が10万円台になると借り手がつきにくい。一方、和仁屋の外人住宅は店舗利用での人気も高く、家賃が高くても借り手がつくようだ」。
土地の売買動向は「個人間・業者間など水面下で動くのがほとんどで、一般に出回ることはほとんどない」。土地の価格動向は「10年ほど前は坪当たり25万円ほどだったが、近年では30万円前後での取引があるようだ。地価が高騰して地元の人が手を出せない。今は高止まり感があるが、新型コロナの影響もまだ読めない状況」と話す。
「北中城村内はほとんどが市街化調整区域で建築が難しい。道路整備などでさらに宅地の需要が高まれば、土地利用規制の緩和も求められてくると思う」と城間さんは話した。
北中城村島袋の物件
新築の広々3LDK
「あいにく3地域内の物件は人気があり、(同社の管理物件は)全て借り手が決まってしまった」と城間さん。同村島袋にある新築物件を紹介してくれた。島袋は沖縄市にほど近く、地域内のスーパー、ライカム地域へも車で5分と買い物に不便がなく「生活しやすい地域ですよ」と話す。
間取りは約15帖の広々としたLDKがとられた3LDK。家賃は共益費含め12万3000円。駐車場2台分無料。現在建築中で7月末に完成予定。問い合わせは(有)青空住宅(電話=098-932-1501)まで。
子どもの遊び場に文化財
旧集落のたたずまいを感じさせる喜舎場・仲順。特に喜舎場地域では子どもたちが遊ぶ公園や公民館近くに文化財がある。公民館となりのウブガー(井戸)には小魚が游ぎ、魚とりをする子どもたちの姿が見られた。斜面の上部にある喜舎場公園には集落の厄よけの石獅子が移設されている。子どもの頃から親しめる場所に文化財があると、地域の歴史をより知ることができるだろう。
編集/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1796号・2020年6月5日紙面から掲載