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2020年1月10日更新

2階に玄関 居間は二つ|アトリエ・ネロ

[お住まい拝見|実家建て替え3世代同居]築45年余の夫人の実家を建て替えたOさん(48)一家。道路との高低差を生かして玄関は2階に、居間は二つ設けることで、同居する夫人の母もOさん親子も気兼ねなく過ごす。

国道から見た外観。最大2メートルある高低差を生かしたコンパクトな2階建て。夫人の母が出入りしやすいよう道路に面する2階に玄関を設けた。駐車場前に茂るパッションフルーツが通りからの目隠しに。土いじりが好きな夫人のため駐車場脇に花壇や植栽スペースも設けた


安心もプライバシーも

Oさん宅
RC造/自由設計/家族5人
枝を伸ばすパッションフルーツが、通りからの眺めに潤いをもたらすOさん宅。ポーチ脇の花壇では、夫人が手入れする草花が来客を出迎える。

玄関扉を開けた先は2階だ。家は車通りの多い国道沿いに建っているものの、階段室との間の折れ戸や引き戸を閉じれば「夜でも音はほとんど気にならない」とOさん。その2階に、夫人の母親の居室とLDK、和室、水回りを配置。1階には夫婦が音楽を聴いたりくつろぐもう一つの居間や個室、釣り好きなOさんの道具置き場兼作業場となる土間を設けた。


2階玄関から室内を見る。正面のLDKとの間の引き戸や階段側の折れ戸を開け閉めすることで、光や風、音の入り具合を調整できるようになっている

普段はOさんが家事を担当。「子どもたちが帰宅して食事をしたりテレビを見ながら一息ついた後は、1階でお酒を飲んだり休んだり。義母とは生活時間が違いますが、お互いの顔も見えるしプライバシーも守れています」

建て替えを決めた当初は、棟を分けた分離型の2世帯も考えていたものの、「コストもかかるし義母にはメンテナンスも大変なので同居することに。いずれ子どもたちが巣立つことを考えると家族5人でちょうどいい」と笑う。

2階南側から見たLDK。杉板を張り柿渋を塗って仕上げた天井や床、漆喰壁が、落ち着いた雰囲気を醸しだす。同居する母親の暮らしやすさを考え、正面のキッチン右手に母の個室、左手に水回りを設けた。



水回りから見た2階。南側に大きくとった窓のおかげで明るく、風通しも良い

DIYで使いやすく
室内で目を引くのが、Oさん手製の棚類だ。キッチンとダイニングテーブルの間を仕切る食器棚は母親の背丈に合わせて設置。両側から物を出し入れできるので使い勝手は抜群だ。子どもたちの荷物入れやテレビボード、1階土間にある観葉植物の飾り棚やリール置き場なども手作りした。

「引っ越しも何度かしましたが、既製品だと大きさを変えられないので不便。自分で作れば住む場所に合わせられるし、再利用しやすいように作れますしね」とOさん。家造りの際も、親せきや建築士らと一緒に床や建具など木部へ柿渋を塗り、漆喰(しっくい)壁も自分たちで仕上げた。「建築士さんは友人宅に関わった方を紹介してもらいました。いろいろ聞いてくれるカンジが決め手でしたね」と振り返る。

建て替えた住まいに3世代で暮らして2年。手入れの行き届いた室内や、さりげなく飾られた庭の草花に、丁寧な暮らしぶりがうかがえた。


1階の東側土間から室内を見る。中央に見えている小上がりの板間がOさん親子がくつろぐ第2の居間。Oさんが欲しかったという土間は、趣味の釣り道具を収納したり作業したりと大活躍


ここがポイント
第2の居間で程よい距離
敷地は西側の前面道路と最大2メートル高低差があり、三方を隣家に囲まれている。「以前は敷地奥に木が茂っていたこともあり、水たまりができていた」とOさん。

課題は①プライバシーの確保と防音②湿気を防ぐ③母親が暮らしやすく、Oさん親子と程よい距離が保てるコンパクトな造りの3点。そこで建築士の根路銘安史さんと水上浩一さんは、高低差を利用した2階建てを提案した。「母親の居室や家族が使うLDK、水回りは風通しの良い2階に設け、道路からも出入りしやすくした。道路側は自重で土留めするトンブロックでよう壁代わりに。建物との間に設けたドライエリアが湿気をたまりにくくし、国道からの視線や音を遮る緩衝空間にもなる」と説明する。

生活リズムの違う3世代の暮らしやすさを生んでいるのが、1階に設けた第2の居間。「母親と同居でLDKも共有となると互いに気をつかうし、個室にこもりがちになることも。そこで子世帯がくつろぐスペースを作り、程よい距離を保てるようにした」。当初は2棟建ての完全分離型も検討していたが、「この大きさだと、設備費が倍かかるだけでなく居室として使えるスペースも狭くなる」と話す。

当初より「やれることは自分で」との一家の意向もあったため、家具工事を減らし、木部の柿渋塗りや漆喰壁も施主らとDIY。建物は道路側に寄せ、北側は駐車場や夫人が希望する畑として活用できるようにした。


1階子ども室。2室に仕切れるようになっているが、現在はつなげ長男が使っている。1階はコストとの兼ね合いもあり天井は打ち放しに。右手に見える棚もOさんのお手製


居室側から見た玄関。玄関扉の左手のすりガラスは、外からの視線を遮りつつ光を取り入れるだけでなく、通りに人の気配を伝える効果もある


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人、母親
敷地面積:600.28平方メートル(181.58坪)
1階床面積:74.56平方メートル(22.55坪)
2階床面積:84.31平方メートル(22.5坪)
建ぺい率:17.55%(許容67.09%)
容積率:26.47%(許容170.93%)
用途地域:第二種住居地域
     第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設  計:アトリエ・ネロ 
     根路銘安史、水上浩一
構  造:Lifetect一級建築士事務所 宮里
施  工:(有)匠建 仲与志
電  気:松島電気工事 竹島
水  道:(有)龍設備 稲福
ガス・キッチン・UB:沖縄協同ガス(株) 並里
玄関扉:まっくるや工房(伊礼聡・新垣範雄)


[問い合わせ先]
アトリエ・ネロ
098-889-0103
http://www.a-nero.com


撮影/比嘉秀明 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1775号・2020年1月10日紙面から掲載

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