相続
2022年11月4日更新
[沖縄]土地と建物の名義が異なる底地|失敗から学ぶ不動産相続⑧
朝晩涼しくなり過ごしやすい季節になりましたね。食欲の秋! 睡眠の秋! とともに、身辺整理の一環として所有する財産の情報整理を始めるにはいいタイミングです。慌ただしい年末が来る前に、終活を始めてみませんか。(文・ともり まゆみ)
土地と建物の名義が異なる底地
借地契約条件を明確に
朝晩涼しくなり過ごしやすい季節になりましたね。食欲の秋! 睡眠の秋! とともに、身辺整理の一環として所有する財産の情報整理を始めるにはいいタイミングです。慌ただしい年末が来る前に、終活を始めてみませんか。納税資金が足りずに土地売却
「土地は地主名義、建物は第三者名義となる借地契約が存在する土地」を【底地】といいます。相続時の底地の取り扱いについての相談は毎年増えており、そのほとんどが50年前後以前に締結された借地契約です。時代的に、口頭契約で契約書が存在しない契約や、契約書があったとしても内容的に不十分な契約も多くあります。
また、1992年7月31日までに締結された借地契約には旧借地借家法が適用されるため、地料の増額や契約の更新について地主にとって不利な内容となっています。例えば、地料の増額については増額の根拠を示すとともに借地人の合意が必要となりますし、借地期間の更新は地主に正当事由がない限り拒絶することはできません。契約終了時、借地人に建物の解体費用などを請求することが難しい場合もあるようです。
このように地主にとって活用がしづらい底地ですが、相続税評価額は予想以上に大きくなる傾向があります。そのため、今回の相談者のように納税資金の準備ができず、やむを得ず売却する方もいらっしゃいます。
【概要・経緯】
相談者は被相続人の長男。父である被相続人が所有する財産は自宅土地建物、他人に借地として提供している500坪の底地、そして現金1000万円ほどだった。
底地の年間の借地料は100万円に満たないものだっため、底地には資産価値がないと考えており、相続対策などは行っていなかった。
相談者は被相続人の長男。父である被相続人が所有する財産は自宅土地建物、他人に借地として提供している500坪の底地、そして現金1000万円ほどだった。
底地の年間の借地料は100万円に満たないものだっため、底地には資産価値がないと考えており、相続対策などは行っていなかった。
【どうなった?】
相続が発生し、相続税を計算してみると、相続税が3000万円かかると判明。納税資金をつくるために底地の一部を借地人に売却することを検討したが話がまとまらず、やむを得ず底地全体を第三者に売却。納税時期までに現金化する必要があったため、相談者にとって非常に不利な売却となってしまった。
【どうすべきだった?】
・相続税がいくらかかるかを 事前に専門家へ確認する
・借地人と借地契約内容(期 間、地料増減、利用の制限) について確認する
ご先祖さまから受け継いだ土地を、希望に沿わない形で処分せざるをえない状況にならないためには、どうしたらいいのでしょう。
まずは底地を含む財産に相続税がいくらかかるのか、専門家に確認してください。相続税の額が分かると、対策方法の選択肢を複数持つことができます。
次に借地契約書がある方はその内容の確認、無い方は記録や登記簿から借地期間や借地人の確認を行ってください。その上で借地人と借地契約の終了について協議を始め、その内容を書面化してください。前述したように旧借地借家法は地主にとって不利な内容が多くあるため、面識のある契約当事者が元気なうちに話すことがとても重要となります。
双方が納得する形で借地契約終了の取り決めを行えば、子や孫も安心して底地を相続することができます。大事な財産である不動産を守るためにも早めの対策をおすすめします。
用語説明
「底地」
第三者が建物(自宅や店舗事務所など)を建てるための土地を地主が賃貸借した場合、そこには借地権が発生する。この借地権が設定された土地を底地と呼ぶ。底地には借地人を保護する借地借家法が適用されるので、貸主である地主の利用は大きく制限される。
[執筆者]
友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。☎098・988・8247
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1922号・2022年 11月4日紙面から掲載