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2023年11月3日更新

相続したくない土地|不要な土地を政府が引き取る[失敗から学ぶ不動産相続⑳]

朝晩は少し冷え込みを感じ、月夜の晩になびくススキの穂が美しく映える季節となりました。ススキといえば農地。相続したものの放置している農地などはありませんか?

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相続したくない土地

不要な土地を政府が引き取る

朝晩は少し冷え込みを感じ、月夜の晩になびくススキの穂が美しく映える季節となりました。ススキといえば農地。相続したものの放置している農地などはありませんか?


負担の多い農地や山林

過疎地域の農地や山林など土地利用のニーズが低い地域では、「土地を相続したくない!」「有料でもいいから手放したい!」という方が増えています。

現実問題として固定資産税などの金銭的負担はもちろん、草刈りなどの管理を怠ったがゆえに発生した不正利用や事故など、所有者が責任を負わなければならないこともあります。また売却しようにも値段がつかず、なかなか売れないこともあります。

この場合に相続放棄を検討される方もいらっしゃいますが、財産の一部のみを放棄することはできないので、他に相続したい財産がある場合は相続放棄を選択するのは悪手と言えます。また、不要な土地を含めた全財産を相続放棄する場合、次の順位の相続人が相続することになります。相続される土地が次の相続人にとっても不要であり負担を強いる財産であった場合、親族間のもめ事の火種となる可能性もあるので慎重に判断する必要があります。


建物ある土地はNG

このような不要な土地を国が引き取る制度「相続土地国庫帰属制度」が今年の4月から始まりました。一定の要件を満たす土地であれば、審査を経た上で国が有料で引き取ることになります。

しかし土地であればなんでも引き取ってもらえるというわけではありません。例えば、建物のある土地、土壌が汚染されている土地、境界があきらかでない土地、所有権について争いがある土地などは、審査を申請することすらできません。また審査で承認されたとしても、国に20万円から100万円を超える負担金を納める必要があります。


管理困難なら制度利用を

今回の相談者の場合、安易な気持ちで離島にある農地を相続しましたが、管理を怠ったことで不法投棄などの対応責任を負うことになってしまいました。再発を防ぐためにも定期的な草刈りなどを行わなければなりませんが、その費用負担も少なくはありません。土地は所有するだけで責任と負担が発生する財産なのです。

将来的に使う予定がなく、管理が難しい土地を相続した場合には本制度の利用の検討をお勧めします。ぜひ専門家へご相談ください。

 
【概要と経緯】
相談者は被相続人の長女。相続する母名義の財産は、自宅の土地・建物と離島の農地。離島の農地は誰も耕作しておらず相談者も農業を行う予定がない。そのため本当は相続したくなかったが、いつか売ればいいだろうと考えてそのまま全て相続した。
 


【どうなったか?】
相続した農地の近隣に住む住民から「草木が伸びきっている農地に不法投棄がされている」と苦情がきた。相談者自身が離島まで行くのは難しかったので業者を手配して対応したが、多額の費用がかかってしまった。売却しようと不動産会社に依頼したものの購入する人が現れず、今も毎年草刈り費用の負担が重くのしかかっている。

 
【今回のポイント】
・土地は所有するだけで責任と負担が発生する財産
・国に引き取ってもらうには一定の要件を満たすことが必要
・まずは売却可能かどうかを不動産会社へ相談
・売却が難しいようなら制度の利用を前提に専門家へ相談


用語説明
「相続土地国庫帰属制度」
相続または遺贈(遺言によって相続人以外に財産を相続すること)によって、宅地や山林、農地などを取得した者が、一定の負担金を納付することを条件に不要な土地だけを国に引き取ってもらう制度。すべての土地が対象ではなく、一定の要件を満たす必要がある。




[執筆者]
ともりまゆみ/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。
電話=098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1974号・2023年11月3日紙面から掲載

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