お住まい拝見
2018年10月5日更新
大空間で緑も身近に|プラソ建築設計事務所
[お住まい拝見・仕切らず広々自由度高く]「緑と調和した建物が好き。仕切らず広々と造りたかった」と話すWさん(50)。2面の大開口で室内外がつながる住まいは、「手を加える楽しみがある」とほほ笑む。
1階キッチンからLDK、玄関を見る。キッチンはコンクリート製。正面の玄関側と南側(写真右手)、2面が大きなガラス窓になっていて、庭の緑が身近に感じられる
手を加え変化楽しむ
Wさん宅
RC造/自由設計/家族2人
東京から夫人(38)の故郷・沖縄に移住したWさん夫妻。亜熱帯の樹木が伸びやかに育つ庭の中央にたたずむ2階建ての住宅。居室は1階にLDKと水回り空間、2階に寝室の3部屋のみで、玄関のある東側と南側に大きな窓を設けた開放的な造りが特徴だ。
「緑に囲まれ、広々と暮らすことが希望でした。1階は大きな窓がたくさんあるから室内外が一体的で、緑も身近に感じられます」とWさん。玄関土間とLDKを仕切るのは、花ブロックを利用したヒンプン壁。「沖縄の雰囲気をどこかに加えたくて。外からの目隠しにもなっています」
北側の壁面に書斎コーナーと収納をまとめたLDKは、約26畳の大空間。「必要に応じて家具や布で仕切るなど、その時々でいかようにも使い方が変えられます」
キッチンは夫人のアイデアでコンクリート製に。カウンターやプランタースペースも設けられ機能的だ。「緑と融合できるキッチンが欲しくて。プランタースペースには、野菜やハーブも植える予定です。飽きたらペンキを塗ったりタイルを貼ったり、自由に着せ替えできるのもいい」と夫人。
空間の使い方も室内のしつらえも、「手を加えていく楽しみがあります」と夫妻は口をそろえる。
1階の土間からLDKを見る。北側(写真右手)の壁一面に、造りつけの書斎コーナーと引き戸式の収納をまとめてスッキリ。収納スペースにはテレビや仏壇も収められている
ガラス窓を多用した玄関。花ブロックを使ったヒンプン壁は、外部からの目隠しにもなっている
地域とつながる
「海が見える所に住みたい」と2年ほど土地を探し、読谷村で現在の敷地に巡り合った。東京と沖縄を行き来しながらの家づくり。「地元の方とのつながりができればと、読谷ですてきなデザインをされている建築士に設計を依頼。施工も地元の会社です」とWさん。
旅先の東南アジアで感銘を受けた緑と調和したホテル建築に、沖縄らしさをミックスした住宅を希望した。「沖縄のコンクリート住宅は、デザインが多彩で面白い。玄関がない昔ながらの開放的な造りも取り入れてもらいました」
遠景に海を望む屋上で、ビールを飲みながら沈む夕日や花火を眺めるのが楽しみ。「庭の一角で野菜を作ったり、植栽の手入れをするのがこれからの楽しみ。木々が生い茂るのが待ち遠しい」とWさんは目を細めた。
ここがポイント
内外つなぎ開放感生む
敷地は、道路や隣地と1.5メートルほど高低差がある角地。東側に接する道路は交通量が多く、北側と西側には隣家が立つ。建築士の小林志弘さんは、建物を敷地中央に据え、道路や隣地との間に植栽スペースと駐車場を配置することで、プライバシーを守りつつWさん夫妻が希望した「緑に囲まれた暮らし」を実現した。
「予算内で、できるだけ広く開放的な空間を造り、樹木の成長などと重ね合わせて家族の成長を感じられる住まいを目指しました」と小林さん。
建物の構造は、柱と梁(はり)で荷重を支えるラーメン構造を採用。非構造壁はコンクリートブロックを使うことで、建築コストを省いた。梁は逆梁にして、室内への張り出しをなくすことで天井はフラットに。屋上には外断熱を施した。さらに天井懐もなくし、できるだけ天井を高く取ることで、開放性が増した。
部屋はLDK、水回りの部屋、寝室の3部屋に厳選し、仕切りのない大空間に。工事費削減のため内部はできるだけコンクリート直仕上げにし、キッチンも鉄筋コンクリートで製作した。
「コンクリートは自由な形が作れるのがメリット。キッチンは部屋を広く使えるよう食卓カウンターを兼ねた造りにし、プランターを置くスペースも設けました」
庭とのつながりを考慮して、1階は東、南の2面に大きなガラス窓を採用。ふく射熱を軽減するため、将来できるだけ大きな木で覆われるように植栽業者と庭木も選定した。
2階の寝室。大きな窓を設け、屋上テラスが一体的に利用できるようになっている。「向かいの森の緑もいい借景になっています」と夫人
東と南、2面の大きな窓が目をひく外観。庭の緑に映える青みがかった白の塗装は、夫妻が県内の新築住宅をあちこち見て回って決めたという
1階の水回りは、浴室、洗面、トイレが一部屋にまとまっている。木製ルーバーを用いた風庭があるため、換気をしながら開放的に使える
[DATA]
家族構成 :夫婦
敷地面積 :451.90平方メートル(136.7坪)
1階床面積:76.56平方メートル(23.16坪)
2階床面積:26.94平方メートル(8.15坪)
建ぺい率 :16.94%(許容60%)
容 積 率:31.31%(許容200%)
用途地域 :都市計画区域未指定地
躯体構造 :鉄筋コンクリート造 ラーメン構法
設 計 :プラソ建築設計事務所 小林志弘
構 造 :U-An建築士事務所
施 工 :(株)沖秀建設
電 気 :(有)三友電水工事社
水 道 :(有)名設
キッチン : MOV
植 栽 : HADANA
[問い合わせ先]
プラソ建築設計事務所
098-989-0222
http://plaso.jp/
撮影/比嘉秀明 ライター/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1709号・2018年10月5日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。