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2016年3月4日更新

食卓に弾む声今も|美音Space Design(株)

建築士の比嘉伝英さん(54)の住まいは両親と同居し、姉世帯もある二世帯住宅。1階ダイニングの吹き抜けは2階で過ごす両親の気配を伝え、適度な距離感と安心感を生んでいる。3年ほど前からは和室やキッチンなども改装。にぎやかに集う住まいは今も変わらない。

吹き抜けが生む家族のつながり

比嘉・高良さん宅 RC造/自由設計/築20年


前回の取材と同じ位置から撮った1階ダイニング。ブビンガ材の重厚なテーブルを囲み、ワイワイと大勢で過ごすことが多い。吹き抜けは1階で過ごす比嘉さん家族、2階寝室(上部奥)で過ごす両親の気配を伝える


2000年当時の1階ダイニング


沖縄県本島北部、名護市場商店街に建つ、コンクリート打ち放しの3階建て。室内は、部屋の床を半階ずつ高くしたスキップフロアになっている。1階と中2階・2階に比嘉さん家族と90代の両親、3階に姉の高良さん夫妻が暮らし、各世帯は外階段でつながる。
カラフルな琉球ガラスがはめ込まれた玄関ドアを開け、小上がりの1階ダイニングへ。以前はリビングとの兼用だったが、集いの場を充実させたいと、3年前からもっぱらダイニングとして使っている。食材を持ってやって来た友人家族と共に大きなダイニングテーブルを囲んでは、ワイワイと鍋をつつく。

にぎやかな声は、吹き抜けを通して2階寝室の両親にも伝わる。両親の部屋は以前、1階和室だったが、来客に気兼ねさせたくないとの思いやトイレが近いことから2階に移った。「にぎやかな方が両親もほっとするようです。両親の様子は声やせき払いで1階で過ごす私たちにも伝わるので、安心します」と比嘉さん。


新しい提案の仏壇

50歳を過ぎて今後の人生を考えるようになったのが、自宅を改装するきっかけだったという。その範囲は、1階の和室やキッチン、2階のカウンターにまでおよぶ。中でも和室の仏壇は、すりガラスに間接照明、真ちゅうの塗装で仕上げたオリジナルだ。「アクセサリーのショーケースのように、おしゃれで明るい仏壇があってもいいかと思い自宅で実践。両親も喜んでくれました」。

比嘉・高良さん宅は20年前、老朽化した実家を建て替えてできた。両親は一つ屋根の下、大家族でワイワイ暮らすことを望んでいたという。「子育ては大家族で住み慣れた地域でしたかった。那覇から移り住んで正解でした」と建築当時を振り返る。

「家の物を断舎離し、家具も長く使える良質な物に買い替えました。子どもにはいい状態で家を引き継ぎたいから」と比嘉さん。姉世帯との積立金で、外壁の補修も予定している。

時をへて、家族の暮らしが住まいに根付くとき、かけがえのない宝物に変わる。


2階両親寝室から1階ダイニングを見下ろす。フィックス窓からはパティオの緑が見える。左上は両親の食卓でもある2階カウンター


1階和室。オリジナルの仏壇は、すりガラスと間接照明、黄金色の壁や天井は真ちゅうを塗り仕上げた


右写真/1階キッチン。レイアウトを変え、作業スペースを広げた
左写真/仏壇の背面に設けた収納。食品庫になっていて、キッチン周りをすっきりさせるために設けられた



北側から見た外観。新築当時に前庭に植えたクロキが背丈を伸ばす。近々、外壁のクリア塗装を予定している




比嘉・高良さん宅を印象づける、吹き抜けのパティオとスキップフロア。将来的に建物が密集しても光と風を室内に取り込み、2世帯分の居住スペースを確保するための工夫だ。子どもが独立した現在、個室の使い方を変更。キッチンや和室など、快適さを高めつつ、年季の入った空間に調和させる改装も目を引く。



現在の平面図(比嘉さん宅の変遷)


1階                              2階

※3階高良さん世帯、屋上の図面は割愛


【改装】キッチンのレイアウトをⅡ型からL字型に。仏壇背後には食品庫も
     リビング・ダイニング→ダイニング専用に

     両親寝室→子ども室に

【改装】廊下に造り付けていた本棚を取り払い、両親の食事を取るカウンターを設置
     子どもの寝室→夫婦寝室に
     夫婦寝室→両親寝室に
     子どもの寝室→リビングに

【改装】昨年末に仏壇を一新。壁を楽器のディスプレースペースに​




断面図



設計者・比嘉伝英さんに聞く

年季入った空間と調和

自宅の設計では、パティオとスキップフロアを取り入れました。
理由は
①細長い敷地で私たち家族と姉家族の居住スペースを確保するため
②周辺に大きな建物ができても、採光や通風の影響を最小限に抑えるための二つ。

吹き抜けのパティオを囲むように居室を置き、各階に光と風が行き渡るよう配慮。敷地北側に設けた前庭、南側の裏庭もミソで、建物密集地ながら緑が楽しめる憩いのスペースにしました。スキップフロアは、階段の省スペース化が狙い。内階段の上に外階段を配置し、各世帯の居住スペース、駐車場も確保できました。

一方、3年前からの改装では、室内をすっきりさせ、年季の入った空間に調和するよう配慮。L字型のレイアウトで作業スペースを広げたキッチン、間接照明で明るくも、深い色合いで仕上げた仏壇が、その例です。
住む人同士、住まいと地域、自然がつながり、ハーモニーを奏でる設計。自宅はその原点です


玄関。半円形のフィックス窓からは、センネンボクの赤紫の葉が見える


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人、両親(比嘉さん世帯) 夫婦(高良さん世帯)
敷地面積:165.28㎡(約50坪)
1階床面積:77.18㎡(約23.3坪)
2階床面積:126.61㎡(約22.5坪)
3階床面積:96.62㎡(約29.2坪)
建ぺい率:58%(許容80%)
容積率:172%(許容400%)
用途地域:商業地域(建築当時)
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:美音Space Design㈱ 比嘉伝英
キッチン・仏壇・カウンター:㈲MOV(モブ)
完成時期:1996年

[設計・問い合わせ先]
美音Space Design(株)
0980・54・4500
 http://www.bionsd.co.jp
写真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編集/我那覇宗貴
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1574号・2016年3月4日紙面から掲載

 

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