お住まい拝見
2017年12月15日更新
南仏を感じるRC造|アトリエPAD一級建築士事務所
[お住まい拝見・木の温かさプラス おしゃれに]カントリー調の雑貨が好きなUさん宅は、南仏風をイメージした鉄筋コンクリート造平屋建て。天井の木の梁が印象的な室内にはお気に入りの雑貨を飾り、少しずつ手を加えながら暮らしを楽しんでいる。
1階のLDKは、Uさんお気に入りの雑貨がさりげなく飾られた温かみのある空間。キッチンの側面にレンガ調の壁紙を張ることで、温かみのある雰囲気を高めた
空間を楽しくアレンジ
Uさん宅
RC造/自由設計/家族3人
嘉手納町の高台。緑の残る住宅地の一角にUさん宅はある。白壁とフランス瓦の屋根が印象的な住宅は、南仏風のイメージで設計してもらった。「家を建てるなら南仏風と決めていた。庭に出ていると、ご近所さんや通りがかった人が『いい雰囲気。見学したい』と声を掛けられるので、交流の輪が広がっています」とUさんは楽しそうに話す。
リビングからダイニングとキッチンを見る。写真左手の掃き出し窓の外にテラスがある。右手は2畳の和室。小上がりになっているため、ベンチ代わりにもなる
家族は主にガレージから出入りする。ガレージと玄関の間に大きめのシューズクロークが設けられていて、「玄関がきれいに保てるので来客時も慌てずに済む。シューズクロークの上部は屋根裏収納にしてもらいました」。
室内はLDKを中心に北側に和室と水回り、西側に寝室、南側に子ども室とテラスが並ぶ。夫妻が希望した大きなテラスに面したLDKは明るく、風通しも良い。キッチンは家族で使えるようアイランド型に。その背後に水回りがまとまっているから、「家事もスムーズで、ストレスがない」。
キッチンパネルには、Uさんがレンガ調の壁紙を張った。「部屋の写真を撮って、少し寂しいなと感じた部分に好きな雑貨を飾ったり、アレンジをいろいろ楽しんでいます」。中3の長女もインテリアや雑貨に興味を持つようになり、親子で空間づくりを楽しむ。
夫への感謝と共に
結婚当初から、「10年ほどをめどに家を建てたい」と資金をため、雑誌や新聞を見て家づくりを勉強した。Uさんの父親から土地を譲り受け、夫が新聞で見て心に留めていた欧風住宅を多く手がける建築士に設計を依頼した。
建築費を抑えるために、キッチンや照明、タイルなどは自分たちで探して調達した。「品選びに時間はかかったけど楽しかった。内装はすべて大工であるおじを中心に、夫と知り合いの手で仕上げました」。
暮らし始めて2年半。「この家を遺してくれた夫に感謝しています」と、Uさんは思いを語る。
テラスの先に広がる庭の一角に家族で手作りした花壇を手入れするのが、Uさんの楽しみの一つだ。「芝刈りは中1の長男の担当。子どもたちと一緒に、この家を大事に育んでいきたい」とほほ笑んだ。
キッチン。「自分が使いやすいパーツを選んで組み合わせたので、すごく使い勝手がいい」とUさん。床材はタイルだが、床板を張った上に敷いているため、足あたりが柔らかい
ここがポイント
緩やかに視線を遮る
LDK前のテラスは、幅5.7メートル、奥行き3.75メートルと広々。瓦を乗せたアマハジ風の深いひさしが、屋内への日差しを遮る。芝を張った庭には、コンパクトな花壇を手作りした
Uさん宅の敷地は、東側と南側、2面を道路に接する角地。そのため、夫妻が希望した南仏風のイメージを大切にしながら道路からの視線を遮り、明るく風通しのいい空間をどうつくり出すかが課題となった。
設計を手掛けた建築士の饒平名知善さんは、交通量の多い東側を閉じ、南向きに開くプランを提案した。まず東から南にかけて、道路に面してガレージや前庭を配置し、道路から建物を離した。その上で、ヒンプンをイメージした高さ1~1.5メートルの塀を設置。「上部が曲線を描くプロバンス風の塀にすることで、圧迫感も緩和できる。プライバシーの確保と意匠性を両立できました」と饒平名さんは話す。
家族が集うLDKは、南側に大きな掃き出し窓とテラスを設け、光と風を取り込みながら屋内外がつながる空間にした。「テラスの両サイドに突き出すように設けた趣味室(東側)と子ども室(西側)は、外部からLDKへの視線を遮る役割も果たしています」。
生活動線にも配慮した。家族はガレージからの出入りが中心になることから、ガレージから玄関へのアプローチの間に大きめのシューズクロークを設置。物置としても機能するように計画した。
屋根の造りも工夫。勾配屋根と陸屋根を組み合わせ、瓦は勾配屋根だけに乗せた。陸屋根部分はへりに設けた立ち上がりにウエーブをつけ、柔らかな印象に仕上げることで、南仏風の雰囲気を演出しながらコストダウンを図った。
イエローのペイントで、華やかながらも落ち着いた雰囲気にしつらえた寝室。右奥はウオークインクローゼット
白壁にフランス瓦を合わせた愛らしい外観。曲線を使って高さに変化をつけた塀が柔らかな印象を与える
こだわりの造作タイルを腰壁に張り、DIYでしっくいを塗って、ナチュラルな雰囲気に仕上げたトイレはUさんのお気に入り
[DATA]
家族構成 :母、子ども2人
敷地面積 :331.00平方メートル(約100.12坪)
1階床面積:139.79平方メートル(約42.28坪)
※ガレージ含む
建ぺい率 :45.95%(許容60%)
容 積 率:42.22%(許容200%)
用途地域 :第一種中高層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計 :アトリエPAD一級建築士事務所 饒平名知善
構 造 :金城企画 金城政巳
施 工 :吉田建設
電 気 :(有)世名城
水 道 :(有)世名城
キッチン :ウッドワン
[問い合わせ先]
アトリエPAD一級建築士事務所
098-943-3235
http://pad-cy.sakura.ne.jp
撮影/比嘉秀明 ライター/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1667号・2017年12月15日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。