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2022年8月5日更新

[沖縄]もめやすい共有名義|失敗から学ぶ不動産相続⑤

家族が集まりやすい旧盆の時期は、相続について話し合うチャンス。不動産が相続財産のメインになりがちな沖縄の場合、共有名義にすることで、もめてしまうケースが散見されます。
(文・ともり まゆみ)

もめやすい共有名義

現金化や家族信託で平等に

子の価値観はそれぞれ異なる

まず大前提として「不動産の共有名義はもめやすい」ことをお伝えしておきます。

親から見ると、子は大人になってもみんなかわいく、自分亡き後も兄弟姉妹仲良く助け合って暮らしてほしいと願うもの。

しかし子どもたちは、独立や就職、結婚などで物事の優先順位も価値観も大きく変化した大人です。親というリーダーが不在になった時、人生に関わる財産について意見がぶつかることは自然と言えます。子の幸せを願って残した財産で、兄弟姉妹が決裂して不幸になるのは本末転倒です。

【概要・経緯】

相談者は被相続人の長女。3年前に母が死亡し相続が発生。財産は自宅の土地建物と、築40年のアパート、貸地。遺言書はなかったが、生前母が話していたことから、自宅の土地建物は母と同居していた長男が相続。アパートと貸地は長男以外の姉妹弟で所有し、そこから生まれる収益を分け合うことになった。
 



【どうなった?】

アパート経営や貸地の管理方法などについて姉妹弟間で意見が合わず、何かともめた。特にアパート経営は、大規模修繕をして建物の寿命を延ばしたい長女と、売却して現金化したい次男が険悪な仲に。板挟みの次女は自分の持ち分のみ売却することもできず、それぞれが疎遠に。アパート経営は悪化の一途をたどった。
 

【どうすべきだった?】

・不動産資産がメインの場合、平等な相続は難しいことを理解する
・不動産を売却し現金化することで財産が分けやすくなり、もめづらくなる
・共有名義のまま収益分配したいなら家族信託の活用も検討。

 
不平等なのは承知で相続させる

相続財産のメインが不動産の場合、平等に相続させることは非常に困難。不動産は一つ一つが唯一無二だからです。例えば今回、アパートと貸地が同じ道路に面した隣同士の100坪の土地だったとしても、その価値や活用方法にはかなり違いがあります。そのため不平等なのは承知の上で、誰にどの財産を相続させるか決める必要があります。

相続する財産をもめやすく分けづらい不動産から、もめにくく分けやすい現金に変えるのも一つの方法。相続税対策の観点から、一度、不動産のまま相続させる場合には、「当該不動産を誰が主導で、いつまでに売却し指定の割合で分けること」といった内容を遺言書に書き記すことも有効です。
 

もめないことを優先に考える

不動産から生まれる収益を分配したいなら「家族信託」の設定がおすすめ。名義は共有するものの、生前に「運用・管理の権限を誰が持つか」「売却の期日や処分方法」などを指定しておくことで、収益を発生させながら、もめにくくなるのが特徴です。

今回なら「アパートと貸地を長女・次女・次男(委託者)の共有にし、管理や運用は長女(受託者)に一任、収益は長女・次女・次男(受益者)で分ける。一定期間がたったら売却し、売却益を長女・次女・次男で分ける」という内容の信託契約を締結することで、もめずに収益を分配できます。

よほどの資産家でない限り、不動産の相続対策は税よりも「もめないこと」が優先です。専門家も活用しながら対策していきましょう。



[執筆者]
友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。☎098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1909号・2022年 8月5日紙面から掲載

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